商標は二段書きで出願した場合、何か問題があるでしょうか? | 知財を活用した「知財ポジショニング戦略」 徹底解説!

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仕組みやモノのアイデア権利化コンサルタント・弁理士 遠藤 和光

【質問】

商標は二段書きで出願した場合、何か問題があるでしょうか?

(初めて商標を出願する中小企業の経営者からの質問です。)

 

【回答】

二段書きとは、異なる文字種で上下二段に併記したものをいいます。

 

例えば、上段がカタカナ、下段が欧文字(ローマ字)で併記したものなどです。

  マズウェイ

  Masway

 

二段書きで使用されることを前提に特許庁では審査されます。

それぞれの文字種の商標を別々に出願する場合と比べて

1つの出願で済むので、費用が節約できるというメリットがあります。

 

 

 

 

しかし、拒絶されるリスクが高まるというデメリットがあります。

 

それは商標審査基準(4条1項11号)では、

”「ベニウメ」の振り仮名を付した商標「紅梅」からは、

自然に称呼される「コウバイ」の称呼も生ずるものとする。”

と規定されていますので、

上段に「ベニウメ」、下段に「紅梅」とした商標を出願した場合、

「コウバイ」の登録商標があった場合、称呼が同一と判断され、

出願が拒絶される可能性が高くなるからです。

 

 

 

 

以下の裁判例があります。

 

本願商標              引用商標

本願商標の指定商品は第1類:薬剤

引用商標の指定商品は第1類:化学薬品等

 

上段の「OLTASE」と「ULTASE」とは称呼は異なりますが、

下段の「オルターゼ」と引用商標から生じる「ウルターゼ」の称呼とが類似し、

指定商品は抵触するので、本願商標は商標法4条1項11号に該当し、

拒絶された裁判例があります。

(昭和61年3月6日 東京高昭和60年(行ケ)第180号)

 

 

 

 

また、二段書きの一方の文字種の商標のみを使用していた場合、

不使用取消審判(商標法第50条)により商標登録が取り消されるリスクがあります。

 

3年間継続して登録商標を使用していない場合や使用していたとしてもその商標(使用商標)が

登録商標と社会通念上同一と認められない場合は、第三者から取消審判が請求されると、

登録が取り消されます。

 

社会通念上同一の例として、使用商標と登録商標との関係が

平仮名、片仮名及びローマ字の関係であって、

同一の称呼及び観念が生ずる場合が挙げられています。

 

 

 

 

裁判例を以下に紹介します。

知財高裁平成27年(行ケ)第10086号審決取消請求事件


登録商標は以下の二段書きです。

 

 

使用していた商標(使用商標)は、「ハイガード」のみ。

 

特許庁では、

使用商標の「ハイガード」と登録商標の二段書きの「ハイガード/HIGUARD」のうち

「HIGUARD」は「HIGH GUARD」とは異なるから、両者が観念が異なり、

「社会通念上同一」とはいえず、登録は取り消されるべきと判断しました。

 

一方裁判所では、

「HIGUARD」における「HI」は「HIGH」の略語として使用されており、

両商標は社会通念上同一と判断され、

登録の取消が免れました。

 

この場合は結果的に取消が免れましたが、

特許庁では一旦は取り消されるべきと判断されていましたので、

やはり二段書きは、一方のみを使用していた場合、

取り消されるリスクがあるといえます。

 

 

 

 

二段書きの商標はメリットよりもデメリットの方が多いように思いますので、

上下それぞれ別々に出願するか、多く使用する方を出願した方が

よいのではないかと思います。

 

 

 

 

 

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