今年の皐月賞は、昨年に続き、絶対的な本命馬が不在。というのも、２歳時からこの世代の牡馬路線を引っ張ってきたシンエンペラーが、京都二歳Ｓこそ勝ったものの、その後はホープフルＳ、弥生賞を勝ち損ねているからだ。それがゆえの大混戦。京成杯勝ちのダノンデサイルと同②着のアーバンシック、共同通信杯勝ちのジャスティンミラノ、きさらぎ賞勝ちのビザンチンドリーム、弥生賞勝ちのコスモキュランダ、若葉Ｓ勝ちのミスタージーティー、すみれＳ勝ちのサンライズアース、若駒Ｓ勝ちのサンライズジパング、そして牝馬ながらホープフルＳを勝ったレガレイラと、皐月賞制覇の可能性のありそうな馬は片手ではたりないくらい。昨年に続き、今年も多くの馬にチャンスがありそうな様相であり、最終的にどれが１番人気になるのかを予想するのも難しいくらいだ。今年の皐月賞も、「強いメンバーが揃った！」、とは言えないかも知れないが、予想的には「面白いメンバーが揃った！」と言えそうだ。
皐月賞を予想する上での重要ポイントの一つは、ペースに関する予想、より具体的に言えば、５Ｆ通過ラップについての予想である。Ｈペースか？それともＳペースか？換言すれば、後傾ラップからの上り勝負になるのか？それとも前傾ラップからのスタミナ比べになるのか？その見極めが、予想を進める上での最初の大きな分かれ道となる。そこで参考までに過去１０年の皐月賞の前後半５Ｆのラップを示すと、次のとおりである。
2023 58.5＜62.1 前傾ラップ ソールオリエンス（重）
2022 60.2＞59.5 後傾ラップ ジオグリフ（良）
2021 60.3＝60.3 平行ラップ エフフォーリア（稍）
2020 59.8＜60.9 前傾ラップ コントレイル（稍）
2019 59.1＞59.0 後傾ラップ サートゥルナーア（良）
2018 59.2＜61.6 前傾ラップ エポカドーロ（稍）
2017 59.0＞58.8 後傾ラップ アルアイン（良）
2016 58.4＜59.5 前傾ラップ ディーマジェスティ（良）
2015 59.2＞59.0 後傾ラップ ドゥラメンテ（良）
2014 60.2＞59.4 後傾ラップ イスラボニータ（良）
ご覧のとおり、結果は過去１０戦中、前傾ラップが４回、後傾ラップが５回、並行ラップが１回だった。５Ｆ通過ラップというものは、逃げ馬の出走数、逃げ馬の能力、枠順、馬場状態等さまざまな要素の関数であり、戦前にペースを正確に予想することは容易ではない。競馬予想においてペースを予想するのは、実は、ナカナカ難しいものだ。それでも、何もヒントがないないわけではない。特に重要なヒントが馬場状態である。前記１０回の皐月賞のうち、レースが稍重～重で実施されたケースは、全部で４回（２０２３年、２０２１年、２０２０年、２０１８年）あった。その４回中、前傾ラップは３回あり、並行ラップは１回あった。つまり後傾ラップは一度もなかった。道悪になると、騎手は、良馬場の時以上に、「４角出口までに良いポジションを取りたい！」という意識が強くなる結果、全体的に全馬の仕掛けが早くなるため、前傾ラップになりやすいのだ。対照的に良馬場だと、６回中５回は後傾ラップ！であり、例外はディーマジェスティの勝った２０１６年だけ。皐月賞では、道中のペースと馬場状態の間に密接な連関があるという事実はしっかり憶えておく必要がある。
連続開催の最終日に行われる皐月賞は、ペースと馬場状態がレース結果に大きく作用する。そこで現時点で週間天気予報を見ると、千葉県船橋近辺の週末は晴れ模様であり、降水確率は低そう。となると、今年の皐月賞は良馬場で行われる可能性が高い。前述のとおり、過去１０年、良馬場で行われた皐月賞は５／６の確率で後傾ラップの上り勝負になっている。後傾ラップの皐月賞で留意すべき点は、「上り３Ｆ上位馬同士では決まらない！」ということ（＝上り３Fの速い馬が追い込みきれず④着以下に負ける可能性が高いということ。）。２０１６年のように、良馬場の前傾ラップになった皐月賞は上り上位馬同士で決まりやすいが、後傾ラップの皐月賞では、上りは遅い（※上り３Ｆが第一位～第三位ではない、という意味）馬でも勝負になる。例えば、３～４角の立ち回りが上手な馬や、コーナーでの加速能力に長けた馬が粘り込みやすいのが良馬場で後傾ラップの皐月賞のトレンドなのだ。過去１０年でいえば、２０２２年の①着ジオグリフと②着イクイノックス、２０１７年の①着アルアインと③着ダンビュライト、２０１５年の③着キタサンブラック、２０１４年の②着トゥザワールドと③着ウインフルブルームらはこのタイプ。近代競馬は、どうしても上りの速い馬が人気を背負いやすいため、必然的に上りの速くない馬は人気が薄くなりやすい。前掲のジオグリフは５人気、アルアインは９人気、ダンビュライトは１２人気、ウインフルブルームは９人気という人気薄だった。今年の皐月賞では、こういうタイプの馬に注意したいと思う（※週間天気予報が変化して、良馬場・後傾ラップ想定になれば、予想を根幹から見直す必要があるので、その点は要注意。）。
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