卵巣嚢腫がある場合の採卵で気をつけること | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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チョコレート嚢腫がある場合採卵は可能でしょうか?また何か気をつける方が良いことはあるでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

卵巣嚢腫を刺す事で嚢腫が破けたり、内容物が腹腔内に漏れ出たり、嚢腫に感染したり、嚢腫から出血したりする事になるため、基本的には嚢腫は避けて採卵する事が好ましく考えられています。

特に卵巣チョコレート嚢腫の場合感染をおこしやすくなります。もし感染した場合には卵巣摘出も起こり得ます。

 

そのため卵巣嚢腫があると嚢腫の裏側の卵胞は刺す事が難しくなります。

卵胞と嚢腫が少し距離があれば嚢腫をギリギリで避けながら採卵する事が可能なので、不可能となるケースは完全に卵胞が嚢腫の裏側にある場合のみになります。

その場合でもお腹を押しながら少し卵巣の位置をずらして刺す事も可能のため、色々と工夫して刺す事はできます。

また感染にリスクを下げるためには採卵30分前から抗生剤の点滴を行う、膣洗浄を通常と異なりしっかりと消毒液を用いて行う、内服抗生剤の投与を長めに行うなどの対策が効果的です。

 

嚢腫が大きく、毎回どうしても刺せないという場合は、腹腔鏡手術をして、嚢腫のみを摘出して、その後に改めて採卵をする事が良いかと思います。

 

よろしければ過去の記事も参考にしてください。

採卵困難例