母のグランドピアノを買取ってもらった経験談 | けいたいおかし

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ボクが物心がついた頃から実家にはグランドピアノがあった。声楽家でもあった母は毎日1時間ほどピアノを弾いていた。「床を這ってでもピアノは弾き続ける」と言い張っていた母の指先は、弾きすぎで変形してしまっていたほどだった。

 

そんな母も高齢になると、指先が思うように動かなくなり、認知症が進行していくと、ピアノを弾くことも徐々に減ってきて、1年ほど前からピアノに触れることもなくなってしまった。それでもグランドピアノは母のアイデンティティだったので、誰も弾かなくなったグランドピアノはピアノ室に置かれていた。

 

ただ、ひとつ大きな問題があって・・・床の補強工事をせずグランドピアノを長年置いているからなのか、ピアノ室の床はいつ踏み落ちてもおかしくない状態になってしまったのだ。体格の良いボクは、恐る恐るピアノ室に入らなければならない危険な状態で、雨戸を明けに入るのも躊躇してしまうほど。そこで母が施設に入居したことを機に、申し訳ないがグランドピアノを処分することを決心した。

 

グランドピアノを「大ゴミ」として破棄する場合には、業者に引き取り手数料を支払わなければならず・・・少なくても5万円はかかるようだ。母のグランドピアノは調律は必要なものの、大切に使っていたものなので目立つ傷もなく、カビやサビもないので、手入れ/修理をすれば十分使用できる状態だ。そこで、買取業者を探すことにした。11月が最も中古ピアノの買取金額が高くなるという情報をみて肩を押された気がして、グズグズ迷って年が明けてしまう前に行動しようと思ったのだ。

 

「グランドピアノ買取」でネット検索してみると・・・まず表示されるのは”広告”ばかり。また、機種や製造年を元に買取価格を明確にしている業者というは意外に少なく、相場感は掴みにくい。「一括で数社で査定」を謳うサイトが複数あるのだが、実際にどの業者から査定がくるか明確ではないので、ちょっと不安。「8万円と査定されたピアノが40万円に!」などの宣伝文句が踊ってはいるのだが。

 

ちなみに母のグランドピアノは、カワイのRX-3という機種で25年ほど前に製造されたもの・・・それだけの情報からざっくりネットで調べた買取金額の相場は35万円から45万円程度らしい。とりあえず、一括査定のサイトはやめて・・・自社のH Pを持って直接ネット買取査定の申し込みを受け付けている業者を、比較サイトや知名度で5社選んで、ネット査定の依頼してみた。

 

伸和ピアノ

タケモトピアノ

ユニオン楽器ピアノパワーセンター

グランドギャラリー

東洋ピアノ

 

一番反応が早かったのが「グランドギャラリー」で、申し込みから30分で返信があった。提示してきた査定金額が、いきなり「94万円」という高額にビックリ!引き取りの際の再査定の結果、大幅に買取価格が下がることもあるんじゃないかと疑ってしまったのだが、メールによると最初の提示金額から減額されるケースは1割程度だという。

 

カワイのRX-3には、いくつもの特別モデルが存在しているみたいで・・・中古でも200万円近くで販売されることもあるようだ。ごく一般的なRX-3だと買取相場は45万円が上限なのかもしれないが、もしかすると母のRX-3は特別モデルなのかもしれない・・・そういうことが、きめ細かく査定をする業者であれば、買取金額にもちゃんと反映するのではないかと思った。

 

2時間ほどで返信があったのが、最近テレビCMをよく観る「伸和ピアノ」。定型文による返信で、新聞広告に記載されていたのと同額の「45万円」だった。しかも、この金額はあくまでも買取”基準”金額でしかないので・・・「引き取り時の再査定次第では提示金額は下がる」という中古品の買取にありがちな落とし穴もあった。買取金額が上がることも全くないわけではないらしいが。

 

