ニューヨーク物語 25 | 鬼ですけど…それが何か?

鬼ですけど…それが何か?

振付師KAZUMI-BOYのブログ


私達はツアーに出発した。




台湾からの出演者達は、アイリーンをはじめ皆優しく、私達ダンサー4人をいつも気遣ってくれた。


特にアイリーンは、少しの間日本に居た事があり、片言の日本語が話せたので、私達はすぐに仲良くなった。




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(↑中央がアイリーンである。)





ショーの始まり、私はアイリーンの影武者を務めた。


だっぷりとした振り袖付きのかけに、大きなドーナツ状のツバの帽子を被り、アイリーンも私達も顔を隠して登場するのである。



帽子のツバからは、布が垂れており、観客からは顔が見えないのである。




ショーが始まると、最初の曲のしっとりとしたイントロをバックにアイリーンの挨拶が録音で流れる。



『皆様、本日はようこそ御出下さいました…』



私はアイリーンに成り済まし、観客に話し掛ける素振りで、ステージの上下を淑やかに練り歩く。



そして、イントロの決め音で、全員が帽子を投げ棄てるのである。




このアイリーンのダミーは、本国台湾でも男性ダンサーが務めていた。



帽子を投げ棄て、着物風のかけを脱ぎ捨てると、曲は一気に激しいアップテンポに変わる。




私達は、このショーを、そしてこのツアーを大いに楽しんだ。





ショーのみならず、私達が…と言うより、私とS君の二人が大いに満喫し、楽しんだ物があった。




それは、各地の空港で私達を待ち受ける送迎車である。




ボルボ、ポルシェ、アルファロメオ、フェラーリ、勿論ベンツ…と、世界の名車、高級車が代わる代わる現れ、空港からホテル、ホテルから会場、そして毎夜行われる晩餐会へと運んでくれるのである。





『ボストンには、ボルボが迎えに来てたよね!今度は何だろう?』



『ランボルギーニ来ないかな!』



『この前アイリーンが乗ったのは、ロールスロイスだったね!』





…私とS君は、興奮のし通しであった。






各地に世界の名車が出迎えに来たのも当たり前である…。






ニューヨークを含め、各地のプロモーターは全て…





チャイニーズマフィアだったのだから…。






若い私達は、高級車に見とれるばかりで、このツアーにどんな結末が待ち受けているか?など、微塵も考えていなかった…。