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Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

少し愚痴って良いかしら。いやね、今日もリハビリを頑張った。短期間の集中入院に賭けるような無謀な心持ちではない。断じて。頑張り続けている。その軌跡は、ブログにも残している。でも、良くなったと実感しない。2歩進んで3歩下がっている感覚。難病が憎い。



上の動画を見て欲しい。谷口彰悟という遅咲きで日本代表に定着した彼のショートドキュメント。アキレス腱断裂という大怪我からの復活劇。厳しいリハビリを耐え抜いた彼を突き動かすもの。もう一度、ワールドカップという舞台に立ちたいという思い。ふと我に返る。



僕にとってのワールドカップって何だろう。例えば、最愛の彼女との結婚とか。いいね。憧れるね。目指すべきベクトルとしては最適解か。でも経済力も、生活力も無い44歳が、これからどれだけリハビリを積めば元に戻れるよ。まず相手がいないだろう。はい却下。



ではまずは就職先を探さないと。かつての栄光を思い出せ。最高の仲間に囲まれて、高い成果を出し続けてきたはずである。おかげで引っ張りだこだったじゃないか。そうは言っても、病歴がね。10年超は長いね。前の職場にアルバイト採用してもらったら。うるせーな。

隣のベッドが空いた。一週間ほどの短期ステイ。にも関わらず、ほぼ毎日、面会に奥様が来られていた。献身的ね。こういうのを見てしまうと、結婚っていいなあと思ってしまう。片や身寄りのないご年配の同居人。看護師との会話が、薄いカーテン越しに耳に入ってくる。



看「ご自宅には戻らず、退院したら、施設に入るってことで良いのかなー」。男「・・・」。看「痰の吸引、しっかりと練習しておかないとね。あとは紙オムツにも慣れておかないと」。男「・・・」。望むと望まざるとに関わらず、日常会話は全て筒抜け。カーテンを開けてもらう。



屋外から、気持ちの良い日光が降り注いでくる小窓の存在。日中、気分よく部屋で時間を潰す。午後、リハビリに呼ばれる。作業療法だ。僕が得意だったボールを使ったトレーニング。運動機能を呼び覚まそうとする算段か。先生とキャッチボール。柔らかい材質なのに、怖い。

入院生活も9日目。まだまだ折り返し地点は見えない。何だろうか、この絶望感。ふと思い出す似た感覚。あれは2017年の2月に体験した、東京マラソンだ。一度はエントリーを諦めたことで、沿道の黄色い声はゼロ。一念発起して、当日を迎えるも、明らかな調整不足。足が重い。



景色は変わらない。僕はちゃんと進めているのだろうか。あ。交際相手だ。7キロ地点とまだ序盤ではあるが、僕には嬉しいご褒美。それに似たことがあった。家族の面会。差し入れにいただいた甘いロールケーキ。糖分を補給。感謝。また少しだけ頑張れそうだ。次は1週間後。



もし面会に行けなかったことを悔やんでいるリアルな友人の方がいたら、それは違うからな。まず以て、流行り病の感染対策中。次に不規則な検査とリハビリのコンボ。更にはシャワーから数日経った、不潔な自分を晒したくないという我儘もある。ただでさえ動きが緩慢なのに。


明けて月曜日。当直医がカーテンを開けて、笑顔で僕に話しかける。過日のRI検査の件ね。脳幹や小脳の萎縮は想像通りですが、ドーパミンの分量が通常より少ないことが分かりました。これは、パーキンソン症状の吉兆です。最近、手足の動きが緩慢だと悩んだことはありませんか。



お薬に含めましょう。但し、万能ではありません。効果として見込めるのは、手足の動きが改善されること。でも副作用は表裏一体。フラつきが今より酷くなるかもしれません。この入院中に導入してみて、経過を観察していきましょう。だってさ。また薬が増えるのか。嫌だな。



さてさて、待望のシャワータイム。え。火曜と木曜日って決まっていなかったかって。うん。僕も驚いた。シャワーは日中。その後にリハビリが入ることもある。汗だく。それが前回。更に金土日と地獄の3日間。汗と脂で髪が真っ黒。だから、とても気持ちが良かった。そんな月曜日。

さて検査やリハビリが一切無い土日。退屈だな。と、惰眠を貪って良い訳がない。先生から渡された個別の自主トレメニューを敢行。やべ。短時間で終わる。ジッと天井を見る。同部屋人を遮る、薄いカーテンがチラつく。生活音が気になる。独り言が煩い。咳が耳障り。そこで活躍するイヤホン。



Apple Air Pods Pro 2


今回の入院に際し、3台のワイヤレスイヤホンを持参した。それぞれ特性が異なる。まずは最も高価だったAir Pods Pro。2年前のセール時で33,000円ぐらいだったはず。一番上の写真の一番右にいる奴ね。ノイキャン最高。アップル製品との互換性も高い。主に読書の時に装着している。没頭できる。


final ZE500 for ASMR


次が真ん中の小さい奴。名前を見て、ピンと来た方。はい正解。ご存知「寝ホン」として評価が高いガジェット。半年ほど前にセールで購入。隣人様のイビキや咳や、ノイズや何やらで眠気を妨げられる共同生活において。耳栓では防ぎきれない時はコレ。寝っ転がって使っても、耳が痛くならない装着感。


Shocks OpenDots ONE


最後は一番左手前。僕が購入してきた数多のアイテムの中で、今年もっとも活躍した製品。イヤーカフ型と呼ばれる、外音を自然に取り込んだまま、音楽や映像のBGMを楽しめる。付け心地がまた良くて、装着したまま、あれ、どこに行ったとよく焦る。製品化前のクラファンで購入。四六時中付けている。