テレビ広告では老舗の「タケモトピアノ」からは、数時間後に電話がかかってきた。「これまでの使用状況」「付属品やオプションの有無」「細かなコンディション」「具体的な搬出経路」などを確認した後、メールで査定結果が送られてきた。個人使用だったことや、搬出が比較的楽そうなことが反映されたのか・・・「75万円」というなかなかの査定金額。詳しく状況確認して提示された金額なので、実際の買取金額が大幅にダウンということもなさそうな安心感はある。こうなってくると「伸和ピアノ」の買取基準価格が極端に安く思えてしまう。

 

翌日の昼過ぎになっても返信がなかったのが「ユニオン楽器ピアノパワーセンター」と「東洋ピアノ」。この時点で「グランドギャラリー」「伸和ピアノ」「タケモトピアノ」の3社から選ぼうと考えたのだが・・・最も高額の査定金額を提示した「グランドギャラリー」を選んだのは言うまでもない。

 

グランドギャラリーでは24時間ネットかLINEで引取り依頼ができるシステムなのだが、そこそこ高額な取引になるのでネット上だけでのやりとりだけでは少々不安・・・こちらから電話しようと思っていた矢先、タイミングを見計ったかのようにグランドギャラリーの担当者から電話がかかってきた。ここでタケモトピアノと同じように具体的な搬出経路、細かなコンディションや使用状況の確認があった。搬出作業が比較的よういということを考慮して、メールでの提示金額に1万円上乗せの「95万円」としてくれた。引き取り当日に全額を現金で手渡すというのが”決め手”となり、グランドギャラリーに買取を依頼することを決めた。2日後の日曜日に配送会社が引き取りに来るということだった。

 

その直後、タケモトピアノの担当者からは再びメールがあり、買取金額の交渉にも応じる意向を示してくれたのだが・・・さすがに20万円の差額を埋めるのは難しいと思ったので、お断りの返事をさせてもらった。そのお断りの連絡にも丁寧な返信があり、最後まで誠意を感じる対応だった。

 

その後(問い合わせの翌日の夕方頃)「ユニオン楽器ピアノパワーセンター」からメールでの返答があり、グランドギャラリーを2万円上回る「97万円」という査定金額が提示されたのだけれど・・・引き取りの当日は50万円までしか現金の手渡しできないことが、ちょっと引っかかった。まだ電話で話をしていないこともあり、とりあえず保留にした。

 

前日までに引き取り予定時間を連絡するとのことだったグランドギャラリーの配送会社から、土曜日の深夜になっても連絡がない。電話後にグランドギャラリーから届いたメールには「12日(日曜日)にお引き取り」とあるのだが、その月の12日は金曜日(電話で買取依頼した日)・・・「14日」とするところを「12日」と間違えたのだろうと思ったので、担当者に確認をメールで送って、土曜日は寝た。

 

日曜日の朝10時過ぎに、グランドギャラリーの担当者から電話があり、実際の引き取り予定日は21日(翌日曜)だったとのこと。担当者がメールで日付を書き間違えたことに加えて、電話の会話で「日曜日」としか言及しなかったので勘違いがあったようだ。21日なら21日で問題なかったのだが・・・こちらは出鼻を挫かれてしまった感がある。そこで、グランドギャラリーの担当者に、他の業者とも交渉をしたいので、改めて連絡をすることを伝えた。

 

そこで、まだ担当者と電話で話していなかった(そして最も高額な査定金額を提示している)ユニオン楽器ピアノパワーセンターに電話してみた。日曜日ということもあり担当者は不在だったので、電話に出た人と話することになったのだが、あまりにもぶっきらぼうな態度に驚いてしまった。「申込フォームに書かれている情報で査定金額が出ているので何も確認することはない」と突っぱねられ・・・・使用状況や搬出経路など説明したら「で、他に何か?」と繰り返し問いただす・・・会話していて言葉に詰まることが何度かあった。「買取を申し込むなら、また電話ください」と何度か言われて電話を切られた。思いの外、不快な対応だったので、この業者に買取依頼はしたくないと素直に思った。ネットでこの業者の評判を詳しく調べてみると・・・引き取り時に難癖つけて査定金額を下げられたというクチコミがあった。高い査定金額で訪問買取の客を集めて、引き取り時に査定金額を下げる手口(?)の業者のようだ。

