※注※2025年3月7日に、高額療養費の自己負担限度額引上げが見送られる事が決定しました。政府は秋頃までに今後の方針を決定する事としています。この記事は、見送りとなる前の「引上げします!」という情報を基に作成されていますので、あくまで参考程度に御覧下さい!
さて、今回も「相続」解説はお休みさせていただき、旬なネタでお送りしたいと思います!
今回のテーマは「高額療養費の自己負担額引き上げ対策!」です。
皆さんもニュースで御覧になっていると思いますが、公的医療保険制度の給付の一つである「高額療養費制度」が見直しされ、その自己負担限度額が引き上げられる事になりました。とある団体が引き上げ凍結の為に奮闘しているようなので、正直今の段階では予定という形でしかお伝えできませんが、「知らんうちに上がってしもうとる~」という事にならないように、現段階での予定を確認しておきましょう!
皆さんは医療費の自己負担額が増える!と聞くと不安になりませんか?不安になる理由としては、「実際どのくらいの引き上げになるのかよく解らない」とか「どう対策していいか解らない」といった事が挙げられるのではないでしょうか?
今回の記事をお読みいただく事で、「高額療養費」引き上げの現在の情報を知り、対策が必要かどうか冷静に判断する事ができるようになると思いますので、是非最後まで御覧下さい。
今回は
①「高額療養費制度」の現状
②今後の変更について!
③有効な対策は!?
の順で解説していきます!
①「高額療養費制度」の現状
さて、そもそもの今の制度の振り返りからやっていきましょう。
「高額療養費制度」とは?医療費が高額となってしまった場合に一定額を超えた部分が払い戻される制度です。健康保険等の公的医療保険が適用となる「保険診療」のみが対象で、「自由診療」の治療費は対象外となっています。
治療を受けた個人一人ごとに1ヶ月(1日から末日締め)で医療費がいくらかかったかを計算し、その金額が「高額療養費」の限度額を超えてしまった場合には、その超えた部分に関しては公的医療保険で負担してくれます。限度額は被保険者の収入によって区分されていますので、収入が少ない人は少ない限度額、収入金額が大きい人は大きい限度額となっています。また、被扶養者に関しては、扶養者の収入により限度額が変わる事にも注意が必要です。
現状の限度額は、70歳未満の方で、
収入約1160万円以上…252,600円+(医療費-842,000円)×1%
約770万円~約1160万円…167,400円+(医療費-558,000円)×1%
約370万円~約770万円…80,100円+(医療費-267,000円)×1%
約370万円以下…57,600円
低所得者(住民税非課税)…35,400円
となっています。
また、多数回該当という制度もあり、1年以内に4回目以降の高額療養費制度の利用となった場合には、更に限度額が下がり、
収入約1160万円以上…140,100円
約770万円~約1160万円…93,000円
約370万円~約770万円…44,400円
約370万円以下…44,400円
低所得者(住民税非課税)…24,600円
が4回目以降の1ヶ月の上限額となります。
現状の「高額療養費制度」は以上となっております。
②今後の変更について!
さぁ、ではこの「高額療養費制度」がどのように変わっていく予定となっているのでしょうか?
令和7年1月23日に発表された、厚生労働省保険局の「高額療養費制度の見直しについて」によると、予定されている見直しは、令和7年8月・令和8年8月・令和9年8月の3段階となっています。それぞれの予定を見ていきましょう。なお、高額療養費の負担限度額は「70歳未満」と「70歳以上」で微妙に決まり事等が違ったりするのですが、話がややこしくなってしまいますので、今回の記載は「70歳未満」に限定させていただきます。
先ず第1段階、令和7年8月の改定では、収入の区分はそのままで、単純にそれぞれの負担限度額の引き上げが予定されています、具体的には、
【高額療養費自己負担限度額 令和7年8月~(厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」より抜粋)】
収入約1160万円以上…290,400円+(医療費-968,000円)×1%
約770万円~約1160万円…188,400円+(医療費-628,000円)×1%
約370万円~約770万円…88,200円+(医療費-294,000円)×1%
約370万円以下…60,600円
低所得者(住民税非課税)…36,300円
となっています。
住民税非課税の方で900円UP、収入約1160万円以上の方は約4万円UPとなっていますので、収入の高い層での上がり幅が大きいですね。
多数回該当に関しても、
収入約1160万円以上…161,100円
約770万円~約1160万円…104,700円
約370万円~約770万円…48,900円
約370万円以下…46,500円
低所得者(住民税非課税)…25,200円
と引き上げの予定となっていましたが、令和7年2月17日のニュースによりますと、高額療養費の引き上げ前面凍結を求めている「がん患者らの団体」との2月14日での話し合いにおいて、多数回該当に関しては、今の金額に据え置く事を伝えたという事でしたので、おそらく今年の8月の引き上げでは、多数回該当は従来のままとなるでしょう。
これが2段階目の令和8年8月の改定で一気に複雑になってきます。一番の変更点は年収区分がこれまでの5区分から13区分となる事です。具体的に引き上げ案を見てみましょう。
【高額療養費自己負担限度額 令和8年8月~(厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」より抜粋)】
約1650万円以上…367,200円+(医療費-842,000円)×1%
約1410万円~約1650万円…325,200円+(医療費-1,084,000円)×1%
