前回のブログの続報という形なります。
1週間前の2月7日、北朝鮮は事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験を行う。
同10日、日本政府は北朝鮮への制裁強化を決定。
12日、北朝鮮の(ここからがちょっとややこしい)
日本人拉致問題の再調査を行う 「特別調査委員会」 が談話は発表、
拉致問題を含む日本人の調査を全面的に中止し、同委員会を解体すると宣言。
13日、日本政府は再調査の約束を一方的に放棄したことに対し抗議。
というのが、
報道の趣旨となります。
北朝鮮の言い分としては、
・核実験とミサイル発射は「主権国家の合法的な権利行使」であってどこの国からも文句を言われることではない。
・2014年5月に日本―北朝鮮間で「ストックホルム合意」を出し、北朝鮮が拉致問題の再調査をする代わりに、日本が北朝鮮に課している制裁を一部解除したにも関わらず
今回日本は何の関係もないミサイル発射を口実に、解除されたはずの制裁を復活させ、さらに追加制裁まで課してきたのは、明確な合意違反であって悪いのは日本の方である。
・従って我々も拉致問題の再調査をやめる。
と、こういう理屈です。
ここで注目すべきは談話を発表したのが 「特別調査委員会」 であって、
ストックホルム合意を結んだ当事者である北朝鮮外務省は沈黙しているという点です。
結局「特別調査委員会」なるものは政府の下部組織に過ぎないので、
ここが自主的に解体してみせたところで、上部組織である北朝鮮外務省が命令すれば
この手の「委員会」はまた作られるのです。
また特別調査委員会が発表した談話では
「安部政権が日朝合意の破棄を自ら『公言』したことになる」
と主張してはいるものの、自分達からは「これでご破算だ」と言わないところにも含みを感じます。
つまり、どういうことかというと、
北朝鮮は相変わらず日本からの大規模な経済協力を希望しており、
また日朝交渉は国際的な孤立を打開しうる貴重なカードでもあることから
完全に日本政府との交渉を切るつもりはない、
日本政府の「再考」次第ではまた話合を再開してもいいと考えている。
そう見ることが出来るのです。
ただ
そもそも論として、
犯罪者が自ら行う犯罪調査が信用できるわけがないですし、
犯罪者が犯罪被害者をネタに交渉を仕掛けようとしている時点で
日本人から見れば業腹以外の何物でもありません。
でも
おかしなもので日本のマスコミの中では本当に悪いの安倍政権であると報じたい人達もいるようなのです。
「ただ日本は米国や韓国と連携して制裁強化を決定しており後戻りは困難だ。
日朝間の歩み寄りの余地は極めて限られ、当面の拉致問題進展は難しくなった。」
(新潟日報13日朝刊1面より)
↑なんですか、この恨みがましい文章?
新潟は実際に拉致被害者が多くいる「当事者」なのに
真剣にこの新聞は北朝鮮との対話が可能で、彼らを信じて歩み寄れば
北朝鮮が胸襟を開いてくれて拉致被害者を解放してくれるなどと
そんな事を信じているのでしょうか?
因みに韓国の廬武鉉大統領は北朝鮮に対して「太陽政策」を採りましたが
(北朝鮮に核武装を解かせるためには北風=経済制裁よりも太陽=経済支援が必要、という政策)
その際北朝鮮に送られたカネが新たなミサイル開発の資金となったことを忘れてはいけません。
北朝鮮の金政権にとって、核とミサイルは自身の体制と命を護る「唯一にして絶対の武器」なのです。
これはどんなに他人から強要されようと絶対に手放すことはありません。
カネを手にすれば必ず核とミサイルのために使います。国民の生活のために使われる事などありません。
そして北朝鮮に住む日本人妻あるいは拉致被害者は、日本(に住む同胞)からカネを引き出すための大切な人質なのです。
最大限交渉材料として利用します。
そこには日本人の持つ倫理観・価値観は通用しません。
それとは異なる、彼らの「理」が存在するのです。
それを無視して拉致問題・ミサイル問題は語る事など出来ないのです。
ですから、
読売新聞の一面にありますように、日本政府が米韓と「対北包囲網」を敷くことは当然のことだと思います。
外交交渉は「実力行使」の裏付けがあってこそまともに出来るものです。
話合に応じなければ真剣に相手の方が困る状況を作ってこそ「外交努力」なのです。
「アメとムチ」のアメしかない外交など失敗するのが当たりまえです。
というか、
ぶっちゃけ今までそうだったでしょうが。
誤解を恐れず書くならば、常にアメとムチのムチの方で相手に自国の要求を通してきた北朝鮮の方が、私は外交のなんたるかを分かっていると思います。
外交とは、必ずしも友好的なものではなく、
武器を使わずとも半ば強制的に、自国の国益を相手に認めさせる事だと私は考えています。
ですから
時として日本も牙を剥く、その意思と実力と用意があると相手に示せる。
そうして初めて外交とは主導権が取れるものだと思いますし、
逆説的ですがそれが出来てこそ、日本の「武力行使なき平和」は達成できると私は考えます。
因みに中国が北朝鮮をコントロール出来る、
という意見がありますが私は極めて懐疑的です。
北朝鮮はすでに中国のコントロール下から出ることを意識しており、
それがあって親中派の実力者であった張成沢を一族もろとも粛正しました。
「世界史で学べ!地政学」(茂木誠 祥伝社)の中で
金正日の正恩への遺訓として
「中国は歴史的に我が国をもっとも苦しめた国」「現在は我々と近いが将来は最も警戒すべき国」と言い残したことが紹介されており、
開発した核とミサイルは日本アメリカのみならず中国・ロシアにも向けられていると言及しています。
中朝国境を通じて中国の脅威を肌で感じている北朝鮮が日米との関係改善を模索している、
それが事実であるならば、案外米国の態度次第では北朝鮮は本当に拉致被害者を解放するのかもしれません。