 

グランドギャラリーと再度交渉するまで時間的猶予ができたので、さらにネット査定依頼をすることにした。査定する業者がどのこなのか明確でないため避けていた一括査定のサイトも試してみることにした。

引っ越し侍のピアノ買取

ズバット

 

またリストにあげていたにも関わらず、ネット査定依頼をし忘れていた1社にもネット査定依頼をしてみた。

島村楽器

 

日曜日にも関わらず15分ほどで返信があったのが、一括査定の中の1社だと思われる「ピアノブラザ」。提示された金額は「94万円」と高額。引き取り時に問題がなければ、その場で全額を現金で支払うそうだ。

ピアノブラザ

 

次に1時間ほどで返信があったのが「富士楽器」で、提示された査定金額は「75万円」で、老舗のタケモトピアノと同額だった。ここは、引き取り時に現金の支払いはせず、査定金額に関わらず振り込み”のみ”の対応ということだった。

富士楽器

 

3時間ほどして返信あったのが「ジャパンピアノサービス」で、査定金額「90万円」を提示されていたものの、使用状況やピアノの状態を詳しく聞く必要があるという含みのある言い方。こういうケースの場合、搬出経路が楽だと多少査定金額が上がるかもしれない。

ジャパンピアノサービス

 

翌日になると、一括査定サイトからの4社から返答があった。「ピアノリサイクルシステム」の査定金額は「75万円」で、交渉で上乗せ可能な金額は5000円ということだった。「ピアノバンク」の査定金額は「85万円」で、ここは後日に全額振り込みということだ。「ピアノのサンフォニックス」の査定金額は「60万円」で、ここも後日に全額振り込み。「冨田ピアノ」の査定金額は「70万円」で、ここは買取代金は引取り時に現金で支払い。

ピアノリサイクルシステム

ピアノバンク

ピアノのサンフォニックス

冨田ピアノ

 

これほど査定金額がバラバラのは数多くの業者に査定を依頼してみてわかることだ。より多くの業者に査定をしたことで、95万円あたりが母のピアノの査定金額の上限であることは分かってきた。

 

その後「島村楽器」からも査定金額が送られてきたのだが「54万円」と若干低め。この業者も後日に全額振り込みだそうだ。

 

そして、ネット査定依頼から3日も経って「東洋ピアノ」から査定金額が送られてきたのだが・・・それが驚きの「25万円」というぶっちぎりの安さ!どうやら、この業者は主にベトナムへ中古ピアノを輸出しているらしいので「処分」に近い金額でしか買取しないのかもしれない。

 

いまさらだが、母のグランドピアノの機種「RX-3」のことを調べてみると・・・グランドピアノとしては小さめ(奥行き186cm)で一般家庭でも設置が容易く、新品当時の販売価格も極端に高価というわけでもないため幅広い客層に勧めやすい機種で、中古販売店にとって在庫に欲しい機種のようだ。査定金額が高めの業者は、中古ピアノの海外輸出が主な事業ではなく、日本国内で中古ピアノ販売をしているところが多いのも頷ける。中古市場では、極端に高級品だったり、サイズが大きいピアノは需要も少ないのだろうから、母のグランドピアノは比較的”買取してもらいやすい機種”なのかもしれない。

 

今回、ネット査定で合計で13社からの査定金額を提示を頂いた。その結果がこちら・・・

 

ユニオン楽器ピアノパワーセンター・97万円

グランドギャラリー・95万円

ピアノプラザ・94万円(一括査定サイト)

ジャパンピアノサービス・90万円(一括査定サイト)

ピアノバンク・85万円(一括査定サイト)

タケモトピアノ・75万円

富士楽器・75万円(一括査定サイト)

ピアノリサイクルシステム・75万円(一括査定サイト)

冨田ピアノ・70万円(一括査定サイト)

ピアノのサンフォニックス・60万円(一括査定サイト)