約1160万円~約1410万円…290,400円+(医療費-968,000円)×1%
約1040万円~約1160万円…220,200円+(医療費-734,000円)×1%
約950万円~約1040万円…204,300円+(医療費-681,000円)×1%
約770万円~約950万円…188,400円+(医療費-628,000円)×1%
約650万円~約770万円…113,400円+(医療費-378,000円)×1%
約510万円~約650万円…100,800円+(医療費-336,000円)×1%
約370万円~約510万円…88,200円+(医療費-294,000円)×1%
約260万円~約370万円…69,900円
約200万円~約260万円…65,100円
約200万円以下…60,600円
住民税非課税…36,300円
【多数回該当の場合 令和8年8月~(厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」より抜粋)】
約1650万円以上…203,700円
約1410万円~約1650万円…180,300円
約1160万円~約1410万円…161,100円
約1040万円~約1160万円…122,400円
約950万円~約1040万円…113,400円
約770万円~約950万円…104,700円
約650万円~約770万円…63,000円
約510万円~約650万円…55,800円
約370万円~約510万円…48,900円
約260万円~約370万円…47,400円
約200万円~約260万円…46,800円
約200万円以下…46,500円
住民税非課税…25,200円
先ず解りやすく変わっているのが、年収区分の最高額ですね。今までは約1160万円以上が最高だったのに対して、令和8年8月改定案では1650万円以上が最高となっています。「収入の高い人はもっと払って下さいよ~」という事でしょうね。その他の区分も細かく分けられています。例えばこれまでは年収約370万円から約770万円の人は一括りの区分だったものが、「約650万円~約770万円」「約510万円~約650万円」「約370万円~約510万円」の3区分に分かれていて、「約370万円~約510万円」の区分に該当する人は約8万8200円のままで据え置きですが、「約650万円~約770万円」の区分に該当する人は、令和7年8月からの自己負担額が約88,200円だったのに対して、令和8年8月からの案では約113,400円になっています。令和7年8月の改定では、おそらく「多数回該当」に関しては据え置きになるのでしょうが、この時にどうなるかは正直解りませんね。動向に注意が必要です。
それでは最後の令和9年8月改定の金額を見てみましょう。
【高額療養費自己負担限度額 令和9年8月~(厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」より抜粋)】
約1650万円以上…444,300円+(医療費-1,481,000円)×1%
約1410万円~約1650万円…360,300円+(医療費-1,201,000円)×1%
約1160万円~約1410万円…290,400円+(医療費-968,000円)×1%
約1040万円~約1160万円…252,300円+(医療費-841,000円)×1%
約950万円~約1040万円…220,500円+(医療費-735,000円)×1%
約770万円~約950万円…188,400円+(医療費-628,000円)×1%
約650万円~約770万円…138,600円+(医療費-462,000円)×1%
約510万円~約650万円…113,400円+(医療費-378,000円)×1%
約370万円~約510万円…88,200円+(医療費-294,000円)×1%
約260万円~約370万円…79,200円
約200万円~約260万円…69,900円
約200万円以下…60,600円
住民税非課税…36,300円
【多数回該当の場合 令和9年8月~(厚生労働省保険局「高額療養費制度の見直しについて」より抜粋)】
約1650万円以上…246,600円
約1410万円~約1650万円…199,800円
約1160万円~約1410万円…161,100円
約1040万円~約1160万円…140,100円
約950万円~約1040万円…122,400円
約770万円~約950万円…104,700円
約650万円~約770万円…76,800円
約510万円~約650万円…63,000円
約370万円~約510万円…48,900円
約260万円~約370万円…48,300円
約200万円~約260万円…47,400円
約200万円以下…46,500円
住民税非課税…25,200円
区分は令和8年8月改定のものがそのまま使用されています。令和9年8月改定では、全てではありませんが、
ほとんどの区分で「自己負担限度額」も「多数回該当」も引き上げ予定となっています。
現状(令和7年7月まで)と比べてみると、年収が1650万円以上の方だと約252,600円から約444,300円に、「約1040万円~約1160万円」の区分の人は約167,400円から252,300円に、「約650万円~約770万円」の区分の人は、約80,100円から約138,600円にといったように、元々の区分の中で高い方の年収に当てはまる人達の上がり幅が大きくなっています。
一方元々の区分で低い方の場合を見てみると、「約1160万円~約1410万円」の区分の人が約252,600円から約290,400円に、「約770万円~約950万円」の区分の人は約167,400円から約188,400円に、「約370万円~約510万円」の区分の人は約80,100円から約88,200円に変更となる予定ですので、他の区分と比べると上がり幅は少ないですが、それでも自己負担限度額は上げられる予定となっています。
③有効な対策は!?
