採卵の痛みが不安です | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

採卵の痛みが不安です。採卵した方のSNSを見ると静脈麻酔で気がついたら終わっていて楽だったと書いてあると自分も静脈麻酔をしたくなります。先日のカウンセリングで医師からは局所麻酔でも全然大丈夫と言われました。どうしたら良いでしょうか。

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

当院では12年前の開院当初から現在もほとんど局所麻酔で行なっております。

これは保険、自費にかかわらず多くの方に局所麻酔でも可能と考えているからです。

 

そもそもどうして静脈麻酔をする必要があるかですが、その理由の一つに痛い採卵をする事に問題があるのではと思います。

医師が採卵を痛くないように出来る限り努力すれば、眠る麻酔をかける必要は低くなくなります。看護師がしっかりとケアをすれば局所麻酔でも可能になります。

 

静脈麻酔はプロポフォールという麻酔を使います。この麻酔は基本的に呼吸が少しの間止まります。そのため気をつけて管理を行う必要があります。また合併症がある方には使えません。滞在時間も倍以上となります。

眠る麻酔には副作用が起こる可能性がある為、極力静脈麻酔をかけずに採卵を行う方が双方にメリットがあります。

 

以下局所麻酔、静脈麻酔それぞれのメリットを説明します

 

局所麻酔のメリット

①短時間で帰れる

②麻酔のトラブル(アレルギー、呼吸停止など)を無くせる

③午後の仕事に影響しない

④費用が安い

⑤採卵中動かずにいられるので医師は安心して多数の卵胞を採卵できる

⑥採卵中の医師とのコミニュケーションがとれるので患者さんは安心できる

⑦体位を変換できるので深い場所の採卵なども刺さる

⑧痛みがある場合でも動かないでいられるので血管に近い場所や小さい卵胞も刺す事ができる

 

静脈麻酔をかけても採卵中は多くの方が動きます。麻酔をかけて動くことが不思議だと思うかもしれませんが、例えば寝ている方の腕をつねると痛くて動くことと同じです。医師は動かれると思うと慎重になり採卵をしっかりと行うことができなくなることがあります。

 

静脈麻酔のメリット

①意識がなくなる。

 

採卵の一番の目的はより多くの卵子を安全に取ること。ここであることは誰もが同意すると思います。

意識がなく採卵は終わったものの麻酔中動いたので取れる数が少なかった。これは希望しないと思います。もちろん麻酔の副作用で午後の予定が全て潰れることも嫌だと思います。

 

当院で局所麻酔と静脈麻酔の両方をした事がある方に、「次はどちらを選びますか?」と質問すると、多くの方が「次は局所麻酔で大丈夫です」と答えます。

その理由は、「我慢できるし別に眠る必要はないです」、「局所麻酔の方が早く帰れるし後も楽でした」とのことです。

 

採卵を出来る限り痛くなくする。看護師がしっかりとケアする。ここができるのであれば全員が体に負担をかける静脈麻酔を選ぶ必要は無いと思います。

 

もちろん、不安が強い方、トラウマがある方、体質的にどうしても起きていることが辛いという方には静脈麻酔は非常に好ましいと思いますし、当院でも希望があれば当然行っています。怖くて辛いのに局所麻酔で我慢しなさいというのは明らかに間違いだと思います。

 

この問題の本質の一つは、少しでも痛みを減らす採卵を医師が日々努力することであり、当院では更に検討を重ねており局所麻酔の仕方や採卵針の改良を加えています。