バカにゃダンスは踊れない⑥ | 鬼ですけど…それが何か?

鬼ですけど…それが何か?

振付師KAZUMI-BOYのブログ

ある日、同僚のインストラクターが私に、こう言った。


「女性更衣室で、KAZUMI-BOYの生徒達が口々に騒いでるのを耳にしたんだけどさ…。」



私は彼女の次の言葉を待った。
彼女はいささか苦笑しながら続けて言った。


「『BOY先生は日頃、アタシ達には厳しいのに、宝塚の生徒さん達には優しい!』って…。」


私は別段、何とも思わずに聞いた。


「で?」


彼女は私の反応の無さに、やや狼狽えながら


「あ…いや、生徒達の下らないヤッカミみたいなモンだけどさ…あまり良くない噂が立つのもね…どうなのかな…って思ってさ…」


「いいんじゃない?ホントの事だし。」


彼女は更に狼狽えた。


「え?」


彼女の顔には明らかに『コイツは一体、何言ってんだ?』と言う表情が浮かんでいる。



常日頃から、女性更衣室の中と言うのは一種の情報交換場所であり、女性同士によくある特徴的な事件も起きやすい場所であるらしい。


同じ女性同士、裸の付き合いの中、感情も裸に成り易いらしい。



「別にホントの事が噂になったって構わないよ。」


彼女は怪訝そうに私の顔を見た。


「宝塚の生徒達は、東京公演の期間中や休みの日を利用して来てくれてんだよ?しかも月曜日のクラスなんて、終演後にバタバタ支度して急いで来てくれてんだぜ?(この時はまだ、東京宝塚も水曜日が休演日であった。)」


私は続けた。


「限られた時間でしか俺のクラスを受講出来ないんだよ。だから連中はクラスの間中真剣だよ。怒る必要も無ければ、厳しく接する必要も無いだろ?」



更に…


「真剣に頑張ってる連中に優しくして何処が悪いんだ?」


彼女は、なるほど、そうだったのか!と言う顔をしたが、こう返した。


「KAZUMI-BOYの事だから、その辺の態度があからさまなんじゃないの(苦笑)?」

私は言った。


「だろうね。だけどね、こう言う下らないウワサを口にする奴等ほど、日頃のクラスじゃあ間の抜けた事してんだぜ?おんなじ事を何度言われて、何度注意されようが、何度怒られようが、欠点を直しゃしない!」


「いつもKAZUMI-BOYのクラスを受けられる…って言う甘えね…?」


「そうだよ。怒られる事にも慣れっこなんだ。」



そういう輩に厳しく接して、何が悪いんだ?と私は言った。



宝塚の生徒達に対してだけではない。


休みを利用して、わざわざ遠方から来てくれる生徒達も沢山いる。


北は北海道、南は沖縄、遠くからやって来てくれるのである。


彼等はいつでも、真剣である。


『今、この時しかない!』

からである。


金と時間をかけて来てくれているのだ。


勿論、毎回のクラスを欠かさず来てくれる生徒達こそが、金も時間もかけてくれているのである。


しかし、金も時間も、使い方が重要である。




『東京にお住まいの生徒さん達は、毎日先生のクラスを受けられて、羨ましいです。』


と、遠方から来てくれる生徒達は口を揃えて言う。


宝塚の生徒にしても同じ事を言う。


クラスで何を得るも得ないも、生徒の力量ではない。

そして回数でもない。


真剣味と集中力である。


『クラスを受ける事』


に慣れ、クラスを受ける事で善しとしている生徒達には…


上達など有り得ない。


これに気付かない輩を『バカ』と呼ばずに、何と呼ぼうか?




ちなみに、申し上げておくが、私は感謝されたい訳ではない。


上達して欲しいだけである。