さて、では高額療養費の自己負担限度額が上がってしまう事に対しての最も良い対策とは何か考えていきましょう。
なお、ここからはあくまで私個人の見解ですので、実際どうするかは必ずご自身で色々調べてご判断いただきますようにお願い致します。
医療費負担が増える事に対する対策方法として、私がパッと思いつくのは、
①何もしない(現状維持)
②預貯金を少し増やす
③新たに保険を追加する
④保険を見直す
⑤株や投資信託の金額を増やす
の5つです。皆さんならどれを選びますか?
私個人の見解は、、、
↓
↓
↓
〇①何もしない(現状維持)
◎②預貯金を少し増やす
△③新たに保険を追加する
△④保険を見直す
×⑤株や投資信託の金額を増やす
です。
保険屋さんだから保険を勧めると思ったでしょう?
もちろんオススメしたい気は満々なのですが、単純な選択肢選びであればこのような形となります。
何故単純に保険がお勧めではないかというと、それほど入院をすることがなかった時の事を考えた場合には最終的に一番損をしてしまうのが③と④だからです。まぁ~⑤に関しては変なものに投資してしまったとしたら大損になってしまう可能性もあるのでそれは除外したとしても、普通の医療保険とか入院給付の保険に加入した場合には損をしてしまう確率がかなり高いと思います。試しにどこの保険でもいいので、一生涯とか平均寿命まで保険料を払った場合に、何日入院しないと元がとれないか計算してみて下さい。大半の人が元をとるのが難しいくらいの日数になってしまうと思います。詳細は後から説明しますが、保険を活用するならちゃんと目的を把握して、ある程度のリスクを許容した上で賢く活用する必要があります。
それではここからは、1つずつ具体的に見ていきましょう。
先ず①の「何もしない(現状維持)」です。
これは〇になっているのですが、1つ条件があります。それは、既に潤沢な生活防衛資金が預貯金で蓄えられている事です!
先ほども申し上げた通り、保険に費用を使うよりも緊急医療費用は預貯金でまかなった方が完全に合理的です。
それだけの預貯金がある人ならば、これからも預貯金を続けていくか、投資等で資産を増やしていくのでしょうから、高額療養費が上がるからと言ってそのお金を保険に回すというのはナシだと思います。
しかも、この先は解りませんが、ひとまず「多数回該当」は今のところ変更なしの予定なので、当面は最初の3か月間だけの事を考えておけばいいでしょう。
例えば令和9年8月改定後で考えた場合、MAX年収の人が3か月で負担する医療費の自己負担額は最高でも3か月分の1,332,900円となります。これだけの負担がいざという時にできる現状があり、さらに貯蓄を増やしていけるのであれば、正直通常の民間医療保険等は必要ないと思います。
しかも、医療費自体がいきなり高騰する訳ではなく、あくまで「自己負担限度額」が上がるというだけの話ですので、逆にこれだけの医療費がかかる事がそう頻繁にあるとは思えません。
改定後のご自身の年収区分の3倍の限度額(3か月間の自己負担限度額)を支払ってもある程度余裕があるのであれば全く問題ないので、その金額だけは把握するようにしておきましょう。公的医療保険では対応できない「先進医療」や「保険適応外治療」に備えたいと言った場合や、今後多数回該当の部分も当初の予定通り引き上げていくというような事があるのであればちょっと事情が変わってきますが、そうでなければ現状そのままで大丈夫ではないかなと思います。
次②の「預貯金を少し増やす」です。
現在の預貯金額で不安な場合は、先ず保険!という考えよりも、預貯金の積み立て額を増やすというのが先に考えなければいけない事ではないかと思います。
理由としては、預貯金は保険と違い絶対に損はしないからです。インフレのリスクはあるかもしれませんが、だからと言ってインフレリスクに対応できるものが安全性が高いのかというと全くそんな事はありません。それに、病気にならなかった時のリスクにも預貯金であれば対応できます。銀行等に貯めていく額を増やしてお金の「流動性」を保っておくという方法や、あえて治療費の為の貯蓄と割り切って「流動性」をなくす為に、一部の元本保証型の医療保険を利用するというのも1つの手だと思います。
また、銀行等への貯蓄をし始めたばかりという若い世代なのであれば、最低限の民間保険でリスク対策をしておく事も考えられますが、そもそも若い世代で収入が低いのであれば改定後であったとしても自己負担限度額は抑えられていますので、そこまで大きな心配はいらないでしょう。収入がある程度あるけども預貯金がないといった場合には、賢く民間保険を活用しながら預貯金を少しずつ増やしていくというのが最善手ではないかな?と思います。
③の「新たに保険を追加する」は何故△なのか?
