今回は「相続税」計算の基本について解説します。
「相続」については、「遺言」や「遺産分割協議」等で様々な分配方法が考えられます。実際誰がいくら「相続税」を払うのかというのは、この分配方法によって変わってきますが、相続税を計算する上ではどのような分配方法をする場合でも、一旦「遺産総額」から「法定相続人」の数等によって変わる「相続税の総額」を割り出します。
「相続税の総額」を計算するには、一旦「課税遺産総額」を計算する必要があります。「課税遺産総額」とは実際の遺産総額から控除を差し引いた額です。この「課税遺産総額」に税率をかけてさらに控除額を引いて「相続税の総額」を計算します。
さて、その相続税計算の基本となる「課税遺産総額」とは、
「課税遺産総額」=「相続財産の総額(課税価格)」ー「基礎控除額」
という計算式で求められます。今回はこの前半部分「相続財産の総額(課税価格)」について解説していきます。
【相続財産の総額(課税価格)】
相続財産の総額を計算する上でも、いくつかのルールがあります。計算式は、
「相続財産の総額(課税価格)」=「遺産総額」+「生前贈与財産」+「みなし相続財産」-「非課税財産」-「葬儀費用」-「債務等」
となります。それぞれ細かく見ていきましょう。
・遺産総額
「遺産総額」は言葉どおり、亡くなった方のその時のプラスの財産を全て足した金額です。「現金」「預貯金」「株式」「不動産」等全ての合計額が「遺産総額」になります。「株式」や「不動産」に関しては「購入金額」ではなく「時価」で計算されます。「不動産」の相続税における「時価」に関しては機会があれば詳しく解説したと思いますますが、とりあえずざっくり「今の売った時の相場金額」と思っておいて下さい。
・生前贈与財産
亡くなった時にその人(被相続人)の財産でなかったとしても、相続の開始3年前までに被相続人から財産贈与を受けていた場合には、その金額が相続財産にプラスして計算されます。この「3年」という縛りは2023年の改正で「3年→7年」に延長されていますが、対象となるのは「2024年1月1日以降の贈与」となっていますので、2027年1月1日までに発生した相続に関しては今まで通り「3年」、それ以降に発生した相続に関しては2031年1月1日まで段階的に延びていくという事になります。つまり繰り返しになりますが、2027年1月1日以降はどの段階であったとしても「2023年12月31日以前の贈与」は対象となりません。
2027年1月1日以降は、
「生前贈与財産」=「3年前までの贈与財産」+「3年より前から7年前までの相続財産(ただし2024年1月1日以降の贈与)ー100万円(控除)」
という計算式になります。
また、3年より前の贈与であっても、相続時精算課税の適用を受けた財産があれば、その財産も課税対象となります。
・みなし相続財産
死亡保険金や死亡退職金等、被相続人の実際の財産ではないけれども、相続税の計算上で相続財産とみなす財産です。それぞれ相続財産に足す前に控除額が設定されており、控除額は「500万円×法定相続人の人数」です。この控除額を全ての「みなし相続財産」から引くのではなく、死亡保険金と死亡退職金それぞれから控除して良い事になっていますので、「死亡保険金ー控除額」と「死亡退職金ー控除額」と「その他のみなし相続財産」の合計額が「みなし相続財産」の額となります。
「その他のみなし相続財産」には、「ねんきんや保険金などを受け取る、定期金の権利」「解約返戻金や満期保険金などを受け取る、生命保険契約に関する権利」「債務を免除された時の、債務免除」等があります。
・非課税財産
被相続人の財産の中で非課税とされるものです。代表的なものとしては「墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物(ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。)」「宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの」「地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利」「相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの」等があります。
・葬儀費用
葬儀費用の代表例は「通夜、告別式のために葬儀会社に支払った費用」「通夜、告別式に係る飲食費用」「葬儀を手伝ってもらった人などへの心付け」「寺、神社、教会などへ支払ったお布施、戒名料、読経料など」「通夜や告別式当日に参列者に渡す会葬御礼費用」「火葬、埋葬、納骨にかかった費用」「遺体の捜索、遺体や遺骨の運搬にかかった費用」「死亡診断書の発行費用」です。
一方葬儀費用として含まれないのは、「香典返しの費用」「墓碑、墓地、位牌、仏壇等の購入費用や借入費用」「初七日、四十九日、一周忌等の法要に関する費用」「医学上または裁判上の特別の処置に要した費用(遺体の解剖等」です。香典返しに関しては何で?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、そもそも「香典」自体が相続税も贈与税もかかりませんので、そのお返しの費用は葬儀費用とは認められないという事になります。
・債務等
相続財産を計算する時には当然マイナスの財産は差し引かれる事になります。代表例としては「借入金(住宅ローンなど金融機関からの借り入れ、クレジットカードの未決済分など)」「ツケ払いの未払い分」「リース料」「未払いの家賃」「未払いの税金や健康保険料」「未払いの損害賠償債務(交通事故など)」があります。
という事で、これら全てを計算して「相続財産の総額(課税価格)」が算出されます。なかなか面倒ですよね。
この「相続財産の総額(課税価格)」は相続税を計算する上での第1段階です。
次回は「課税遺産総額」を計算する時に、この「相続財産の総額(課税価格)」から差し引いていい「基礎控除額」について解説したいと思います。
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※今回の記事は2024年11月3日時点での情報です。御覧になるタイミングによっては最新の情報ではありませんので注意して下
さい。