凍結胚移植後に生まれた思春期の男の子は新鮮胚移植や自然妊娠後に生まれた子に比べて過体重になる | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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凍結胚移植で生まれるとその後の体重が増えるという報告が出ています。ただよくわからないことも多いのが事実です。今月号の論文に詳しいデータが出ていましたので以下紹介します。

 

凍結胚移植(FET)、新鮮胚移植(ET)、自然妊娠(NC)後に生まれた子供の成長に違いがあるかどうかを調査したコホート研究です。

結果として、FET後に生まれた思春期の男の子は、新鮮ET後に生まれた男の子と比較して、過体重を示す率が高く、過体重のオッズ比も増加していることがわかりました。

これは、FET後に生まれた子どもたちは、新鮮ETやNC後に生まれた子どもたちと比較して、出生時の平均体重が高く、妊娠週数に対して大きいリスクが高いことが知られていてこれらとの関係が示唆されています。

しかし、FET後の子供の成長に関するここまでの研究は結果がそれぞれ矛盾しており、また青年期までの長期データが欠けていました。

本研究は、フィンランドの国立人口ベースを基に、1995年から2006年の間にFET(n = 1825)、新鮮ET(n = 2933)、NC(n = 31,136)で生まれた子を対象に行われました。

過体重の割合(BMI 25以上)を比較し、過体重のオッズ比(OR)と補正みオッズ比(aOR)を計算しました。

補正は、出生年、早産、母親の年齢、出産回数、社会経済状況に基づいて行われました。

7歳から18歳までの毎年、各グループ間で平均身長、体重、BMIを比較しました。

 

FETでは、新鮮ET(22%、P < 0.001)およびNC(26%、P = 0.014)と比較して、過体重の平均割合が高くなりました(28%)。

 すべての年齢を合わせた場合、FET 男児の過体重の補正オッズ比は、ET 男児と比較して増加しました (1.14、95% CI 1.02 ~ 1.27)。 

女児の場合、過体重の平均割合は、FET、新鮮ET、NCの後に生まれた子でそれぞれ18%、19%、22%であった(FET vs 新鮮ETではP = 0.169、FET vs NCではP < 0.001)。 

すべての年齢を合わせた場合、FET 女児は NC 女児と比較して過体重の補正オッズ比が減少しました (0.89、95% CI 0.80 ~ 0.99)。 

さまざまな年齢で、FET 男児の 6.9% ~ 30.6%、FET 女児の 4.7% ~ 29.4% で成長測定が可能でした。

 

この論文の言いたいこと

この研究は、凍結胚移植(FET)後に生まれた思春期の男の子が、新鮮胚移植(ET)や自然妊娠(NC)後に生まれた男の子に比べて過体重になる確率が高いことを示しています。

しかし、FET後に生まれた女の子は自然妊娠後に生まれた女の子に比べて過体重のリスクが低いという結果もありました。

この性別による違いや、FETが子どもたちの成長に与える影響については、今後さらなる研究が必要で、特になぜFETが男の子の過体重のリスクを高めるのか、そのメカニズムを解明することが重要と言えます。

 

Growth of singletons born after frozen embryo transfer until early adulthood: a Finnish register study

Human Reproduction, 2024, 39(3), 604–611