この日の早朝、妻は、かねてより煩わしがっていた尿管を抜いてもらえるよう医師とネゴったらしい。ネゴは成功し、尿管は無事に抜いてもらえたのだが、同時に硬膜外注射も抜かれてしまったのが問題である。
硬膜外注射を抜いて、麻酔が徐々に身体から抜けてくると、妻の顔色がみるみる悪くなっていき、妻が感じる痛みもそれに伴って極めて激しくなっていった。
起き上がっても、仰向けになっても、横向きになっても痛みは和らがない様子で、私に背中を擦られながら何とか時を過ごすのが精一杯であった。
あまりの痛みに耐えかねて看護師に痛み止めをお願いし、点滴から注入してもらって、ようやく少し落ち着いて眠れるようになったようであった。
手術時の興奮と緊張が解けてきたからだろう。手術直後に比べ、妻の目に宿る力が弱っている様に感じる。帝王切開の後はピンピンしていた妻であるだけに、やはり生体肝移植のドナーになることは並大抵の負担ではないことを改めて感じさせられる。