7月25日の日経新聞の一面から。

 

7月23日、アメリカのポンペオ国務長官が中国政策について演説を行いました。

強権的な手法で世界で影響力を強める中国共産党を痛烈に非難し、自由主義国家に連合を求めたこの演説は、世界に『新冷戦時代』を強く印象付けることになりました。後年必ず世界史の教科書に載ることになるでしょう。

 

 

ポンペオ氏は習近平を「全体主義のイデオロギーの心棒者だ」とし、「共産主義に基づく覇権への野望」があると指摘。

歴代の米政権が取り組んできた、中国の経済的発展を支援する事で民主化を促す「関与政策」が失敗であったと改めて断じました。

 

 

そして、「中国を他国と同じような普通の国として扱う事は出来ない。」「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、中国が我々を変える。」

とした上で、国連や北大西洋条約機構(NATO)、主要7か国などの国際的な枠組みを列挙し「経済、外交、軍事力を適切に組み合わせれば、脅威に十分対処できる。」と対中国の『新同盟』を提唱しました。

 

 

これに先立つこと21日、アメリカ政府はテキサス州ヒューストンにある中国総領事館を「スパイ活動と知的財産窃盗の拠点」として閉鎖を要求し、実際に25日に閉鎖。

中国外務省はこの対抗措置として四川省成都市のアメリカ総領事館閉鎖を通知し、これも27日に閉鎖されるなど、米中対立は引き返しがきかぬレベルに達しています。

 

 

 

これに対する諸国の動きとしては、オーストラリアが26日までに国連のグレテス事務総長宛てに書簡を送り、海洋進出を進める中国が主張する南シナ海の領有権について「国際法に違反している」と否定する見解を示し、アメリカと歩調を合わせる動きを示しています。

 

 

かつてオーストラリアは経済も為替変動も中国の景気次第といわれるほど、強い影響下にありましたが、現在のモリソン政権で対中姿勢を180度転換。

2018年にオーストラリアの知識人であるクライブ・ハミルトンが発表した『サイレント・インベーション ~オーストラリアにおける中国の影響~』(邦題:『静かなる侵略』)では、中国がいかにオーストラリアの政界・市民社会を侵食していったかについて書かれ世界の注目を浴びました。

 

 

ポンペオ国務長官の演説前を見ると、

「香港国家安全維持法」によって「中英共同宣言(1984年)」を反故にされたイギリスが、対中強硬姿勢を打ち出しています。

21日の夕刊フジでは、14日付けの英紙タイムズが空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群が来年初め、初の本格任務として極東に派遣される計画が進んでいると、英軍高官らの話をもとに報じている、としています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/137a8c9594a8df12ed6ad2a3e2b2db3546543712

 

 

イギリスのジョンソン首相は14日、次世代通信規格「5G」網整備から中国の「ファーウェイ」を2027年までに完全排除すると発表。

ポンペイ国務長官は演説前の21日に訪英してジョンソン首相らと会談し、「中国からの挑戦に対し原則ある対応を取るイギリス政府を祝福したい」「イギリスは自らの安全保障のために立ち上がる拡大する国家のリストに加わった」と称賛しました。

https://news.livedoor.com/article/detail/18635653/

(ただし上記記事も夕刊フジの記事も、イギリスが米中を天秤にかけていることについても言及している)

 

 

同様に、フランスもファーウェイを5G製品から事実上排除する決定を行ったことを22日のロイター通信が報じています。

https://business.nikkei.com/atcl/global/19/london/00788/

 

 

これに、中国を念頭においた「日米豪印戦略対話」のメンバーで6月には中国との国境紛争によって死者を出したインドを加えた面々が当面のところアメリカが「当てにしている」新同盟のメンバーであると考えられます。

 

 

ですが反面で、日経の記事ではポンペオ氏の

「『あるNATO同盟国は、中国政府が市場へのアクセスを制限することを恐れている』と不満をあらわにした」との言葉も書いており、中国との経済関係の深いドイツやイタリアを念頭に置いている可能性がある、としています。

 

 

ドイツ・イタリアの両国は「主要7か国(G7)」のメンバーでもあり、ここが中国寄りであるとアメリカの世界戦略はかなり苦しいものになると言わざるをえません。

 

 

そうでなくとも、トランプ大統領は就任以後「自国第一主義」を採り、多国間協力の枠組みからは距離を取ってきました。

NATO加盟国の軍事費をGDP比2%とし、それに達していないからと今年6月には駐独米軍の3割削減を決定するなど欧州との関係に溝を作っており、その直後に新同盟を持ちかけられても欧州諸国としては白けるばかりでしょう。

 

 