本当は×にしたいくらいなのですが、この選択肢は条件付きで△です。
まずダメな理由として、何度も繰り返しいいますが入院系の保険で得をする事は難しいからです。そもそも入院系の保険を賢く使うには、法人契約以外であれば最低限度の加入が絶対条件です。たくさんたくさん掛ければいいというものではありません。その分確実にお金は無くなっていきます。
条件付きで△なのは何故かというと、
・何も加入していない人が「保険外診療」にも併せて備える為の最低限の保険加入。
・②で解説したような利用をする
という場合であれば、「あり」ではないかな?と思うからです。
④の「保険を見直す」も△です。
保険屋さんが最もオススメしてきそうな内容ですが、ぶっちゃけ最善手ではないですね。
理由としては、何度も言いますが入院系の保険で得をする事は難しい上に、加入年齢が上がると以前のものより高くなるので、もっと損をする可能性が高くなるからです。しかし、条件付きで「あり」な理由としては、今現在の保険がとんでもなく高額な事もありえますので、見直しを行う事により保険料が下がる可能性もあるという事と、その結果として預貯金額をUPできる可能性があるからです。私が言うのもおかしな話ですが、普通の保険屋さんに相談したら「こんなとこにもリスクが!」とか「あんな場合には大変ですよ!」といったように、何でもかんでもオススメされてしまいますので、ちゃんとご自身で周辺知識を身につけて、「保険に移転するリスク」「自分で所有するリスク」を判断するようにして下さいね。見直して加入する際にも、ちゃんと目的に合ったものなのかはご自身で判断できた方がいいですね。
さて最後⑤株や投資信託の金額を増やすは何故×なのか、
弊社では株や投資信託は扱っておりませんが、一般論として長期的に積立をしてお金を増やしていきたい!という目的なのであれば、個人的には安定性のあるインデックスファンド(投資信託)が一番だと思っています。「ん?じゃ~なんで×なの」とお思いでしょうが、株や投資信託は長期的に資産を増やすという事には向いていますが、「緊急資金」や「使う時期はが明確に決まっている積立」には向いていない(「時期が明確な積立」は一部債権系の商品ならどうか解りませんが…)と思うからです。もしその商品が外貨建てのものであれば「為替リスク」もかかえなければいけないのでそりゃあもうオオゴトです。
いざ明日入院!というタイミングで〇〇ショックで大暴落!しかも同時にめちゃくちゃな円高!となってしまったら泣きそうになりませんか?多分私なら泣きます。
「預貯金」も「株・投資信託・債権」も「保険」も、それぞれの強みと弱み、それにしかできない事というのがあります。間違ったものを間違った目的で利用しないように、色々と学んでいきたいですね。ちなみに保険で言えば投資性のある変額保険や外貨建て保険も、この⑤の仲間になると思いますので、「高額療養費の自己負担額対策」としてはあまりお勧めではありません。
さて、長くなりましたが今回は以上です!
皆さんが賢く民間保険を活用し、豊かな生活を送る為に、今後も保険周辺知識を発信していきたいと思っておりますので、どうか応援宜しくお願いします。
今回の記事も動画にて配信予定ですので、ビッグ・ワンYouTubeも是非見て下さいね。チャンネル登録も宜しくお願いします!
でわまた!
※今回の記事は2025年2月28日時点での情報です。御覧になるタイミングによっては最新の情報ではありませんので注意して下
さい。