ニューヨーク物語(オマケ話) | 鬼ですけど…それが何か?

鬼ですけど…それが何か?

振付師KAZUMI-BOYのブログ

 
 
 
ドナルドは言った。
 
 
『日本人のダンサーなんて他にも沢山居るのに、どうしてこの子だけが、こんなに虐められるのだろう?』
 
 
 
さぁーて、こればかりは私にも判らないし、では果たして、他の日本人ダンサーは虐められていなかったのか?どうか?となれば、皆目見当もつかない事である。
 
 
 
 
私の場合、はじめは嫌味や冷やかし、そして悪口を言われる程度の事だった様に思う。
 
 
 
英語が解らない頃は…
 
 
『言葉も満足に話せないクセに、こんな所まで来ても仕方あるまい。』
 
 
『英語が理解出来ない奴が、此処で一体どうしようって言うんだ。』
 
 
などと言われていたらしい。
 
 
 
英語が話せる様になればなったで、わざと表現やら単語を難しくして話し掛けて来て、私が理解出来ずに居ると…
 
 
『英語が話せる様になったって聞いたけど、ウソじゃん(笑)!』
 
 
と笑われた。
 
 
殆どの仲間は、私と話す時には、ゆっくりと、出来るだけ簡単な単語を選んで話してくれていたが、意地の悪い連中は非常に早口で、私の知らない単語を並べたてる。
 
 
 
具体的な嫌がらせとしては…
 
 
私がシャワーを浴びている間に、ダンスシューズをトイレに突っ込んでおいたり、ダンスバッグの中に大量の松ヤニを突っ込んでおいたり…と言った様な仕打ちを受けた。
 
 
多くのダンスシューズは皮製であるから、水に濡らされてしまうと、酷く傷む。
 
 
乾燥させても、皮がカピカピに歪んでしまう。
 
 
それにも増して、トイレに突っ込まれた訳だから、匂いが…(--;)
 
 
その匂いを落とすには、当然、洗剤を使わなければならず、シューズの皮は更に傷む訳である。
 
 
ダンスシューズは、私達にとって必要不可欠な大切な物であり、そして決して安価な物ではない。
 
 
極貧ダンサーの私には、おいそれと買い換える事が出来る品ではなかった。
 
 
 
ダンスバッグにしても同じ事である。
 
 
大量に詰め込まれた松ヤニを取り出した後は、バッグの中はベタベタで、一度や二度洗った所で綺麗になる物ではなかった。
 
 
生地の目に詰まってしまった松ヤニの粉は黒ずんでしまい、バッグの中に中袋を入れて使用しなければならなかった。
 
 
 
※松ヤニはトゥシューズやジャズシューズの滑り止めに使用する。
 
 
 
なけなしの金で買ったばかりのサウナパンツの尻の部分を、カミソリで裂かれた事もあった。
 
 
なけなしの金と言っても、当時の$20。
 
 
当時は$1、約¥150。
 
 
たかだか¥3000程度の物である。
 
 
 
ビニール製のチープなサウナパンツではあったが、冬場の寒さを緩和しようと思い、悩みに悩んだ末に買った物だったので、あの時の落胆は大きかった。
 
 
誰の仕業かは分からないし、犯人探しをしようとも思わなかったが、こうした嫌がらせを受ける度に『何くそ精神』は確実に養われた様に思う。
 
 
 
『今は…どんな嫌がらせも甘んじて受ける。だが、いずれ必ず、私に嫌がらせをした連中を見返してやる!』
 
 
その為には、ダンスも英語も上達させなければならない。
 
 
それしか、私の取るべき手段はなかった。
 
 
 
今となっては、懐かしく、微笑ましくさえ思える『いい思い出』である。