ホルモン補充周期に排卵すると逆に成績が良くなる | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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ホルモン補充周期で移植をすると移植日を決められる利点があります。ただ卵胞が育ってしまい中止にしてしまうケースも出てきます。

この論文ではそのような予期せぬ卵胞発育があった場合に移植を続行していくとその後の成績はどうなるかを調べています。

この様な問題は実際の臨床で多々あるので調べてもらえるのはとても助かる嬉しい論文です。

まずどの様な方が排卵しやすくなるかですが、高齢の方、卵巣機能が低下している方、エストロゲン値が高い方が排卵しやすくなります。

以下の表が排卵した場合と排卵しない場合での成績ですが驚くことにホルモン補充周期で排卵した方が臨床成績が向上しています。

出産率39.2% vs. 24.9% 有意差あり

流産率12.7% vs. 25.5% 有意差あり

 

この様なことは以前からあるのかと予測はされてきましたが改めて数値で出ると驚きと言えます。どうして成績が上がるかというとそれは単に排卵によるホルモンも出されるので外からも内部からもホルモンが補充される、つまりハイブリッド型のホルモン補充だからと予測されます。

ホルモン補充周期で排卵するとむしろチャンスと捉えそのままキャンセルせずに移植を続行すべき、これは大切な知見といえます。

Effect of unplanned spontaneous follicular growth and ovulation on pregnancy outcomes in planned artificial frozen embryo transfer cycles: a propensity score matching study

Human Reproduction, Vol.36, No.6, pp. 1542–1551, 2021