●一歩一歩前進
痛みが出ないように、ペースを落とした。
これ以上上げると、完走は不可能だ。
25キロは1時間45分02秒で、5キロラップが22分09秒もかかった。
脚に力が入らない。
長年の経験から、レース後の脚のダメージを数日で済ませる走法を身につけていた。
最低限のダメージに抑えながら、力が入らないなりに走ることとした。
とにかくやれる範囲で頑張ろう。
スペシャルドリンクをとった。
そうだ、30キロのスペシャルドリンクは二女が名前を書いたし、35キロは長女、40キロは末っ子が名前を書いたんだ。そのスペシャルドリンクは絶対取るぞ。
二女の名前をつぶやきながら30キロへ向う。
もうキロ5分でも走れない。
一歩一歩前進するしかない。
脚に力が入らない。
少し頑張ろうとすると痛みが走る。
痛みを悪化させたら元も子もない。
また抑える。
辛い。
やめたい。
なんとか30キロ地点にたどり着いた。
2時間11分08秒で、5キロ26分06秒もかかっている。
スペシャルドリンクを手にする。
二女の名前が書いてあった。
涙が出てきた。
この調子で次は長女の名前をつぶやきながら進む。
雨も降ったり、強風になったり、コースは上りがきつく、ただでさえ苦しいのに、脚に力が入らない。
時計をみた。
4時間以内が制限時間だが、要項で、4時間20分までは計測すると書いたあったのを思い出した。
12キロを2時間ならいけるだろう。
耐えろ。頑張れ。
自分を励ましながら進む。
それにしても、抜かれる一方だ。
何百人に抜かれたのだろう?
脚の力が入らないのを除けば、ばてていないし、抜かれるのが悔しい。
もう少し耐えてね。脚に話しかけながら進む。
35キロ地点、2時間41分28秒でこの5キロは、30分20秒。
ついにキロ6分もオーバーした。
でも、4時間以内の完走は見えてきた。
スペシャルドリンクを手にする。
長女の名前だ。
よーし、次は末っ子のところだ。
元気になれた。
つづく