チョコレート嚢腫がある場合オペをしてから移植をすべきか?メタ解析から | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

2015年に出された内膜症性の嚢腫(チョコレート嚢腫)がある場合体外受精にどの様な影響を与えるか調べています。メタ解析の論文であり参考になる内容といえます。

以下の図がわかりやすいのですが、左がオペをする事のリスク。右がオペをしないで移植することのリスクです。それぞれを端的に説明すると、オペをする事のリスクは痛みや傷、卵巣機能の低下、早発卵巣機能不全、オペの不手際での再発、外科医の技術の問題、移植の遅れ。

一方オペをしない事のリスクは病気の進行、卵胞液の汚染、妊娠中の合併症、内膜症嚢胞の感染、チョコがあり採卵ができず周期のキャンセルが増える、悪性化の恐れです。

この後がメタ解析の結果です。長い内容ですが要点を説明します。

卵巣チョコレート嚢腫がある方と、ない方を比較した場合出産率のオッズ比は 0.98; 95% CI [0.71, 1.36]で有意差なしでした。

 

オペをして移植をするか、オペをしないで移植をするかですが、出産率は以下のように有意差なしです。オッズ比 0.90; 95% CI [0.63, 1.28], 5 studies, 655 women, 


 

この結果から言えること

代表的なメタ解析でチョコレート嚢腫をとると出産率は変化なしとしています。しかし論文を読むと、術式も多岐に渡り術者も異なりIVFの施設も異なる中メタ解析が正しく行えているかはかなりの疑問です。術式としてレーザー焼灼もあれば熱凝固もあります。嚢腫摘出も卵巣実質も含めて剥ぎ取るものもあります。

行うべき術式はただ一つでありそれはハイレベルな嚢腫摘出です。術後の卵巣機能に極力影響を与えないということが大前提と言えます。

そのため、この論文の他にも出ている過去の他の論文で「チョコレート嚢腫を摘出するのは体外受精の成績を低下させる」という結果が多いことに対して懐疑的になるべきと言えます。

過去の論文は参考にならず我々が正しい根拠を作らなければいけないと考え今度の生殖医学会に発表したり現在論文を作成しています。

 

Human Reproduction Update, Vol.21, No.6 pp. 809–825, 2015

The impact of endometrioma on IVF/ICSI outcomes: a systematic review and meta-analysis