シャオメイの全て | ルーメン・イストワール

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EDENS ZERO/Mashima HERO'S/FAIRY TAIL/RAVE

概要


第289話にて、ずっと謎だったシャオメイの正体が明かされました。

かつて二万年前の世界で、ずっと地球の側にいた「月」

以前からマザーとの特別な関わりは仄めかされていて、地球と密接に関わった存在である事は分かっていました。

今回は最後にシャオメイとは何者だったのか、これまで描かれた謎をおさらいすると共に、一通り真実を踏まえた解釈してみたいと思います。


シャオメイ

まずは簡単にシャオメイについておさらい。

  • この物語の語り部
  • これまで『EDENSZERO』という物語をメタ的に認識し読者と交流していた
  • 四季大宇宙においては「桜宇宙伝説の占い師」として名を馳せている
  • 「時詠み」の力で銀河の全てを知っている
  • かつてマザーに出会い「時詠み」の力を手に入れた
  • それと引き換えに今はマザーの場所に関する記憶とそれを知る権限を失っている
  • 時の惑星ミルディアンにいる
  • マザーと対話していて、特別な関係が匂わされていた
  • 「ルナ」という別名がある事が分かっている

正体は月

シャオメイの正体は「月」だったと第289話にて判明しました。
時喰みの力でマザーを地球に戻し、そのすぐ近くにいた地球の衛星
宇宙で光輝いている月こそシャオメイの正体でした。
月にはシャオメイの顔が浮かび上がり、レベッカ達に「ありがとう みなさん」と感謝の言葉を伝えています。

明確に言葉として説明はされなかったですが、正体が「月」だったと考えるに十分な描写でしょう。
シャオメイ=月である伏線は最終章に入ってから随所で描かれています。
  • マザー(地球)と話している
  • ラテン語で「月」を意味する「ルナ」という別名がある
  • 自分は「地球の衛星だった」と話していた
以前からほぼ確定と見て間違いなさそうだった。
マザーを救った事で、晴れて正体が確定した。
正体は分かったがこれまでの言動・行動の全てにしっくりきたかというと、そういうわけではない。
ではあれはどういう事だったのかと理解できていない部分もある。
そこで、これまでのシャオメイの言動を振り返ると共に、謎に対する答えを考えてみる。

物語の語り部をしていた理由

「シャオメイ」というキャラクター、初登場時1番のコンセプトとして出てきたのが「この物語の語り部」
5話の冒頭、単行本では2巻の始まりとなるタイミングで「私の名前はシャオメイ 何者かはいずれ分かるでしょう」と言って出てきた。
その時言ったのは「この物語の語り部とでも思ってください」

事実、その言葉の通り、シャオメイは物語を語る役割を担っていた。
何故、シャオメイは「この物語の語り部」だったのか。
これはまさに「月」という正体で説明をつける事ができるのではないかと思います。
「月」とは、天から地球を見守っているような存在
それこそ「物語の語り部」のような存在感なのではないでしょうか。
地球で生きる人々が主役で、その物語の語り手
『EDENSZERO』の物語があろうがなかろうが、ルナ(シャオメイ)ずっと物語の語り部をしていたのかもしれません。
と言っても本来は地球の側にいる存在で、四季大宇宙を生きるシキ達の物語を観測する事はできません。
そうできた理由を色々考えてみたのですが、やはり『EDENSZERO』という物語が地球に存在しているからなのではないかなと思いました。
今、我々が読んでいる漫画『EDENSZERO』
地球が出てきた時点で、この地球は現実世界の実在している地球なのか、それとは違うあくまで架空の物語の中の地球(現実のマルチバース)なのか気になっていました。
個人的には後者の読者のいる現実とは関係のない地球だと考えていたのですが、シャオメイが『EDENSZERO』の物語を語る事ができた理由を考えると、しっかり読者のいる現実世界と繋がっているのかなと思いました。
であれば、あそこまで珍しく複雑なキャラクター構造を説明できる。

目的

その目的は何だったのか。
シャオメイの目的は、読者をマザーまで導く事だったのかなと思います。
第263話にてシャオメイと話をしていたマザー。
マザーはシャオメイに「ここまで彼等を導いてくれてありがとう ルナ」と感謝していました。

