この日は初めて妻と一緒に息子の面会に臨んだ。
息子を見て最初に驚いたのは人工呼吸器が外されていることだった。なんでも、息子は自力で力強く呼吸ができていたため、予定よりも早く人工呼吸器を外すことになったのだそう。人工呼吸器が付いている間、元気が良すぎて、大泣きした際に余計な空気を吸い込んでしまったため、お腹がガスで膨れているとの笑い話もあった。
そんなお腹はタオルで覆われており、直に見ることはできないが、手術前と比べてぺちゃんこになっていることは一目瞭然である。こうして溜まっていた腹水が抜けてみると、如何に沢山の腹水が溜まっていたのかを改めて痛感させられる。
また、息子の目を覗き込むと、手術前は黄色かった白目が真っ白になっている。具体的な数字は聞かなかったが、手術前は20.0を超えている日もあった総Bilが、肝機能の回復によって低下したものと思われる。こうした変化を見ると、今回の移植によって、息子をこれまでの苦しみから少しは解放できているのかもしれない、と少し励まされた気持ちになる。
しかし、いいニュースばかりは続かない。
どうやら血液検査の結果、真菌(カビ)感染を示すβDグルカンが高いことが判明したらしい。真菌感染は移植後に気をつけなくてはならない合併症の一つであり、一歩間違うと命を持って行かれる恐れもある。
とりあえずは、βDグルカン高値の原因となっている真菌の種類を特定する必要がある。そのため、真菌の中でも最も注意が必要なサイトメガロウイルスとEBウイルスの検査をすることとなった。
同時に、真菌の温床となりうるチューブ類をなるべく抜き、様々な種類の真菌に対応可能な抗生剤を投与することでひとまずの対応をすることとなった。
「合併症に対して後手後手に回りたくない。常に先手先手を打っていきたい」とは息子の主治医の弁である。ここで打った先手が真菌に対して効いてくれるといいのだが。