11年前の今日を振り返る。何故、そんな無駄な作法を。あ。だったら、ネタを提供しろよな。無理だよな。部屋から出られないんだから。だから過去を顧みる。禁断の果実。でもね。当時の投稿を遡って、該当する記事が出てこないのだ。仕方ないね。落ち込んでいたんだから。
病気だと判明してから、間も無く一か月が経過する時分。憔悴ぶりが目に浮かぶ。それでも平等に、明日がやって来る。週末。彼女がどこに行こうかと僕を誘う。普通なら、彼氏が難病だと分かったら、恋人は逃げる。ところが。彼女は違う。結婚しよう。僕が前を向ける理由。
茹だるような暑さの中。僕らは夏の鎌倉にいた。まだ何だってできる。杖なんていらない。僕には最愛の彼女がいる。人力車に乗る。車夫と軽快に話す様子は、今も動画としてスマホに残っている。昼食は名店で蕎麦を食う。食欲が湧かないので、ざるそばだが。あ。暑いから。
鎌倉のメインストリートを歩く。途中で寄ったジュエリー店で、結婚指輪を眺める。24万円也。給与の3ヶ月分から考えれば、安いのか。あれ。婚約指輪って何だっけ。暑くて思考が働かない。こんな時は、ハイ。冷たい瓶ビール。歩きながら飲む贅沢。分かるか。今はできない。
一日の終盤は、新江ノ島水族館を訪れる。デジタルアート集団の「チームラボ」とコラボイベントを展開していたとかで、それを見に行った思い出。ほら。マンタの魚影。そこに投影される、鮮やかなデジタルの世界観。綺麗だね。と君は笑う。それを見て僕も思う。確かに。
充実しているように見えるかい。なら、代わってやったっていいぜ。漏れなく、病気がセットで付いてくるがな。ちょっと待って。進行性の神経難病も、初期はまだ恐れるに足らず。それどころか、彼女がいて、仕事があって、住む部屋がある。何を不満に思う。羨ましいだろが。


















