合併人事 二十九歳の憂鬱 | Poco a poco -難病と生きる-

Poco a poco -難病と生きる-

スペイン語の「poco a poco」は、日本語では「少しずつ」「ゆっくりゆっくり」という意味です。遺伝性による難病、脊髄小脳変性症を患っていると診断された2015年7月(当時34歳)以降、少しずつ身体が動かなくなる恐怖と闘いながら、今日を生きる僕の日記です。恐縮です。

向かいの席に座る同僚が、明日を以て退職をする。同じグループの人間が、である。そんな大事な話を、帰りの電車の中で、上司から届いたメールにて確認した。おいおい。


同日入社で、ずっと同じグループで働いてきた同僚や、同い年で、特に仲良くしてきた同期入社の同僚など、身近な仲間までもが今月中に退職しようとしている。僕の精神的な拠り所だった元上司だって、いよいよ今週末で退職するしね。人事のことは、僕にはどうすることもできない。ただ黙って、それを眺めるだけ。あまりに無力。一個人では、会社には勝てない。


さて、「人事」というテーマにおいて、タイムリーな小説をちょうど読み終えた。


合併人事 二十九歳の憂鬱 /江上 剛

働く女性、29歳の主人公。不況のあおりで銀行の統廃合が進む中、彼女の勤める銀行も、同規模のメガバンクと合併し、新たな銀行となる。旧態意識から抜けられない上層部、既得権益を守ろうとする役員層、競争率の高い役職を求め足を引っ張り合う中堅社員。銀行という特殊な世界において、2つの文化が融合できずにいるしがらみを、若手行員(主人公)の立場からリアルに描かれている。


一方で彼女自身、史上最年少役員候補の上司と不倫の関係に悩んだり、同年代の友人や同期との人間関係に救われたり、自身の仕事における意義を見つめなおしたり、溜息をついたり、泣いたり笑ったりと、20代後半のサラリーマンの等身大を見て取ることができるヒューマンドラマでもある。


今年2冊目の江上作品(前作は「非情人事」)。著者は、旧第一銀行に勤務していた経験を持つ。よりリアルな経済小説を読みたい時は、彼の小説を手に取るといいかも。ユーモアさや軽快なテンポにはやや欠けるが、企業内部の詳細な描写は、これはなかなか秀逸なものである。


まぁ結局はさ、どこの会社でも同じような悩みはあるんだよね。ちょっとだけ救われた。