ポジティブ心理学のルーツと歴史 | 立命館大学ビジネススクール教授 高橋慶治のブログ

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立命館大学ビジネススクール教授、合同会社人間開発研究所代表社員、元臨床心理士、元JOC強化スタッフ(メンタルトレーニング、コーチング)の高橋慶治が、マインドフルネス、メンタルタフネス、ストレスマネジメント、コミュニケーション&人間関係など色々書いています。

ポジティブ心理学の誕生は1998年にアメリカの心理学者マーテイン・セリグマンによって提唱された新しいものです。 しかし、 幸福や有意義な人生について探求する歴史はとても古く、ルーツは古代ギリシア時代にあったと言えます。


ギリシア時代の哲学者たちの間でも重要なテーマの1つでした。 ソクラテスは、「人がよいと思うこと」と「世間が欲していること」を一致させられれば、幸福になると言っています。 プラトンも幸福を得る方法を探求しましたし、 そして、アリストテレスは「達成しうるあらゆる善のうち最上のもの」 が 「ユーダイモニア (幸福)」 だと述べています。


また、ポジティブ心理学は、インドの思想や宗教(ヴェーダなど)や仏教、日本の禅の影響も受けています。 研究対象の「愛」 「思いやり」 「喜び」などは、インドの宗教や仏教において幸福へ通ずる道だとして推奨されています。ヨーガや座禅など瞑想をはじめとした東洋的な訓練法や手法が、ポジティプ感情を養うために効果的であることも実証されているのです。


1990年代より、多くの心理学者が臨床心理学(精神的疾病の治療研究)に発展してきました。その一方で、 1960年代に主体性や自己実現といった、 人のポジティブな側面を強調した 「人間性心理学」が生まれました。 

 

その代表的人物がアプラハム・マズローです。 彼は、 自己実現(幸福や有意義な人生を実現)している人を研究し、その成果を普通の人々に役立てるべきだと考えました。

 

ポジティブ心理学を提唱したセリグマンは、ポジティブ心理学とは 「人間が持つ潜在的能力を十分に開花させ、自分がなり得る最高の自分になるための科学的研究」 だと説明しています。 

 

人間性心理学は、定性的な分析 (性質の様子や変化などを、数字では表せないことに注目して分析)するまでで実証的研究、科学的な枠組みが乏しいと批判されていました。人間性心理学に科学の枠組みを与えより定量的な分析 (数値を用いて具体的に分析する)をする実証的な研究をし、それを応用することがポジティブ心理学とも言えます。