お弁当アーカイブ ☆彡(0020) 猪と大根の相性

猪の肉は冷凍で売っているんで、通販で買って夏場でも食べることがあります。ときどきとても食べたくなるのです。猪と大根を鍋で煮るのは、高知県の中山間地で育った祖父から伝わった知恵です。とても相性がいいのです。


夏季の猪は栄養状態が年間で最低の状態です。秋から堅果類を食べて初冬までにかけて脂肪の蓄積量が増えます。冬に捕獲した猪肉はジューシーで柔らかく、夏季の猪肉は硬くて脂肪含有量も低いという傾向です。冬の猪肉は高価格です。

猪と豚の同じ部位を比較すると、水分やミネラル、蛋白質は猪肉の方が豚肉より多く、脂肪やビタミンB1は豚肉の方が多いそうです。猪肉の脂肪はばら肉でも約12%と、豚肉の半分以下です。ビタミンB2やB12は、猪肉が豚肉よりもはるかに多く含んでいます。

猪肉は低カロリー、低脂肪で、かつ体に必要な栄養素をたっぷり持っています。カロリーも豚や牛に比べて低く、豚肉や牛肉との違いは脂の付き方です。猪肉は白身と赤身がはっきり分かれており、その白身の脂肪の質が良いということが特長です。自然の中を動きまわる猪に必要な脂肪を付けているのです。

猪肉は若さを保つ多価不飽和脂肪酸(ドコサヘキサエン酸、イコサペンタエン酸)を、牛肉の2倍以上含んでおり、中性脂肪、悪玉コレステロールを増やし動脈硬化や肥満などに繋がる飽和脂肪酸は牛肉の半分以下しか含んでいません。

猪肉は普通は冬場の食べ物です。冬場にはよく鍋にして食べます。



猪は屠畜場法に基づく検査(と畜検査)の対象にされていません。食肉としての疾病確認や解体時における衛生対策などの法定基準は設けられていないのです。食肉加工は猟師が自ら行う場合がほとんどです。肉を提供する店では猪牧場から仕入れて品質を保ちます。牧場では瓜坊を捕らえて育てます。

例えば、鳥取県では市町村の補助金で県内数箇所に猪専用の食肉加工処理施設が設置されています。群馬県では専用の加工施設が設置され、「あがしし君」のブランドで販売されています。島根県では猪肉に係る衛生管理ガイドラインを作成しています。

猪は泥浴を行います。泥浴を行う場所を「沼田場(ぬたば)」と呼びます。猪が転げ回る様子から、苦しみあがくことを「ぬたうちまわる(のたうちまわる)」という言葉になりました。

日本の縄文時代の遺跡から出土する動物の骨の約9割が鹿と猪です。主要な狩猟対象獣でした。日本の急流の川の水が軟水であるため獣肉を煮るのには適さず、肉を焼いて食べました。西洋ではゆっくり流れる川が大地の成分を溶かして硬水になるため、獣肉のあくがとれて美味しいブイヨンができました。

猪は多産です。東アジアでは子孫繁栄を祈願する「亥の子」と呼ばれる年中行事や「亥の子餅」を食べる風習があります。縄文時代には豊穣の象徴として重視され、土器の文様に猪が描かれました。