経らく@経堂 | Poco a poco -難病と生きる-

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

不安だった一人暮らしも、流石にそろそろ慣れてきた。周辺の居酒屋開拓も順調で、例えば串カツの美味い「経らく」も、お店に顔を覚えてもらって久しい。地方から僕を頼って上京してきた友人と、カウンターに座る。店内の小さなブラウン管は、なでしこジャパンの試合が放送されている。こんな時間に酒が飲める贅沢。しかしそれは、束の間の幻。



あれだけ当時は出たかった実家も、今は昔。病状の重い母親は、その後施設に入った。兄弟のいずれもが今はそれぞれに拠点を持つ。残る家族は父親と、伯母と、犬。先日など実家に立ち寄ると、喋る貯金箱が煩かった。伯母も父も、僕を歓迎してくれる。宿泊を薦める。きっと彼らは寂しいのだ。意固地になっている。僕は何故、一人暮らしを続ける。