「彼等」とは一見「シキ達」の事を指していたと感じますが、自分はこれを「読者」の事を指していたのではないかと考えます。
仮にこの「彼等」が「シキ達」の事だったとしたら、シャオメイは「導いた」と言える程関わっていないからです。
シャオメイがシキ達と関わったのなんて、ヴァルキリーの居場所を教えた時ぐらい。
それをシャオメイがシキ達をマザーのいる宇宙まで導いたというのは、少々無理がある気がします。
別に、何もしていない。
それ以外で別の可能性を考える事ができたのが、この物語の読み手
読者こそシャオメイが最も干渉した存在で「導いた」という表現もできる。
確かに読者はシャオメイに導かれて、物語をクライマックスまで読み進めてきました。
シャオメイに1番導かれていたのは「読者」と言えるんです。
物語を伝える事に特別な意味があり、そうやって導く事がシャオメイの目的だったのではないかと思います。

"時"はあまり意味を持たない

初登場時、もう一つ言っていたのは「この物語において"時"はあまり意味を持たない」という謎めいた発言。
ちょうど一つ前の話の最後に突如時間が「2万年後」に飛び、その不可解な部分を説明してくれました。
「前回…お話が二万年後に飛んだ?大した意味はありませんわ そう…この物語において…"時"はあまり意味を持ちませんの」と話していました。

「"時"はあまり意味を持たない」という言葉の意味。
これには一つの答えがあるのではなく、いくつかの意味が複数存在しているのではないかと考えます。
  1. 時喰みの存在(タイムトラベルのようでタイムトラベルじゃない)
  2. 二万年後という「未来」が、ジギーにとっては「過去」であるという物語のループ構造
  3. 本来ルナが観測している地球の物語の時間軸は今描かれているシキの物語とは違うところにある
最初に明かされた時喰みの存在はまさにシャオメイ初登場の回にその影響が描かれていて、伏線回収としては自然な流れです。
あれだけで説明はつくのですが、ここまで読むと物語全体のループ構造だったり、地球の物語としては違うところに「時」があるというのも示している気がしました。
今でこそ解釈できる「"時"はあまり意味を持たない」理由はこういうものだったのではないかと思います。

星の数だけ真実が在る

作中で描かれた「謎」かというと少し違うのですが、読み返して少し鳥肌が立ったのは第31話の1ページ目
この回では初登場時以来にシャオメイが出てきます。
知識の宮殿の宇宙空間でシャオメイが背中をこちらに向けて立っていて「星の数だけ真実が在る…」という煽り分が添えられています。

「星の数だけ真実が在る…」って、まさにその「星」がシャオメイの正体…!!
しかも「数」と複数存在を匂わせていて、マザー(地球)の事も指しているように感じます。
こうして見ると背景で輝いている無数の星々の一つがシャオメイだったと見えて、美しい光景。
煽り文は編集部の方が付けていると思うので、真島先生の意図した演出だとは思いません。
偶然でしょうけど、今にして見ると綺麗な真相の匂わせ方だな〜!
一人向いてるのはかつて地球(マザー)があった宇宙の方だったりするのでしょうか。
まさに「星の真実」を一人で背負った姿で見惚れます。
色んな見方ができる趣深い絵。

知識の宮殿の宇宙空間

同時にそうなると惑星ミルディアンにあるシャオメイが「時詠み」をする場である知識の宮殿、あの中の宇宙空間も地球のある読者のいる現実の宇宙をイメージして作られているのではないかと思いました。

あの宇宙空間はシキ達でも踏む事ができ、無重力でもないし、呼吸する事ができます。
すなわち本物の宇宙くうかんではない。
作り物の空間だとは思うのですが、あの宇宙には桜であったり海であったり四季大宇宙を思わせる要素が一つもないんです。
シャオメイはどの宇宙にも分類されない存在だからだと思っていましたが、今にして思うとあれはシャオメイの故郷である「地球のある宇宙」だったのかもしれません。
偽物ではあっても、シャオメイは心の拠り所のように故郷と同じ空間を惑星ミルディアンに作ったのではないでしょうか。
ちょうどシキ達が地球にある宇宙に初めて来た時も、四季大宇宙のどの特徴もない「何もない宇宙」という世界の特別さが際立たせて扱われています。
最終決戦の地となった「何もない宇宙」…シキ達は既に一度訪れた事があったのかもしれません。

「いじわる」なお話

デジタリス編開幕の第31話。
シャオメイはひとしきりこれまでの話を振り返ってから、話を次なる冒険に焦点を当てて「先に謝っておきますわ 今回のお話とても『いじわる』ですの ごめんなさい」と言っていました。

