(丹後国竹野郡 嶋児神社)



◎浦嶋子(浦島太郎)神話 (「日本書紀」による)


【読み下し文】
(雄略天皇即位 廿二年)秋七月 丹波国餘社郡管川の人 瑞江浦嶋子が乘舟し釣りをしていた。遂に大龜を得たがたちまちに化して女となった。浦嶋子は感じて婦とした。ともに海に入り蓬萊山に到り仙衆を歴観した。別巻に語りが在る。


【大意】
(雄略天皇二十二年)七月、丹後国與謝郡筒川の人 瑞江浦嶋子が舟に乗り釣りをしていたところ、大亀を釣り上げた。大亀はたちまち女に姿を変えた。浦嶋子は妻とした。妻に誘われるがままに海に入り蓬莱山へ行き、仙衆(ひじり)を巡り観た。別巻にその物語が在る。


【補足】
◎丹後国は当時まだ丹波国から分離していませんでした。
◎與謝郡筒川は現在、宇良神社(浦嶋神社)が鎮座している村。
◎「浦島太郎」の名は瑞江浦嶋子(ミズノエウラシマコ)。「瑞江」は「海辺に住む」の意、正式には「浦嶋子」。鍛冶氏族である日下部首の後裔であり、祖神は猿田彦大神。宇治土公(ウジトコ)が直系とされます。
◎「浦島太郎物語」では「竜宮城」とされていますが、本来は「蓬莱山」。これは中国由来の神仙思想の影響とされます。また乙姫は竜宮城に居て亀に連れられてとなっていますが、本来は乙姫が亀に姿を変えていたというもの。
◎「雄略天皇二十二年七月」とありますが、これは「倭姫命世記」に記される豊受大神が外宮に遷されたのと偶然にも同じ年の同じ月。乙姫と豊受大神とは別神ではあるものの(宇良神社宮司さんもそのように言われています)、関連はあるのかと。七月と言えば「七夕」をイメージせずにはいられません。宇良神社の例祭は七月七日、「倭姫命世記」に記される豊受大神遷座も七月七日。適当に同じ日に合わせただけなのか、それともこの日でなければならなかったのか。
◎「別巻」というのは書紀には見当たらず、「丹後国風土記」を指しているように思います。
*「丹後国風土記」逸文 浦島太郎神話(~その1~その2~その3)


宇良神社境内の「蓬莱の庭」(模造)。