驚きの結果:レスキューICSIをトライすべき | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

 

体外受精をして受精しない卵子に対して翌日顕微授精を行うと効果があるかどうかを調べている論文がりましたので紹介します。来月発表されるとても新しい論文です。

体外受精をして翌日(18時間後に判定)受精していない卵子に顕微授精をしています。(18–24 時間後)。

1日遅く顕微授精した場合49.5%が正常に受精して54.4%で新鮮胚移植をしています。

 

初期胚で移植した場合12.3%で出産し、胚盤胞で移植した場合26.3%で出産しています。

これらの胚盤胞を一度凍結してあたらめて融解胚移植を行ったら46.7%で産まれています。

長い間この様な1 day old ICSIは効果がないとされていました。私自身20年前に大学にいた際にこの様なことを自分で多数してきており効果がありませんでした。

しかしこの論文で示されているように体外受精をして受精しない場合で翌日に顕微授精をして一度胚盤胞で凍結することでかなりの高い出産率を出せるという結果は驚愕と言えます。

 

この論文の意味するところは多数あります。

まずIVFで受精しないのが怖いから顕微授精をすることを減らすことができます。普通に体外受精をして受精しなければ翌日顕微授精をすることで良い成績を出すことができます。これにより不要な顕微授精を減らすことができます。ここはとても大きいところです。論文でもこの点をとても強調しています。

男性因子がない場合には自信を持ってIVFを行うべきとしています。

 

もう一つの観点は顕微授精を18時間以上開けて行うことです。通常レスキューICSIは6時間程度明けますがそれだと受精しているのに顕微を行うなどの問題が出てきますがタイムラプスを用いながら18時間開けるとそのリスクは無くなります。

 

以前から比較すると格段に成績が向上している理由として凍結技術が進歩したこと、タイムラプスで受精が本当に起きていないかを正確に判断できていることが挙げられると思います。

いずれにしても1 day old ICSIがダメと決めつけないことが正しいことだと言えるのだと思います。

 

この論文は恐らく追試が行われると思いますので注視してみて行きたいと思います。

Day after rescue ICSI: eliminating total fertilization failure after conventional IVF with high live birth rates following cryopreserved blastocyst transfer

 Received: December 22, 2022. Revised: April 6, 2023. Editorial decision: May 2, 2023.