「陸王」のミッドフット着地、人間本来の走り方について | S blog  -えすぶろ-

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-人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ- 『BORN TO RUN』より
走りながら考える ランニング・読書のブログ

「今流行りのシューズは踵のソール(靴底)がぶ厚くて、必然的に踵から着地をする「踵(ヒール)着地」という走法になるが、これだと脚を痛めやすい。大多数のランナーがこの走り方になっている。一方、足の中央付近で着地をする「ミッドフット着地」という走法は足への衝撃が吸収され、エネルギーのロスも減る。実はこれこそが「人間本来の走り方」だ。人類は他の動物には無い長く走り続けられる能力を身に付けたことにより、生存競争に勝ち残れた。走ることは人類の歴史そのもの。この人間本来の走り方「ミッドフット着地」を身に付ける為にはソールはできるだけ薄く裸足に近い方がいい。正に足袋のような靴がベストだ」

「陸王」でランニングに詳しいスポーツショップの有村が宮沢社長に話した内容です。

(実際に昔は日本人の長距離ランナーは足袋の底を補強した「マラソン足袋」で走っていました。箱根駅伝創始者でオリンピック出場もした金栗四十は、この足袋でマラソンを走り当時の世界記録を出したこともあります)


有村の語った内容については「BORN TO RUN -走るために生まれた-」という本で詳しく語られています。池井戸さんもこの本は「陸王」を書く前に読まれたはずです。

(アトランティス社はこの本で徹底的に叩かれたナイキがモデルでしょう(笑))

当ブログでも取り上げたことがあるのでお読みください。↓

BORN TO RUN -走るために生まれた- ①人類の体は長距離走用に進化した

ランニングが趣味の私にとってはバイブルのような本です。

 

こちらの動画は「つま先(フォアフット)着地」とありますが、これが「陸王」で語られているミッドフット着地のお手本のような走りだと思います。マカウ、ハイレゲブラセラシエ共にマラソン2時間3分台の世界歴代トップ10に入る選手です。

 

ランニング歴6年でフルマラソン9回走っている私も、実は腸脛靭帯炎という膝外側が痛くて走れなくなる故障に何度も苦しんできました。腸脛靭帯炎は別名ランナーズ・ニー(ランナー膝)とも呼ばれていてランニング障害の代表的なものですが、これこそ正に踵着地が原因の故障です。

試しに公園の芝生の上でも裸足で走ってみればすぐに分かりますが、踵から着地したら痛くて走れません。すぐにこのミッドフット着地に近い走り方に“自然に”なります。

我々人類は少なくとも数十万年間は裸足で走ってきました。底の厚いランニングシューズを履いて走るようになったのはたかだかこの4、50年位。脚全体も足裏も裸足で走る構造になっているから自然にミッドフットで着地するようになるのです。ですから裸足では走ることが無理な“不自然な”踵着地をしていては当然故障する訳です。

 

私も「BORN TO RUN -走るために生まれた-」を読んでから、ランニングの途中、芝生の上を裸足で走ったりしながらフォーム改造に取り組み、3年近くかかってやっとランナーズ・ニーから解放されました。

(ちなみに「フォアフット着地」と言う極端につま先よりを意識した着地で走るとふくらはぎやすね等膝より下を傷めます。これも経験済み(笑))

ランニングシューズのソールの減り方を見ると踵着地かミッドフット着地かがすぐ分かります。踵着地では踵の角が他の部分に比べて極端に減っていきますが、ミッドフット着地では全体が平均的に減っていきます。私も以前は踵が極端に擦り減って中のミッドソールが出てくる位でしたが、今では800km以上シューズはもちますし、ソールは踵からつま先まで平均して減っています。
足裏には土踏まずの他にも縦横それぞれにアーチがありアーチには筋膜・腱が貼り付いて着地時に衝撃を吸収するクッションと跳び上がるバネの役割を担っています。ウィンドラス機構という着地前に親指が上がりアーチが高くなって自然に着地に備える機構が備わっているのですが、踵から着地したのではこの機構を上手く使えません。
また、人間本来のミッドフット着地なら体の真下で着地するので膝のクッションも十分に使えますが、踵着地では真下よりも前側、膝が伸びた状態で着地するため膝への負担が増えてランナーズ・ニーを誘発します。

 

「人間本来の走り」という考え方がより広まれば、故障でランニングを止めてしまう人も減り、ランニング人気がもっと上がるかもしれませんね。

その意味でも頑張れ「陸王」!

 

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