これはおそらくデジタリスという仮想空間ならではの「アバター」を使った本人とすり替わるトリックを指していたのではないかと思っています。
デジタリスでは「ホムラ」だと思っていた人物の正体が実は「アミラ」で、アバターを使って仮想空間にログインする性質上騙されました。
デジタリス編における「いじわる」だった要素は、これぐらいしか考えられない気がします。
といっても、アミラは「ミラーフェイス」という能力で誰でもそっくりに変身する事ができ、別に「アバター」というシステムは必要なかったんです。
その為、アバターを使ったトリックが「いじわる」だったのかどうか釈然としない部分もあった。
シャオメイもそんな読者のリアクションを見越して「え?どこかいじわるだったって?」と反応していて「そうですね…人によって様々な感じ方があるものですわ」と言っていました。
デジタリス編の何がいじわるだったのか、確かな事は分かりません。
ただ、自分はこのシャオメイの読者とも交流できるところ、不完全な物語に対する様々な感じ方の多様性を認めているところに意味がある気がしています
こういう反応にこそ「シャオメイの正体」が秘められているのでははないかと感じていました。
シャオメイの正体は「月」で、我々読者の生きてる「地球」も出てきた。
この地球が本当に読者のいる世界なのか、架空の物語の中の地球なのか、解釈が分かれますが、この見方によって意味が変わる事こそ「そうですね…人によって様々な感じ方があるものですわ」と言っていた理由なのかなと思います。
そして「いじわる」とは、ある意味"現実"と繋がっているこの物語そのものに言えるんじゃないかと
『EDENSZERO』はシキの物語でありながら、読者の物語でもあった気がします。
シャオメイは単なる語り部ではなく、真相を考える上で重要なヒントを残していた。そんな読み手とのギャップこそ、少し「いじわる」だったと言えるのかもしれません。

ピコラッタ

もう一つ鳥肌が立ったのは、ミルディアンバトルコロシアムに集まっていた「ピコラッタ」の存在。
シキ達の戦闘の様子を見ていた「コロシアムの観客」であるピコラッタ。
このビジュアル…「うさぎ」に見えませんか!?

「うさぎ」というと「月」と密接な関わりがある動物。
月の影が「うさぎ」に見えるという話です。
その事から月にうさぎがいるイラストがよく描かれます。
「ピコラッタ」という謎の生物の存在理由…シャオメイの正体が「月」だと示していたように見える。
これに関しては、この時からシャオメイの正体が「月」だと決まっていたんじゃないかと思えるレベルの一致です。
まぁ、ピコラッタもうさぎっぽいというだけで完全にうさぎではないですが。
ただそれでもシャオメイの集まりの中に「うさぎ」を模していると思える生物がいる。
興味深い発見です。

「時詠みの力」の全貌

銀河の全てを知る力である「時詠み」
これも結局どういうものだったのか、今一度考えてみたい。
シャオメイによるとこの力で銀河の全て、それも過去・現在・未来に至るまでありとあらゆる事を知っていると言っていました。
その力に一つだけ制限をかけ「戦いの勝敗」だけは分からないという話です。
この力はどういうものだったのか。
「月」という正体を踏まえて考えると、現実世界で『EDENSZERO』の物語が存在している故にああできたんじゃないかと思っています
読者と同じ視点で物語を見ているからこそ通常知り得ない事まで知れる。
ミルディアンでシャオメイは「私のこの時詠みの力 マザーより授かったものなのです」と言っていました。

マザーと会う事でもう一度生まれ時詠みの力を得たと言っていましたが、これに関してはブラフもあるかなーと思っています。
シャオメイは「月」として、ずっと地球と共にあったのです。
マザーに会いに行った結果、あの距離にいたというわけじゃない。
シャオメイはシキ達をマザーの元に行くよう仕向ける為に、ああ言ったのではないかと思っています。
あたかもマザーが何でも願いを叶えてくれる存在だとシキ達に思わせた(マザーの"願い"の詳細はまだ分かりませんが)。
その上で「マザーに授かった」という部分は、解釈の仕様によっては間違っていないと思います。
だって『EDENSZERO』は、地球(マザー)で生まれた物語だから。
「月」として観測する事ができたシャオメイは、確かに時詠みの力を「マザーより授かった」と言えるのです。
シャオメイの時詠みの力とはそういうものだったのではないでしょうか。

