必読:顕微授精は正常胚が減ることになる現実を直視せよ ー来月号の最新論文からー | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

医師も患者も顕微授精の方が成績が良いと考えている方が多くいます。しかし実際にはそれは間違いという来月号発表される論文です。顕微授精と従来の体外受精とで正常胚がどのくらい違うかを調べています。非常に大切な内容なので掲載前ですが説明します。

 

下の表ですがCIとは体外受精のことです。ICSIと比較していますが受精率は顕微の方が低下しています。下がるもののここは有意差がないです。

問題は正常胚の率です。リスク比が0.89で、なんと顕微の方が11%も正常胚ができる確率が低くなります。これはかなり衝撃的な結果と論文でも述べられています。

顕微授精をして1500ドル余計に費用を払うも成績はかなり低下する、これが事実ですと述べられています。この論文以外でも同様の論文がいくつも出ています。顕微は成績が明らかに低下する。時間がかかるだけだと。

顕微授精しかしないという施設もありますがこれは論外です。顕微はあくまで男性因子と受精障害のみに行うこと。この論文の考察を読むと男性因子がない場合において顕微がいかに良くないか永遠と書かれています。

私が18年前ハワイで研究したメインのテーマも「顕微授精がいかに有害か」でした。

毎日柳町先生と顕微は良くない、やりすぎだ、ヒトはたまたま顕微で生まれるが他の種はそうでもないと議論していました。

いずれにしてもこの様な根拠をもとに、多くの施設で顕微授精をルーチンで行うことを見直してほしいと強く思います。結果が出ない時こそ技術を使わない、自然の素晴らしさを使うこと。

Compared with conventional insemination, intracytoplasmic sperm injection provides no benefit in cases of nonmale factor infertility as evidenced by comparable euploidy rate

Received October 27, 2022; revised April 11, 2023; accepted April 13, 2023.(来月掲載)