好きな観劇から遠ざかっている日々

父から長く目を離せなくなって、大好きだった観劇はほとんど出来なくなった。

芝居というのは観に行ってこそなので、行かないとなると途端にテンションが下がる。

コロナ禍で公演自体が少なかった時は、行けないのは誰しも同じだったから、配信で応援したり、たまに公演があれば都合をつけて行ったらしていたが、その後、公演がほぼ元通りになってゆく一方、わたし個人はますます出かけづらくなって、そうなるともう、舞台情報そのものが目の毒になる。

情報を追って、チケットを取って、さて公演が始まって当日を迎えても、行けるかどうかなんて分からない。

父の体調は、その日その時にしか分からないのだ。

もちろんそんなことを言っていたら何の予定も入れられないが、観劇となるとチケットもお安くはない。

チケットが抽選で取れるかどうかも分からないから、複数回を申し込むのだが、それが全部当たってしまうとさらにお金がかかる。

今日はパパ上の調子が悪いから行けなくなっちゃった〜で流せる額ではないのだ、わたしにとって。

いつの間にか、SNSで情報や感想を見るのは避けるようになった。



 シネマ歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』を見に行った

今日、シネマ歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』を見に行った。

刀剣乱舞が歌舞伎になる、と最初にそんな話が出た頃までは、まだ情報を追っていたのだと思う。

松也さんが三日月を演られるということも聞き及んだし、ビジュアルも見た。

情報を自然とシャットアウトするようになったのは、たぶんそのあとだ。

刀ステ(舞台刀剣乱舞)も刀ミュ(ミュージカル刀剣乱舞)も、あれこれを見聞きしないようになった。

なので、歌舞伎版は気になりつつ見ていなかったし、内容も全く知らずにきた。

そんな中、先日、大学時代の友人が、シネマ歌舞伎で刀剣乱舞を観てきたという。

彼女はナマでも見たらしいが、シネマ歌舞伎のほうもいい出来栄えのようだ。

それを聞くと、やおら「見たいかも?」という気になった。

シネマ歌舞伎なら、当日でもチケットが買えるし、時間も読める。

実は、シネマ歌舞伎の来月のプログラム『三人吉三』は、ボランティア仲間たちのお誘いで観に行くことが決まっている。

『三人吉三』は昔から大好きな演目で、シネマ歌舞伎の舞台は、以前テレビで放送された時に見たのだが、とても素晴らしかったのでスクリーンでもぜひ見たいと思って、二つ返事で参加表明した。

今月のプログラムが刀剣乱舞だとは知らなかった😳。


とにもかくにも、そんなワケで、急遽本日見に行くことにしたのだ。

長く遠ざかっていたので、あまり心が大きく動いたわけでもなく、まあ折角だから見ておこうか、くらいのノリだった。







 歌舞伎・刀剣乱舞は、予想以上に歌舞伎だった

〽︎その打ちのけにありありと 浮かぶ模様は三日の月


冒頭、まだ刀剣男士が登場もしないうちから、「打ちのけ」とか、「三日月」とか、そんなワードを耳にしただけで、心が一気に刀剣乱舞の世界に引き戻された🤣。

ああ、わたしやっぱり刀剣乱舞見たかったんだな、と今更ながら飢えに気づく。

早く三日月に会いたい!

そう思う一方で、初めて目にする歌舞伎本丸の三日月宗近を、受け入れることができるだろうかとドキドキする。

こんなことなら、せめてレビューなりとも少しはチェックしてくるのだった。

もともと事前にレビューなどは見ないたちだが、なにしろあまりに浦島太郎なので、ちょっとくらいは前知識を入れておくべきだったかとドキドキしながらスクリーンを眺める。

なんだ、これ? 思ってた以上にちゃんと「歌舞伎」やん😳!

