男性因子がない場合、顕微授精は成績の向上をさせず余計な出費でしかない:最新の論文から | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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採卵数が少ない場合や高齢の方において、ついつい顕微授精を選ぶケースが多いかと思います。

ただ男性因子がない場合(精液所見が正常な場合)、顕微授精は成績を上げなくて、かつコストがかなり高くなると言うことを示している論文がありましたので紹介します。この論文は来月以降に発表される最新の結果です。

 

出産率は男性因子がない場合(PGT-A無しの群)で顕微授精では 60.9% 、体外受精では64.3%と有意差なし(補正リスク比 0.99; 95% CI, 0.99–1.00)

PGT-A ありの群において顕微授精と体外受精での出産率は64.7% vs. 69.0%となり有意差なし。 (補正リスク比, 0.97; 95% CI, 0.93–1.01) 

顕微授精を選択した場合、周期毎に余計に $1,500は払わないといけない計算になります。 

 

 

顕微授精はなるべく行わない方が良いと言うことは以前から何回も記事にしていますが、改めて証明されたと言うことです。

生殖医療に携わる医師や培養士はどうしても技術を使いたがるのですが、それは根拠がなく、単なる受精しないと心配だからという感情論でしかなく、専門家としてはこの様な正しいエビデンスを基に顕微授精は非男性因子には用いないという診療を行うべきだと言えます。

 

Fertility and Sterility® Vol. -, No. -, - 2022 (発表前のためこの様な形式です)

Intracytoplasmic sperm injection vs. conventional in vitro fertilization in patients with non-male factor infertility