島村楽器・54万円

伸和ピアノ・45万円

東洋ピアノ・25万円

 

一番安い金額と一番高い金額で4倍近く違う結果となった。これで査定依頼はストップにして、母のグランドピアノの買取をどの業者に依頼するか決めることにした。総合的に判断して、改めてグランドギャラリーに買取依頼をすることにした。ダメもとで最高査定金額の97万円に上げることは可能かを問いてみたところ・・・担当者が上司に掛け合ってくれて、査定金額は「97万円」となった。数多くの業者の中で一番依頼したいと思った業者に、最も高額な金額で引き取ってもらえることになり、納得のいく結果に満足。改めて配送会社と連絡を取ったところ、引取り日は当初の予定通り11月21日となった。

 

当日、時間どおりに配送業社さん(二人組)がきて、搬出経路や作業工程の確認をしながら、グランドピアノ本体のチェックが始まったのだが・・・高音の弦4本が切れていることが判明した。飛び出している弦は気になっていたのもの、鍵盤を弾くと音が出るので、素人の僕は弦が切れているとは思っていなかった。画像を買取業者へ送り、再査定を待つこととなった。その間「ピアノの弦が切れる」ことがどういうことなのかをネットで調べてみたら・・・修理自体は一本数千円レベルなのだが、弦を張り替えた後、音が安定するまでに何度か調律し直す必要があるとのことで、査定金額の減額になっても仕方ないことは理解できた。どれほど減額されるかが問題だ。

 

気持ちの問題かもしれないが・・・1割くらい(10万円)までの減額なら受け入れようと覚悟していたところ、最終的な査定金額が「90万円」だったので、そのまま買取をお願いすることにした。まず、ネット査定で13社中4社からしか90万円以上の提示されていないので、90万円でも十分高額であること。また、他社に買取を乗り換えたところで、弦が切れていることを理由に大幅に減額される可能性もある。7万円の減額が妥当かは僕には判断できないが、業者が意図的に査定金額を下げようとしているわけでもないし、誠実な再査定であると信じることにした。

 

厳重に梱包されて、母のグランドピアノは部屋から搬出されてトラックの荷台へと運ばれた。土壇場で再査定のハプニングがあったこともあり、感傷的になる間もなかったが・・・ガランとしたピアノ室に改めて入った時、なんとも言えない気持ちになった。

 

グランドピアノを手放すのは、人によっては子供を養子に出すくらいエモーショナルなことかもしれない。買取業者としては引き取れれば良いのかもしれないが、売り手にとってはプロセスも重要で、安心と信頼をもって任せられることが大事なのだ。グランドピアノを買い取ってもらうことは、人生で何度も経験することではないので、買取金額の相場というのもわかりにくいし、普通に生活していると買取業者とやりとりする機会もない。ネットで買取査定をしてもらえる時代になったのは便利で、業者によって買取金額には数倍の差がでてくる。いくつもの業者に査定してもらうことは必要なことだと改めて痛感した。

 

最後にまとめ・・・

 

・一括査定サイトは、買取金額の相場と上限を知るツールとして利用価値はある。

 

・査定依頼してから早く返答がある業者や、コンディションや搬出経路をしっかり確認しようとする業者の方が、買取に前向きだし、査定金額も高め。

 

・自社で中古販売をしている業者の方が、主に輸出をしている業者よりも査定金額が高い。

 

・数万円程度であれば買取金額の上乗せ交渉はできるが、それ以上の交渉は厳しい。

 

・テレビCMで最近知名度がある「伸和ピアノ」は、査定金額がかなり安い。

 

・老舗の「タケモトピアノ」は、きめ細やかな対応だが、査定金額は上限より2割ほど安い。

 

・「ユニオン楽器ピアノパワーセンター」は高額の査定金額で客を集めるが、窓口の対応が致命的に酷く、引き取り時に難癖つけて査定金額を下げてくるらしい。

 

・「グランドギャラリー」は査定金額が高く、上乗せ交渉にも前向きで、再査定にも誠実さを感じた。