引き続き「厚生年金」からの「遺族給付」である「遺族厚生年金」について解説します。
今回は「遺族厚生年金の受給額」つまり「いくら貰えるのか?」についてです。
受給金額は、亡くなった人の受給要件によって異なります。
①厚生年金の被保険者
②厚生年金の被保険者であった人で、被保険者であった間に初診日がある病気や怪我が原因で、その初診日から5年を経過する日より前に死亡した人
③障害等級1級か2級で、「障害厚生年金」の受給をしていた人もしくは受給権者
④厚生年金の保険料納付済期間と合算対象期間とを合算した期間が25年以上ある「老齢厚生年金」の受給権者
⑤厚生年金の保険料納付済期間と「保険料免除期間」と合算対象期間とを合算した期間が25年以上ある人
①~③の方が亡くなった場合を「短期要件」、④⑤の方が亡くなった場合を「長期要件」と言います。
【短期要件の場合の受給額】
以下の計算式により算出されます。以前のブログをご覧いただいている方にはおなじみの計算式です。
「遺族厚生年金の年金受給額」=(「平均標準報酬月額」×「0.007125」×「2003年3月までの被保険者期間の月数」+「平均標準報酬額」×「0.005481」×「2003年4月以降の被保険者期間の月数」)×「0.75」
です。どこかで見た事がありませんか?そうです。昭和21年4月2日以降生まれの人の場合の「老齢厚生年金」の「報酬比例部分」の計算式、「障害厚生年金の基本受給額」の4分の3(0.75)となっています。
しかし短期要件に該当する人の中には被保険者期間が短い方もいらしゃるので、被保険者期間が300か月に満たない場合は300か月として計算するルールがあります。実務的には「障害厚生年金」と同じく、「遺族厚生年金の年金受給額」×300か月÷被保険者期間という計算式になります。
【長期要件の場合の受給額】
以下の計算式により算出されます。
「遺族厚生年金の年金受給額」=(「平均標準報酬月額」×「0.007125~0.0095」×「2003年3月までの被保険者期間の月数」+「平均標準報酬額」×「0.005481~0.007308」×「2003年4月以降の被保険者期間の月数」)×「0.75」
「短期要件」との違いは、
・給付乗率(かける数字)が生年月日によって変わる。
・被保険者期間を300か月とする対応は行われず、実際の加入月数で計算される。
という2点です。
生年月日によって乗率は変わりますが、「老齢厚生年金」の受給額計算と同じで、昭和21年4月2日以降生まれの人の場合には「0.007125」および「0.005481」に原則統一されています。
両方の計算式に出てくる「平均標準報酬月額」と「平均標準報酬額」は、賃金や物価の変動を反映させた再評価率(スライド調整率を含む)により、金額は毎年改定されています。
さて、今回は以上です。
このブログでは賢く民間保険に加入する為、ちゃんと自分で考えて民間保険を選ぶ為、もしくは民間保険に入らないという選択肢を取る為の周辺知識を発信しています。
公的年金の遺族給付の知識は民間保険の選択を考える中で非常に参考になる知識ではないかと思います。ゆっくりちょっとずつ学習していきましょう。次回は「厚生年金」からのもう一つの「遺族給付」である「中高齢寡婦加算」について解説したいと思います。
それではまた!
※今回の記事は2024年2月20日時点での情報です。御覧になるタイミングによっては最新の情報ではありませんので注意して下
さい。