8月17日。きっと私は、これからの人生において何度も巡り来るこの日を、新たに記念日に加えるのだろう。
彼女ほど夢中になったアイドルは、いなかった。いや、この先も現れるのかどうか、怪しい。
AKB48で8年間活動した倉持明日香が今日、東京・秋葉原の劇場で卒業公演を行った。
私は行けず、記事を読みながらダムを崩壊させただけであるが、私のダムを刺激するほど感動的な公演だったようだ。
彼女らしい、温かな雰囲気に包まれた一夜だったとも聞いている。
私が倉持を知ったのは、4年前だった。
当時、私は22歳で、大学ラストイヤー。ただ、周囲の友人とは異なり、翌春からの就職とはならず、尊敬できる教授のもとで英語学の研究を続けたくて、大学院への進学を決め、それが内定していた。
何がきっかけで倉持を推し始めたのか。それは、現在でもわからない。
おそらく、これより1年前に失恋を経験し、傷心から回復しきれていなかったため、彼女のようなおっとりした感じの女性を、心のどこかで求めていたのだろう。それとも、あれだけ大人数の48グループで数少ない同い年メンバーという、プロフィール上の理由もあったのかもしれない。
以来、彼女の出る番組をチェックするなど、倉持推しの日々が始まった。
当時中心メンバーとして活躍していた前田敦子や大島優子ほどの知名度はなかったが、まったく無名のメンバーというわけでもなかったため、私の周囲で知っている人は知っているといったアイドルだった。
私としては、せめて私が友人と呼べる人たち全員には覚えてもらいたかった。私の高校時代からの友人は、私が話したのを機に、倉持の顔と名前が一致するようになったようだ。
それから半年後、私の教育実習が、母校の高校で始まった。
大学の教職課程担当者から、「何か自分のアピールポイントを作って、生徒に覚えてもらうとよい」と言われていた私は、「もしかしたら一部の女子はとてつもない吐き気に襲われるかもしれないが、『倉持明日香推しのコバヤシ』でいってみるか」と決め、教壇に立った。
すると、私の記憶の中ではホームルーム担当クラスでAKBマニアを公言していた女子生徒から、すぐに覚えてもらった。
ここで一つ、大きな爪跡が残せた。
それは、現職の教員となった今でも変わっておらず、AKBを知っている生徒は、すぐに倉持と私を結びつけてくれた。野球に詳しい野球部員なら、倉持を「元ロッテの倉持明さんの娘」で覚えている。
時を同じくして、第4回AKB48選抜総選挙が行われていた。
世間の注目は、大島優子の首位返り咲きか、それとも新たな女王の誕生か、といったところだったが、私の注目は、倉持明日香の選抜復帰の可否だった。
結果は、22位。アンダーガールズ入りを果たした。
実習最終日にもらった色紙には、上述の女子生徒から、倉持が選抜を逃したことを残念がるコメントが寄せられていた。
1年後には、ソロデビューを果たした。
2013年5月29日。ソロデビュー曲『いつもそばに』リリース。すぐに、私のカラオケのレパートリーとなった。
イントロから、どこか懐かしかった。ZARDを思わせるような曲調だった。
歌詞は、倉持自身がすべて作ったという。倉持が、自分の友人を想いながら。
さわやかな倉持らしい、さわやかな曲に仕上がっていた。初めて聞いた時に、目からうろこが落ちた。
ちなみに、「泣いて水がなくなったら きっと立ち上がれる」。読者の皆さんは、お気づきだろうか。これは言葉遊びである。
他にも、特に社会の荒波にもまれ始めてからつらいことがあった時には、いつも倉持のSNSをチェックし、彼女に癒されようとしていた私がいることに気づくなど、思い出は尽きない。
だからこそ、いつまでもグループにいてほしかった。が、他のファンの方々と同様に、今日は名残を惜しむだけ惜しんで、明日からはスポーツキャスターとしての輝かしい未来を応援したい。
その応援グッズとして、最後の思い出に、AKBショップで彼女のグッズを買いあさった。このグッズの中では、彼女は永遠にアイドルなのだ。
公演で披露したのは、上記のソロ曲『いつもそばに』。
「一緒にいたあの時間は 戻せない」「一緒にいたあの場所には 戻れない」。今になって歌詞を吟味すると、涙を止められない。
こうした思い出のひとつひとつが、私の人生の一部となった。私を支えてくれた。
コンプレックスの塊である私でも、離れていても倉持と接していれば、何もかもを忘れられた。
しかし、直接会いに行けなかったことは、しばらく後悔しなければならない。
明後日から、私は学校行事で海外へ飛び立つ。「日本には、倉持明日香という素晴らしいアイドルがいる」ということを伝えたいが、果たして・・・。おっと、教員はホームステイをしないから、現地の人たちとはあまり触れられないのだった・・・。
倉持明日香ちゃん、ご卒業おめでとうございます。誰からも愛されるあなたを、陰ながら応援していました(「陰ながら」でごめんなさい・・・)。
これからも推し続けることを、私は決めました。
今後の活動にも、期待していますよ!
・・・・・・時間があれば、『ひるおび』の観覧にでも行くとしよう。
〈言葉遊びの種明かし〉
「泣」という文字から「水(さんずい)」がなくなれば、「立」という文字になる。
でも、本当にそうかもしれない。涙も枯渇するほど泣けば、人間は立ち上がれそうだ。