【質問】
早期審査請求のメリットとデメリットを教えてください。
(これはアプリの特許出願を依頼してきたベンチャー企業の経営者からの質問です)
【回答】
まず、早期審査請求制度について説明します。
早期審査制度は、一定の要件の下、出願人からの申請を受けて
審査を通常に比べて早く行う制度のことです。
この制度は、特許だけではなく、意匠と商標にもあります。
特許の場合は審査請求してから審査結果が出るまで
平均9.3ヶ月(2018年実績)かかるところを
早期審査の申請から平均3か月以下となっています(2017年実績)。
1/3に短縮できるということですね!
【早期審査請求のメリット】
以下のことが考えられます。
①早期権利化が図れる。
費用は事務所の手数料(一般に10万円以下)のみで済みます。
②早期権利化に基づくライセンス交渉を早く開始できる。
出願後、権利化前の段階でも特許を受ける権利に基づくライセンス交渉は
可能ですが、特許後の方が確実ですね。
③公開すると真似されるおそれがあるアイデアの場合に
模倣を抑制しやすくなる。
模倣を抑制するには、出願だけでは弱いので権利化が必要ですね。
④出願し直しが可能。
このメリットが意外と大きいと思ます。
拒絶理由が記載不備や進歩性無しの場合、
拒絶理由を解消するためには新規事項を追加する必要が生じた場合、
出願し直しして再度審査請求して権利化を図れます。
最初の出願から1年以内に優先権を主張して出願し直すことができます。
最初の出願が公開されていませんので、自分の出願によって後の出願が
拒絶されることはありません。
【早期審査請求のデメリット】
以下のことが考えられます。
①早期権利化した後は国内優先権を主張した出願ができなくなる。
出願が設定登録された後に改良のアイデアが生まれても
先の出願が登録されているため、国内優先権制度を利用できなくなります。
改良のアイデアが出そうな場合は、注意が必要になります。
②模倣品に対応した補正ができなくなる。
権利化後は補正の機会が無くなりますので、
権利化後に模倣品が現れた場合、模倣品が権利範囲に含まれるように
補正して権利化することができなくなります。
これを防ぐには、特許査定を受け取ったら分割出願をして
泳がしておくのも手です。
結局相談者は早期審査請求をすることになりました。
早期に権利化してライセンス交渉がうまく進むといいですね!
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