転院して卵管内の人工授精をしたいと思いますが妊娠するでしょうか? | 両角 和人(生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療専門医の立場から不妊治療、体外受精、腹腔鏡手術について説明します。また最新の生殖医療の話題や情報を、文献を元に提供します。銀座のレストランやハワイ情報も書いてます。

38歳です。結婚して3年経ちます。前医でタイミングを8ヶ月して妊娠しなかったので人工授精を3回しましたが妊娠しませんでした。旦那の精子は問題ありません。卵管内人工授精が妊娠しやすいと聞きました。転院して卵管内の人工授精をしたいと思いますが妊娠するでしょうか?

 

この様なご質問がありましたのでお答えします。

 

35歳で結婚して2年夫婦生活をしても妊娠せず、その後不妊治療を1年間近くしても妊娠しない場合、原因が無いことはなく、何らかの原因があると考えるべきです。

男性に問題がないとなると、ほとんどの原因は卵管周囲の癒着による卵子のピックアップ障害です。

人工授精は子宮の中に精子を入れているに過ぎず、タイミングをとることとほとんど変わらないことです。

これらの原因が解決しないまま転院して卵管内の人工授精をしたとしても妊娠することはかなり難しいということになります。

つまりこのまま人工授精を続けることは正直時間の無駄になります。

 

今後の治療方針ですが、選択肢は二つあります。

 

一つは体外受精です。体外受精は卵管周囲の癒着があっても卵管を利用しないでも妊娠することが可能なので結果を出すことが可能になります。

 

もう一つは腹腔鏡手術です。これは卵管周囲の癒着を剥離して卵子が卵管内へ入れるようにします。その結果として自然妊娠や人工授精での妊娠が可能になります。

 

この際気をつける点として、年齢が38歳という点です。腹腔鏡手術をしても卵子が若返るわけではないため例え卵子が卵管に入ったとしても受精しないことや胚の発生が止まることもあります。

そのためオペ後にあまり長い時間人工授精をすることはお勧めできません。ある程度の回数を決めて難しい場合にはステップアップをすべきと言えます。

 

どちらを選択するかはコストや二人の価値観、そして精神的なことも関係するため難しいですが、しっかりと二人で考え決めることが良いのかと思います。

 

腹腔鏡手術に関しては過去の一連の記事を参考にしてください。

腹腔鏡手術