寿司職人の悲劇 | オーストラリア子連れ冒険記

オーストラリア子連れ冒険記

シングルマザーになり損ねた脳腫瘍を患った日本人ママが、子ども二人を連れてのオーストラリア珍道中冒険譚。

わたし達の住むビーチのそばには、

お洒落な寿司バーがありまして、

回転寿司屋さんが出来るまでは、

日本食が恋しくなると、そこで

よく少々お高いオシャレ日本食

を食べていました。そこには

日本人の若い寿司職人さんがいて

他国の方の作る「なんちゃって日本食」

ではなく普通に美味しい日本らしい

お料理を食べられたのでした。

職人さんは明るい面白い方で

「寿司ってオーストラリア人は

ヘルシー!!って思ってるけど

お金をセーブする為にここで

毎日お寿司だけ食べ続けていたら

全身に発疹が出て、びっくりして

病院行ったらビタミンなんかの

栄養不足だと言われちゃったんで

寿司はヘルシーじゃないですよ〜」

と笑いながら教えてくれました。

 

しばらく、話を聞いていると

彼はオーストラリアに来てから

寿司を握るようになり、このバーの

オーストラリア人オーナーが

日本食が好きで、ここ専用で

寿司を握ってくれるなら

ワーキングVISAをサポートすると

言ってくれたので、ここでVISAを

サポートされて働いている事、

その職人さんの日本人彼女

というのが、私の英語学校の

クラスメイトだった事、

が判明して、時々、また彼女とも

連絡を取るようになりました。

 

ある日のこと、その彼女から急に

「大変なことになった!」と

連絡がありました。よく聞くと

彼が「不法滞在で入国管理局に

拘束されている」というのです。

実は、寿司バーが段々人気になり

毎日大量に巻き寿司が必要になり

彼女も寿司を巻く手伝いをするように

なっていたそうなのです。

でも彼は正社員、彼女はお手伝い。

お店に出ても賃金が払われないので

彼が材料をウチに持ち帰り

彼女が巻き寿司を大量に巻いて

半分はお店に、半分は知り合いの

テイクアウトのお寿司屋さんに

買ってもらってお小遣いを得ていた

と言うのです。それをオーナーが知り

大激怒!「契約不履行」だとして

すぐに移民局にサポートVISAの

取り消しを通報し、彼はその日の内に

収容所にしょっぴかれ、”不法滞在”で

日本に強制送還されそうになっている

と言うのです。

彼女達が、お金を貯めて永住しようと

頑張っていたのはよく分かります。

「ワーキングVISAをサポートしてもらい

その会社に2年間、滅私奉公すれば

永住権を申請出来る」という

永住権への道があるのです。

サポートしてくれる人を見つけるのが

大変なのですが、彼はラッキーにも

オーストラリア人のオーナーさんに

気に入ってもらっていたので

2年間寿司を握れば、永住権を申請する

可能性はあったので、2人の将来を考え、

彼女もお金を稼ごうとした、

ただ、それだけなのです。

いかんせん、材料は「お店のモノ」で

寿司を卸した相手が、「お店のライバル」

だったと言う事を、失念してしまった...

というのが問題でした。。。

人は信用され、仕入れや在庫や会計

お店の権限を一切任されてしまうと

「自分がオーナー」のような錯覚を

してしまう生き物なのです...

これは、オーナーも従業員もよくよく

心していないと、間違いを犯します。

そして「ワーキングVISA」というのは

つまりは”VISAサポート”を人質に

「VISAサポートして欲しいだろ?」

「それならブラックでも2年間だけ

文句言わず、馬車馬のように働け!」

と有無を言わせず、2年間格安で

人材を確保する事が出来る、

という意味でもあります。

 

収容所では英語が分からず、大変

苦労したそうですが、私たちには

為すすべもなく(弁護士さんや

日系新聞にも相談してみましたが)

「VISAの取り消し」による

「不法滞在者」となり、3日以内に

2人は自腹で航空券を買って、日本に

強制退去しなければならなくなり、

その上「3年間は入国禁止」という

厳しい罰を受けてしまったのでした...