プログラムはウェーベルン、シン・ドンフン、デュティユーという、音色と空間感覚を軸にした非常に統一感のある内容だった。
特に印象的だったのは、読響の弦楽器群。チェロとコントラバスを中心とした低域がしっかり空間を支え、現代曲特有の浮遊しがちな響きに重力を与えていた。その土台の上で木管や打楽器の色彩が立体的に浮かび上がり、デュティユーの精緻なオーケストレーションが鮮やかに機能していた。
シン・ドンフン《ヴィオラ協奏曲「糸の太陽たち」》 は抽象度の高い作品だったが、オーケストラが有機的に支えることで音楽として自然に流れていたのが印象的。アミハイ・グロスのヴィオラも、独奏として突出するより、オーケストラの響きの中で音色を変容させていくような存在感だった。
サントリーホールの特性もこのプログラムに非常に合っていた。残響の豊かさだけでなく、声部の分離や定位の明快さがあり、音色の受け渡しや弱音の陰影がよく見える。《メタボール》では各声部の色彩変化が非常にクリアで、響きそのものを聴く体験になっていた。
客席は6割ほどだったが、演奏の質は非常に高く、現代作品が単なる「難曲」ではなく、豊かな音響体験として成立していた夜だった