花と雪の<Ц> | かわいいモンゴル語図鑑 ~そしてたまに、いろんなこと~

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偶然にモンゴル語に出会い、そのかわいさにきゅんとして、なんの目的もなく学び始めちゃったワタクシの、モンゴル語おべんきょ日記。そのほかの好きなことのことも、ときどき。

見慣れないキリル文字なのに、わりと早く読めるようになった「Ц」の文字。
箱というかカップのような形の右下にちょん。
ツェー、英語のアルファベットに移せば「TS」ですね。

なぜ、早めに読めるようになったかといえば、
これが、「雪」と「花」の頭文字だったから。


この秋、下手の横好きで習っているクラシックバレエで、
ちょうど踊っていたのが「くるみ割り人形」の中の「雪のワルツ」。
その次に踊る予定だったのが「花のワルツ」です。

どこの国でも、キレイなものにはキレイな響きの言葉がつくのだなと、
モンゴル語の教科書を見てしみじみ。
きれいだな~と、何度か口に出したり書いたりしていたら、
すーっと覚えてしまいました。

言葉を覚えるとき、「よく使う言葉から覚える」のがセオリーだとは思いますが、
私のように趣味で習う大人なら、きれいだと思う言葉、好きな言葉を
コレクションするみたいに覚えていくのも、楽しいかなと思いました。

雪国育ちの人なら同意してくれると思うのですが、
雪には、雪のにおいがあるし、音がありますよね。
初雪のにおい、大雪の後に晴れたときのにおい、夜の雪のにおい、雪がとけるにおい。
音はほぼ無音ではありますが、降り方によって「無音」の加減が違うと思います。
無音以外にも、吹雪の音、屋根や木から雪が落ちる音、雪を踏む音、雪かきの音。
東京で暮らすようになってもうだいぶたちましたが、今でも分かると思います。

雪国に生まれ育った人は、雪というものが染み付いているなぁと思います。
モンゴル人のバレエの先生が、「雪」の踊りを教えるときに、
手のひらをヒラヒラと動かすしぐさをして、
「雪はこうじゃないよね。こう降るよね」とお手本を見せたときに、
「ああ、この人も雪国の人なんだな」と思いました。
日本よりずっと北で、ずっとずっと冬が厳しいモンゴルの雪は、どんな「цас」なのかな。

そして「花」。
モンゴルに旅行したときには、とてもたくさんの花を見ました。
その中でも、忘れられないのが、「マンジュシュリ・ヒード」という、お寺の廃墟(&博物館)の、
元・境内のような山の中で見た、エーデルワイスとナデシコです。

モンゴルといえば、草原か砂漠かというイメージしかなかったのですが、
その古寺に行く道は、白樺やトウヒのような樹林が続き、日本の高原のようでした。
8月なのにだいぶ寒くて、小雨が降っていました。
お寺には、社会主義の時代に失われたふるいラマ教の僧侶の生活がわずかに残り、
お寺の後ろの崖には、僧侶が長い時間をかけて刻んだ仏様の像が残っています。

岩の多い道を登っていくのですが、その途中の草原には、いろんな花が咲いていました。
その中に「ここ、スイスだっけ?」と思うような、真っ白で凛としたエーデルワイスの花と、
「やまと」とつけたくなるような、ピンク色もかわいいナデシコが、並んで咲いています。

近くに大きな大きな銅の「器」のようなものがあり、
それは、巡礼の人の食事を作るための鍋だったのだそうです。

なんだか、今思い出しても、不思議な夢を見ているみたいな所でした。

「цэцэг」 の、ちょっとささやくみたいな響きには、
花屋さんのバラとかガーベラとかより、
あの古いお寺の、昔の境内に咲いてた花たちが、似合うなぁと思います。