ASEAN(東南アジア諸国連合)においても同様です。

トランプ大統領はASEANの会議に3年連続で欠席し、2019年は閣僚さえ送りませんでした。

そこで諸国の代表からは不満の声が上がり、反面で中国は存在感を増し、ASEANの交通網整備を「一帯一路」と一体化することに合意させることに成功したのでした。

https://ameblo.jp/kazunari-itoh/entry-12542491169.html

 

 

こうしてみるとアメリカの外交下手は目を覆いたくなるばかりで、ここで「自由諸国による新同盟を」と言っても、「何を今さら」です。

 

 

では本題である「日本はどうするべきなのか?」の話ですが、

これについては「そもそも日本に選択肢などない」ということになります。

アメリカは日本の保護国で、日本国内には米軍の基地があり、それによって自国を守ってもらっている日本が、どうしてアメリカが本気で中国共産党と事を構えようとしているのに、その意向に背くことが出来るでしょうか。

 

 

橋下徹氏などは

「地政学的に欧米と違うのは、日本は中国の隣なんだから、繋がる所は繋がりながら断ち切る所は断ち切り、西側諸国の価値観は守る。」

と発言していましたが、いかにも日本人的な物の見方で、世界の現実が分かっていないように思います。

中国共産党から見ればいいカモです。

 

 

こういう美味しい奴がいるから、中国共産党は日本に対して工作し放題なのです。

そしてそういう人間をアメリカはどう見るでしょうか。スパイと同列に見ることでしょう。だって敵と繋がっているんですから。

 

 

率直に言って、

事この期に及んでアメリカよりも中国共産党との関係を心配する人というのは、

中共を怖れること神仏を怖れる如しでありながら、

アメリカのことは舐めてかかっているのではないのでしょうか?

 

 

ましては中国共産党というのは、

日本に対しては「関係改善」を口にし、国賓待遇での訪日を要求しておきながら、実際には日本の領土である尖閣諸島周辺で武装した

艦船を連日航行させ、日本の漁船を追い回すような所なのです。

 

 

現実を見れば、紛れもなく中国共産党は日本にとって「安全保障上最大の脅威」です。

従って今回のポンペオ氏の演説は日本にとって歓迎すべきことで、それどころか「やっと。やっとアメリカが本気になってくれたか!」というのが偽らざる本音でしょう。

 

 

確かに米中衝突は日本にとって非常に危険なことです。

戦闘となれば否応なしに巻き込まれることでしょう。日本人の血が流れることになるかもしれません。

 

 

一つ注目すべきことは、日経の大見出しにもありますが、アメリカの標的が「中国」ではなく、「中国共産党」となっていることです。

それは演説の以下の部分に如実に表れています。

 

 

―「中国共産党はいつも嘘をついている。彼らが言った最大の嘘は、共産党が中国14億人の人民を代表しているということだ。

しかし、14億の中国国民は共産党に監視され、抑制されて、発言が出来なくなっている。

実際にどんな外敵よりも中国共産党が最も恐れているのは中国国民の率直な意見だ。」

 

「我々は中国国民に参加させ、中国国民に力を与えるべきだ」

 

 

つまりアメリカは「国家」対「国家」の軍事戦争を仕掛けようとしているのではなく(それをするとアメリカを含む全人類に破滅的な被害が及ぶ)、米ソ冷戦時と同じように軍事的な圧力を加えた上での経済戦の末に、中国「人民」によって「共産党政府」を崩壊させようと考えているのです。

 

 

まさに「戦わずして勝つ」。

奇しくも中国の歴史上の偉大な戦略家「孫子」が「最上の勝ち方」としているものですが、そのためには中国共産党を干え上がらせ屈服させるための圧倒する軍事力、経済力の団結が必要となります。

 

だからこそ、日本が西側諸国の価値観を持ちつつ中国と経済的に繋がりを保とうなどと考えるのは笑止千万な話なのです。

 

 

最後に、27日の文化放送「おはよう寺ちゃん活動中」で月曜担当の上念司氏が

「日本にとってもこの流れはチャンスで、新しい同盟の枠組み同盟の再定義がなされようとしている中に上手く乗っかって、今の国連体制-敵国条項などがそのままになっている-を変えていき、ポスト‐チャイナ後の新たな秩序を作る上で日本がその役割を担っていく。これは憲法上も全く問題がない。」

と語っていましたが、私も同感です。

 

 

日和見ではなく、まさにこの米中冷戦の渦中に日本も当事国となり、そこで戦勝国となること。

それでこそ日本は敗戦コンプレックスに凝り固まった戦後価値観から目を覚ますことができ、「戦後レジーム」からの脱却も果たすことが出来るのです。

 

 

 

 

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