丹生神社 (榛原雨師)


大和国宇陀郡
奈良県宇陀市榛原雨師366
(当社までの道は狭いが十分に通行可、P有)

■延喜式神名帳
丹生神社 靫鍬 の比定社

■旧社格
村社

■祭神
高龗神


榛原「雨師(あまし)」と呼ばれる地の、「岳山」の中腹に鎮座する社。中国の神「雨師(うし)」の影響を受けたであろうことは明らか。祈雨止雨の神らしく、高龗神と似た神格を持っているようです。
式内比定社でもあり、山中の忘れられたような古社とは思えない多くの由緒等を抱えています。
◎神武東征神話に記される「兎田川之朝原」の伝承地の一つ。
宇陀にまで進軍した神武軍が行く手をすべて阻まれます。その打開策として「丹生川上」の地で「天香山」の埴(土)で拵えた「天の平瓮」「天の手抉」80枚ずつと「厳瓮」(いずれも皿や土器など)で斎戒し天神地祇を奉ります。そして「兎田川之朝原」で水沫状になっているところがあり、そこで「呪いの儀式」を行いました。その後は連戦連勝、大和を平定します。
この「兎田川之朝原」の候補地の一つが当社境内とされています。なお「丹生川上」は丹生川上神社 中社の近く。気になるのは「兎田川」から少々離れていること。遷座があったかどうかは不明。なお丹生川上神社から分遷されたとする伝承もあります。
◎高龗神が祀られる
鳥居西100mほどの山中に「天の大岩」と称される、臥牛のように横たわる巨石があると「宇陀郡志料」は記しています。この岩に対して祈雨止雨の祈りが捧げられていたかと思われます。発掘すれば祭祀用具が出てくるのでしょうか。その先には「龍王池」や「神武天皇御休石」といったものも。現在は立ち入り禁止となっています。
◎ご祭神の異説
「大和志料」は丹生都姫命、罔象女尊、伊弉册尊の三柱としています。ただし神名帳では一柱であり、丹生都姫命かと思われます。
◎「丹生」神社
水銀が産出されたのであろうと思われます。祭祀用具の「天の平瓮」などの表面に塗り付けられた可能性も。ただし社名は丹生川上神社 中社からの分遷によるものとする伝承もあります。
これに関して「日本水神鉱業発達史」を引用する谷川健一氏は、「水銀鉱床は一般には浅い所にしかなく、また小規模にしか産出しないため、これを採りつくすと他所に移動するか、やむなくその場所にとどまって農業をするほかない。農業は降雨と密接な関係が生じるところから、水銀鉱山の神を祀った丹生神社も祭神を雨神または水神に変えるほかはなかった」としています。当社もその一例ではないかと考えています。

*写真は過去数年に渡る参拝時のものが混在しています。


この山中に鎮座します。










以前に参拝したときは、ひなびた色であったように思います。近年改装されたのでしょうか。



「御神楽置之石」との表記。どういういわれがあるのでしょうか。


拝殿から左手(向かって右手)方向に伸びる山道、50mほど歩くと境内社があります。

愛宕社から拝殿、ご本殿を。


丸石の上に祠。かつては磐座だったように見受けられます。