永永無窮の星より

第48話のサブタイトルは『永永無窮の星より』

シャオメイが時詠みの能力でヴァルキリーの居場所を教え、シキ達を見送った回。
この話に『永永無窮の星より』というサブタイトルが付けられています。
これも当時一体何を指しているのかよく分からなかったサブタイトル。
「永永無窮」とは「いつまでも永遠に果てることなく続く様。長く続いて極まりない様。時の果てしなく長い例え。」という意味。
「星」だから惑星ミルディアンを指していると思いましたが、別にミルディアンに「果てしなく長く続いている」というような意味はない。
新たな目的地であるサン・ジュエルにもありません。
これも今にして新たな解釈を見出すなら、この「永永無窮の星」こそ「月」を言い表していたのではないでしょうか。
月というのは、調べると「45億年前」から存在していると考えられているようです。
加えて『EDENSZERO』としては、現行メインタイムラインの「二万年前」から存在しているので、そういう意味で「永永無窮の星」と表現したのではないでしょうか。
つまり『永永無窮の星より』とは、シャオメイからシキ達に送られたものを言っていたのかもしれない。

シキに対する特別な思い入れ

シャオメイはシキ個人に特別な思い入れがあったかのような描写もあります。
ベリアル・ゴアでのドラッケンとの戦いにて"一度目"の世界で敗北したシキ達。
絶望的な状況をシャオメイはこう言っていました。
「絶望…悪夢なら覚めてほしいと願いほどの恐怖 人は…その絶望的な状況下に置かれた時何を思い何を口にするのでしょう?未だかつてないほどの痛みの中…シキは…」

シャオメイは少し目を細めて話していて、自分には少し悲痛そうに見えました。
この時のシャオメイには、これまでのただの物語の語り部とは違う、特別な感情移入を感じたのです。
シャオメイにとってドラッケンに殺されるシキは、例え物語がまだ続くと分かっていてもスルーし難い程の「痛み」を感じていた。
この描写にはどんな意味があったのでしょうか。
これはシャオメイの正体が「月」だからといって、納得できるものではありません。
やはりシャオメイはシキ達とはかけ離れた存在で、本来同じ目線に立てないと思うのです。
シキが「地球の子」だからといって、説明のつく事でもない気がした。
考えられるとしたら、物語が進む中でシャオメイにとってもシキは特別な存在になったからか。
ずっと天から観測し、読者を導くだけの存在だったシャオメイ。
しかし、そんなシャオメイとしても存外この物語の主人公に情が移ってしまったのではないでしょうか。
それはまさに人であっても機械であっても「心」が宿るのと同じように。
「物語の語り部」も例外なく観測している世界の登場人物を想う心が生まれたなら、理解できる気がします。
だって、それは当事者ではないのに想像し感情移入して物語を読んでいる読者も同じだから。
"天"から見ているだけとはいえ、物語の登場人物が特別な存在になる事はあります

HERO'Sに出てきた少女

真島作品3つが合体した作品『Mashima HERO'S』
2019年に週刊少年マガジンで発表された作品です。
正史ではないスピンオフ的な位置付けの作品ですが、この漫画の中に「シャオメイ」と思わしき少女が登場しているのです。
第4話にて敵の力で生み出されたモンスターから街の人々を守るシキとナツ。
ナツがモンスターを攻撃し、シキが少女を助けました。
その少女は桜模様の服と頭に花飾りをつけていて、シャオメイと似ているのです。

ちょっと似ている程度の一致ではなく、意図的に似せて描かないとあり得ない一致に思える。
この少女がシャオメイと何か関係があるんじゃないかと考えていました。
やはりこの少女もシャオメイ?
シャオメイが「月」なら、どういう解釈が可能か。
自分はこの少女は想像神マシュマーのいた「神の国」からトゥルーアイランドに迷い込んでしまったシャオメイだったのではないかと思います。
作者の真島ヒロ先生ご自身をモデルとしているキャラ「マシュマー」。
真島先生も当然読者のいる現実世界に存在しています。
他にも「神の国」にいたとされる創造神には同じく週刊少年マガジンで連載されている漫画家さん達の存在が確認されているんです。
創造神たちのいる神の国は、現実と空想の中間にある世界なのでははないかと考えました。
シャオメイも「月」として現実に存在しながら「物語の語り部」として空想の世界に関わっている。
シャオメイだから現実と空想の狭間にある神の国への扉を開いてしまったのではないでしょうか。
そんなシャオメイをシキが救う画は印象的。
まるでいずれマザー(地球)を救う前兆のようです

以上、シャオメイについて考えてみました。
元々が「月」で、本来地球の物語の語り部でもあると思うので、もしかしたら最終話で最後にもう一度だけ登場する可能性もあると思います。
その時、結局この物語とは何だったのか、その真価を示してくれそうな。
単行本6巻のあとがきによると「隠された過去や設定がてんこ盛り」と言われていたので、描かれなかった"断片"を想像できる余地があると良いな。