受精障害に対して | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

顕微授精をすると8割位の卵子は受精します。ただ残りの卵子は受精しません。

この様な場合が続くと受精障害が疑われます。

近年この受精障害が増えてきています。

 

顕微授精をしても受精しない時に人為的な卵子の活性化という方法をとります。

卵子の活性化のために主に以下の方法をとります。

カルシウムイオノフォア、電気刺激、ストロンチウム、イオノマイシン。

一番多く取られている方法はカルシウムイオノフォアです。

 

これらは卵細胞内のカルシウムの濃度を上げてそれにより受精の可能性を高めます。

ただカルシウム濃度の上げ方に違いがあり、ストロンチウムは卵子内の小胞体からカルシウムをパルス状に出させます。パルス状とは周期的に繰り返してという意味です。

 

一方イオノフォア、イオノマイシン、電気刺激は卵子の細胞膜に小さい穴を開け外から(培養液)からカルシウムを取り入れ一回のみ卵子内のカルシウム濃度を上げます。つまりこの場合一回しか上がりません。

 

通常の受精での生理的なカルシウムの上がり方はカルシウムオシレーションといってパルス状(周期的)に上がります。つまりストロンチウムの方がより生理的(自然の受精)に近くなります。大学院の時、夜中にこの辺りをかなり研究していました。

 

なお余談ですがマウスの場合にはストロンチウムを用います。ハワイに留学していた時マウスの体細胞クローンを大量に作成していましたが活性化にはストロンチウムを用います。ストロンチムは実によく効く活性化方法でした。現在ストロンチウムを臨床に用いていこうという試みが行われています。