などと、失礼なことを思う。

今様っぽい調子の歌から義太夫?(すみません、そこらへん詳しくなくてよく分かってません)、長唄・・・・・・。

演者さんもさることながら、じかたが本格的な歌舞伎で(当たり前と言えば当たり前なので失礼な言い方かもしれませんが)、三味線、琴、琵琶に尺八と楽しませていただいた。

途中、女性ボーカルの歌が入ったのは、ちょっとだけ「・・・・・・」となったが、全体として邦楽要素が素晴らしかったなあと思う。

いや、わたしは上方地歌の琴と三味線しかやらないので、ほかのことはさっぱり門外漢なのだが💦



 やっぱり三日月宗近が好きだ

で、肝心の登場人物たち。

結論から言うと、なんら違和感がなかった😅

『刀剣乱舞』というコンテンツがすでに、各本丸で色んな在り方があるのが当たり前という認識を作り上げてしまっている。

そして、どの本丸の刀たちもそれぞれに魅力的で、本丸によって少しずつ肉付けも違うけれども核の部分のアイデンティティは損ねられていない、という信頼性ができているように思う。

刀ステ本丸も刀ミュ本丸もえいらぶ本丸も花丸本丸も活撃本丸も、それぞれの三日月や山姥切や和泉守兼定がいて、それぞれ違っているのに、いずれもちゃんとそれらしい。

審神者たち(プレイヤーであり、ファンである我々)もそれをすっかり心得ているから、新しい本丸にもスルリと入り込める。

わたしは特に刀ステ本丸のファンであり、推し刀が三日月宗近なので主に三日月を例に挙げるのだけれども、たとえばその三日月宗近であれば、わたしは鈴木拡樹の三日月宗近を一番に推しているわけなのだが、よその本丸の三日月もやっぱり好きなのだ。

歌舞伎本丸の三日月も、わたしにとってやっぱり三日月であって、どの本丸の三日月を見ても、どこか根っこで繋がって、三日月宗近という一振の刀のアイデンティティに重なる。

三日月が三日月であるだけで、胸がきゅっと締め付けられる気がする。

おまけに、時代は永禄

刀ステ『悲伝』の時代だ。

『悲伝』は刀ステの中でも本当に好きな話の一つで、足利義輝と三日月との間には主従としての絆がある。

それだけに切ない。

『月刀剣縁桐』も、切り口やストーリーは『悲伝』とは全く違うものの、義輝の死を促さねばならない三日月の胸の内を思うと辛くなる。

あの三日月とこの三日月は別の個体だと、そう思っても、三日月という刀には違いない。

とはいうものの、歌舞伎本丸の三日月は、どこか初々しい

ほかの本丸の三日月宗近という年古りた刀の、見た目は美しいがどこか枯れて疲れているイメージとは違って、「ジジイ」と言いながらも何やら若やいだ三日月に思えた。

枯れた三日月には枯れた三日月の、初々しい三日月には初々しい三日月の、それぞれの痛々しさがある。

歌舞伎本丸の三日月には、枯れていないがゆえの切なさを感じた。



 三日月以外の登場人物たち

三日月しか見ていなかったわけではないので、一応覚書として触れておこう🤣。

あとの刀剣男士は、小狐丸と小烏丸と髭切・膝丸の兄弟、同田貫の五振。

小狐丸は義輝様、髭切は義輝様の妹の紅梅姫、同田貫は松永久秀の息子・久直、と兼ね役なので、この三振は出番が少なくてちょっと残念だったが、義輝様も紅梅姫も久直も主要人物なので、役者さんとしてはほぼ出ずっぱりだったかも。

小烏丸さまは衣装も声色も女形のつくりだが、ちゃんと小烏丸さまだなと感じたし、舞姿も美しかった。

膝丸は、今回の敵キャラ「異界の翁と嫗」が土蜘蛛モチーフと思われるので、蜘蛛切の異名を持つ膝丸の存在感はいやが上にも増した気がする。

女形としては、小烏丸さまのほかでは、先述の紅梅姫異界の嫗(雲井姫)、それから松永久秀の妻しがらみ(柵でいいのかな?)。

紅梅姫は髭切の兼ね役だが、髭切も紅梅姫も可愛らしかった。

三日月に恋心を打ち明けて、あわれ玉砕した紅梅姫💦

兄は亡くなるし、気の毒だ。

あとは、松永久秀果心居士(異界の翁)が流石の存在感だったのと、小狐丸の兼ね役である足利義輝と同田貫の兼ね役・松永久直の熱演が良かった!



 刀ステが恋しい

なにはともあれ、久しぶりに刀剣乱舞の世界に触れて、やっぱり三日月好きだわとなった。

こうなると、久しぶりに刀ステを見たくなってしまう💦

円盤でも見返すか・・・・・・😅

今日は三日月宗近を鍛刀する場面が見られて楽しかったのだが、パンフレットを買おうとしたら、わたしの前の人で売り切れたのはがっかりだった🤣。