妊娠に至るまでの時間(TTP)が長いほど、母親と父親の両方の死亡率が高くなる | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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妊娠までの期間が長いと夫婦どちらとも死亡率が高くなるという今月号の論文です。

あまり考えたくない内容ですが、要は不妊症それ自体が寿命に関係していることを示唆しています。

以下論文の概要を説明します。

 

今回妊娠までの時間(TTP)を用いて生殖能力が親の死亡率と関連しているかどうかが調査されました。

この研究は、1973年から1987年にかけて予防的な産前ケアを受けた18,796組の妊娠中のカップルに関する前向きコホート研究です。

主な結果として、TTP >60ヶ月の母親と父親は、それぞれTTP <12ヶ月の親よりも3.5年(95% CI: 2.6–4.3)と2.7年(95% CI: 1.8–3.7)短く生存しました。

TTP が12ヶ月以上の父親(HR: 1.21、95% CI: 1.09–1.34)と母親(HR: 1.29、95% CI: 1.12–1.49)の死亡率は、TTP <12ヶ月の親と比較して高くなりました。

研究期間中の全原因死亡率のリスクは、TTPが長いほど用量反応的に増加し、TTP >60ヶ月の父親と母親で最も高くなり補正ハザード比がそれぞれ1.98(95% CI: 1.62–2.41)、2.03(95% CI: 1.56–2.63)でした。

この研究の言いたいこと

この研究では、妊娠に至るまでの時間(TTP)が長いほど、母親と父親の両方の死亡率が高くなることが示されました。この関連性は、TTPの長さに応じて死亡率が増加するという、用量反応的な傾向を持っています。これは、生殖能力の低下が健康問題の指標であり得ることを示唆しています。また、この研究結果は、人の生殖能力がその人の健康状態や生存能力を反映している可能性があることを示唆しています。

Time to pregnancy and life expectancy: a cohort study of 18 796 pregnant couples

Human Reproduction, 2024, 39(3), 595–603