3月5日の新聞は日経新聞を除く主要紙一面トップがこの話題。
「日本政府は4日、米軍普天間飛行場の同県名護市辺野古への移設を巡る代執行訴訟について、福岡高裁那覇支部の和解案を受け入れ、同日、県との和解が成立した。」
という報道です。
「和解成立」という見出しだけ見れば、凄くいい話のように見えますが
実際は裁判所の判断で最終決着を先送りにし、「振出に戻した」ということになります。
政府から見れば、辺野古工事を「中止」したことで事態は後退したことになり
翁長沖縄県知事から見れば、「中止させた」という一応の戦果を得た形にはなります。
ここから再び日本政府と沖縄県との間で、一応話合いにはなりますが
両者の主張に歩み寄りがあるわけではなく、今後の展望としては
結局は、政府は知事の埋め立て承認取消について地方自治法に基づく是正指示を出し、
それを契機に再び裁判となる、と見られています。
「それじゃあ意味ないじゃないか」
と、思う人もいるかと思いますが(私もそう思わないでもない)
現状だと、日本政府は現地の声を一方的に無視し、
強引に政策を押し通そうとしている、と観られかねない
(実際、代執行訴訟というのはそういうものだし、沖縄知事はそう言って逆に「不服申し立て」と「執行停止申し立て」を起こしている)
ので、この膠着状態を脱するため(と、夏の選挙の影響を考え)裁判所の和解案を受け入れたという形です。
あと、政府は再訴訟に勝算があって、司法判断の後ろ盾を得て
知事の反対を封じ込める意識があるようですね。
この辺の政局は、多くの国民と沖縄県民にとっては煩雑で理解しがたいものがあると思います。
ただ、事態は深刻だなと私なんかは考えます。
というのも、この問題の一番の問題点は、
まさにこの沖縄の基地が「日本国の『国防』の最前線であり肝」だからです。
沖縄国際大学の敷地内にヘリが墜ちてくるなどという「世界一危険な基地」普天間基地は移設されなければいけません。
そしてその移設先として、新たな場所を探し開発するよりも、既存の米軍基地がある辺野古のキャンプ・シュワブが決まったことは合理的な理由があっての事でした。
そのように、日米両国が決定したのです。
それは日米の国家戦略にとって意味があることなのであって
残念ながらそれは沖縄の(民意かどうかちょっと図りかねるけど)知事が反対していい問題ではないのです。
日本国の「弱さ」とは、まさにこの「国家戦略」がグラグラで固まれないことなのです。
沖縄のみに負担を強いる、その批判は確かにあります。
県民には非常に申し訳ないとは思いますが、それでも私は基地は沖縄に必要だと思いますし、
それはひいては沖縄の安全を護る事でもあると考えています。
世界地図を持っている人は沖縄にコンパスを当ててグルッと幾つもの大きさの円を描いてみてください。
いかに沖縄が地理的な要所にあるかが分かる筈です。
沖縄は、日本列島を護るためにも、朝鮮半島有事に対応するにも、台湾有事に対応するためにも、中国大陸を牽制するためにも、
つまり東アジアのパワーバランスを維持するためには必要、欠くべからざる戦略的最大の要所なのです。
日本が戦後70年、平和でいられたのは
間違いなくここに米軍の海兵隊が存在し、日本を護る事を公言していたからです。
特に、中国にとって沖縄とは、核武装した原潜を太平洋に進出させるためには「蓋」となっており、
台湾同様、喉から手が出るほど欲しい「場」です。
もし仮に、一連の騒動が本当に共産党勢力の思惑による謀(はかりごと)で
米軍基地が沖縄から出ていくようなことがあれば、それは間違いなく日本の国家存亡の危機に直結するでしょう。
日本人はもっとそのことに思いを巡らせるべきです。
ですから、2009年7月に首相に就任する前の鳩山由紀夫氏が普天間基地移転に関して
「国外に移設する。最低でも県外へ」と口にしたのは、
リベラルを気取って世論の人気取りに走った日本の政治家としてはあるまじき、全くの不見識な発言であったと思います。
それによって、決まっていたことが全てひっくり返ったといってもいい程です。
いや、
とはいえ、
恨み言は置いておくとして、今回
このように日本政府と沖縄が形の上だけでも「和解」したのなら
その上で、日本の国防事情を国民・県民が理解できるよう、強く深く
政府は訴えていくことが大切なのではないかと
私は考えています。
(ただ、政府は説明しているのにマスコミがそれを正しく伝えないのが非常に残念なのです。)