2月27日の産経新聞一面トップから。
因みにこのブログは今まで毎週日曜日の夜に更新してましたが
先週書ききることが出来ずに月曜を迎え、かつ月曜の仕事が(睡眠不足で)死ぬほど辛かったことを受けて、土曜の新聞で更新していくことにしました。
(他の人にとってはどうでもいい話だが。)


平成27年度の国勢調査の速報値で、日本の総人口は1億2711万人。
前回平成22年実施の調査から94万7千人減り、大正9年(1920年)の国勢調査開始以来初めて人口減となった、という報道です。

「初めて人口が自然減になった」
などと聞くと、つくづく現代は日本という国家にとって有史以来の大きな節目なのだなと思います。
因みに「日本の将来推計人口」によれば2110年の推計人口は4286万人(出生中位)、つまり100年かけて日本の人口は今の3分の1まで減ることが予想されています。
外的要因に依らずに国家の人口が3分の1になるというのは、かなりショッキングな話です。

それもあり画面、産経新聞なんかは、デカデカと

「日本消滅」危機
人口減社会―静かなる有事―

という特集記事を書いています。


これについては平成26年10月のブログ
其の14 あんまり不安を煽ってもいいことなんかない。ー人口減 84%が「不安」についてー
でも書いたのですが

私はあまり過剰に新聞やテレビがこの件で社会に危機感を煽るような報道をするのは良くないのではないかと思っています。

なぜなら
新聞やテレビが国民が不安になるような記事を書き、世論がそれに倣ったならば
それは必ずや
「社会保障制度が破綻しますので、さらなる増税が必要だ」
「人口を維持するためには移民が必要だ」
という論拠に利用されることになるからです。
(実際2014年2月24日、内閣府の「選択する未来」委員会は、外国からの移民を毎年20万人ずつ受け入れることで、日本の人口1億人を100年後も維持できるという試算を示している。)

しかし日本が人口を維持するために、
日本に馴染むかどうかも分からない移民を受け入れ続け、それが本当に日本国民の幸福に繋がるのか。
或いは増税することで社会不安が解消されるのか。
甚だ疑問です。


また、これは根本的な話になるのですが、
「そもそも本当に人口が減る事が『日本消滅』の危機」なのか、という疑問があります。
世の中には「そんなことはない」、と言う人達もいて
その人達の話も紹介せずに、新聞の論説委員が一面トップで殊更に社会不安を煽るのは
報道としての公平性に疑問を感じずにはいられません。


例を挙げると
http://www.glocom.org/sum_ja/past_sum/index52.html
「悲観すべきでない日本の人口減少
原田泰 (内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官)」

https://www.youtube.com/watch?v=8KnmerRhP64
日本は人口減少で衰退する!?日本に蔓延する嘘と解決策!
(2015年4月22日「おはよう寺ちゃん活動中 三橋貴明」)


「藻谷浩介 『日本経済の今 第4回(全4回シリーズ)』」
https://www.youtube.com/watch?v=HENnGBpQ0EY

などです。

原田氏は、労働人口が減るなら生産性を高め、多くの人が働きに出ればいい。
藻谷氏は、産業の機械化・自動化によって労働人口の減少は生産性の減少とはならない。
というもの。
三橋氏の主張は、高齢社会は総人口に対して生産年齢人口(つまり現役世代)が不足するので、食い扶持(総需要)に対して働き手(総供給)が足りないという「超人手不足」状態、「インフレギャップ」が発生し、雇用と景気が良くなるというものです。

因みに、人口が減ると国力が落ちるという論拠は、生産年齢人口(=労働力人口)が減る事によって労働力や生産性が落ち、潜在成長率が低下するというものなのですが

日本は1999年から総人口に先駆けて労働力人口が減少に転じていますが、成長率が大きく低下したという事実はありません。

外国ではロシアが1992年をピークに10年以上人口が減少し続けていますが、日本より高い成長を続けています。ロシアでは1995年以降、ほぼ毎年80万人以上の人口の自然減が続いていますが、1999-2008年まで実質GDPで平均6.75%の成長を続けているのです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E6%B8%9B%E5%B0%91%E7%A4%BE%E4%BC%9A
(ウィキペディア「人口減少社会」より)

また、人口減少だけをいうのなら
日本・ロシアに限らずイタリア、ドイツでも既に人口が減少しています(ただEUは人口減少を食い止めるために移民を受け入れ、それが新たな社会問題を生み出している)。
イギリス、フランス、スウェーデンでも2025年頃から人口は減少し、中国でさえ2030年代の15億人余をピークに減少するとされています。

じゃ、何も問題がないのかといえば、やはりそんなことはなく、
日本の場合は、増える高齢者と減る現役世代とで、社会保障制度が限界に達してしまっているという問題があります。
これについては社会保障制度そのものの改革が必要で、ぶっちゃけ高齢者も働いて年金を受け取るではなく、支払う側に回ってもらって、出来れば子供や子育て世代のために社会がカネを使うようになる必要があるでしょう。
いや、もっとぶっちゃけて言うとあと70年も経って私達団塊ジュニア世代が死に絶えた頃、
日本の高齢社会の問題は終結し、年代別人口比はフラットな状態となります。

次に人口が東京一極に集中し(東京と沖縄だけが前回の国勢調査から3%近くも人口が増えた)地方の過疎化が進むという問題。
これは以前も書いたことがありましたが、一か所に国の人口の大部分が集中するということは安全保障の問題においても危険があります。
地方自治体がIターン・Uターン政策に励んでもらい、若者が地元で働けるような環境を作る事がとても重要になると思います。
また現代はインターネットの発達によって地方においても仕事をするに不自由を感じなくなってきています。国の重要施設なども地方に分散した方がいいのではないか、なんてことを思ったりします。

最後に一番重要なのが、若い人が結婚して子供を作らないこと。結局これに尽きると思います。
地元の代議士がよく話されているのですが、昔の地域社会には世話焼きの大人がいて独身の男女がいるとよくお見合いを持ちかけたそうです。
(1935年では70%がお見合い結婚であった。現在は8%)
国家の政策として結婚を強いられるというのは、個人意識の強い現代においては反発を招くかもしれませんが、結婚し子供を産み育てることが個人の幸せにも繋がるという意識を社会全体で作って行けば、
今よりかは子供の出生率は高まるのではないかと思います。

以上、たらたらと書いてきましたが
とにかく、日本の人口が減り続けることは動かしようのない「自然現象」であり、
これについて悲観論ばかりを言っていても、それは仕方がないと思います。
もっと思考を前向きに捉え明るい社会を描きながら、この問題は論じられるべきなのではないか、とそう思うのです。