先日、狂言を見に行った四人組で、シネマ歌舞伎『三人吉三』を見に行ってきた。

テレビで視聴してから5年経つ。

スクリーンで見たい!と思っていた念願が叶った。

期待以上に、よかった!

圧巻!

クライマックスは、固唾を飲んだ。

歌舞伎の演目はそれほどいろいろ見たわけではないが、これまて見た中でも、やっぱり『三人吉三』が一番好きだ。

勘九郎も、七之助も、松也も、もちろんどんな役も素敵にこなされるが、わたし個人の好みとしては、この『三人吉三』が一番いい!

綺麗だったり、カッコよかったりする役はほかにも色々あるが、この三人吉三の毒を孕んだ色気は何事かと思う。

また編集が、いい表情をズームで抜いてくる!

もともと歌舞伎は見得をを切って、キメの表情やポーズを静止状態で観客に印象付けてくれるものだが、そこをきれいにズームしてくれる。

一瞬の目の運びの艶っぽさや、口の片端でニヤリとしてみせる「悪党のカオ」を、なんとも効果的に見せてくれるのだが、そういう表情が、三人とも実にいい。

楽しそうに演じていらっしゃる。


そもそもストーリーに関してはもう、黙阿弥の上手さに舌を巻くほかはなくて、幾重にも毒々しく絡んだ因果の糸もすごいし、それでいてセリフのなんと洒落ていることか。

元々の黙阿弥の脚本の上に、現代人もクスッと笑える場面がそこここに用意されていて、笑いがあるからこそ、クライマックスへとドロドロ雪崩れ落ちていくさまが凄まじい。


予告編はコチラ

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お坊とお嬢の見交わす目と目や、重なる手と手がなんとも熱っぽくて、そこらへんのいかにも「ドヤ!みんな大好きなBLやぞ!」と言わんばかりのドラマより、ずっと萌えるしそそられる。

歌舞伎は娘役も男性が演じるが、娘役は自然と女性だと思って見る。

けれども、お嬢は姿形こそそんじよそこらの娘より美しいが、正真正銘オトコだ。

普通の女形にはない、凄みがある。

目が離せない。


ラストシーン―――、全ての音が消える演出に、客席が異様な緊張感に包まれる。

いつ音がよみがえるのか。

水を打ったような静かさに、生唾を飲む音すらはばかられ、緊張に耐えきれずに大声で笑い出したいような衝動に駆られる。

家でひとりで見ていた時にはわからなかった緊張。

水を張った洗面器に顔を浸けて覗いているような感覚で、もういよいよ息が続かない!と思った瞬間に、音が戻ってきて浮上できた。


結局、みんないなくなった―――。

悪業の全てに、真っ白な雪が覆い被さって、なんとも切ない。

息をするように悪行を重ねてきた悪党たちでも、親兄弟や友を思う強い気持ちがある。

義理も人情も持ち合わせている。

白い切餅ひとつが悪党たちの間をグルグル巡って、ついには全てを雪に埋めた。


毒々しく、けれども生々しかった三人吉三。

シネマの冒頭や途中で幾度も、様々なリズムが奏でられる。

生活音を音楽のように奏でている。

産まれたての赤子の声も聞こえた。

貧しい人たちも、悪党たちも、江戸の街で確かに生きていた。

それだけに、ラストの静寂が痛ましい。


圧倒されて、四人で映画館をあとにした。

お一人はそのまま帰られたが、あとの三人でかなり遅い昼食をとった。


狂言、歌舞伎と楽しんだので、明日からまた頑張って生活します!


なんだかんだで2ヶ月続けてシネマ歌舞伎を見にいきましたが―――。

来月の『桜姫東文章』も見に行きたくなってしまう💦