戦争や自然破壊。人類が犯した罪はやがて──。
前号までのあらすじ…マザーを救うため再び始まった"ユニバース0"での冒険。シキはついに冒険の終着点・マザーの元へ辿り着く。彼女は、シキを待っていたと語り、"二万年前の契約"という二択の選択を提示。困惑するシキに対し、宇宙の女神マザーは自身の正体が「地球」と呼ばれる星であったことを明かす。そして二万年前の地球、エーテルが枯渇し滅亡へ向かう中で、それを救おうとする者たちがいて…!?
扉絵
扉絵は、桜宇宙を背景に真っ直ぐ前方を見据えるシキ。
煽り文には「少年は知る。二万年前の悲劇と奇跡を。」とあり、マザーの真実を一つ一つ知っていく今まさに本編の状況を表現したものですね。
しかし「悲劇」なのは分かりますが「奇跡」なのかどうかは今のところよく分からないぞ。
もしかして「奇跡」というのは、今後地球に起こる何らかの展開を意味しているんでしょうか。
二万年前の真相は「悲劇」と「奇跡」がキーワードになっていそうです。
冬眠のような状態
滅びゆく地球。
現在は魔王四煌星と魔王四黒星になってる、かつては人間だった男女合計8名と赤子のシキは、シェルターにもなってるユナのラボで話し合います。
星を救う為の地球のオーバードライブ計画。
「私の予想では地球は姿を変えしばらく冬眠のような状態になる」とユナは説明しました。
「その間にエーテルの自浄作用が働きこの異常災害を収めるという作戦なんだ」と「その後」の事は説明していたものの、何故冬眠のような状態になるのか説明はなし。
てっきりオーバードライブに成功した瞬間、一瞬で地球が回復すると思っていましたが、そうではないのか。
地球が回復状態に移行するまで一定の時間を要する。
「冬眠のような状態」とはどういう事なのだろう。
「冬眠」とは元々「季節的な低温に対して動物がとる生活を休止した状態」。
これを地球に例えると「星の活動を停止した状態」という意味だろうか。
水だったり、自然だったり、星の働きによって循環しているものが滞るみたいなイメージなのかな。
一気に無くなるとかはないだろうけど、限られた資源を効率的に利用するのが大変そう…みたいな印象。
何故そうなるのかというと、これはいわゆる昆虫にとっての「サナギ」のようなものなんじゃないかと思った。
その後蝶となって羽ばたく為の準備期間。
大きく変身する為に時間を要する。
実際サナギはほとんど動かないので「冬眠のような状態」という言い方にも一致する。
シキ達エーテルギア使いにオーバードライブの為の「冬眠のような状態」というものはない。
しかし「星」レベルになると、そういう特別なステップが必要なのかなと感じた。
計画も一枚岩じゃない。
エーテルの臨界点を突破しすぐにオーバードライブし地球が回復すると楽で良いけど、そういうわけにもいかないのだろう。
計画の実行
「各期間へのハッキング エーテルを暴走させるシステム もう準備はできてるんだ」なんて言って軽くとんでもない事やってるミオ、やっぱりハーミットだなと再確認します。
理論を生み出したのはユナですが、それを実現できる準備を整えたのはミオで、計画に対する貢献度が半端ないです。
こうやって考えると、ミオは『Steins;Gate』におけるダルのような立ち位置だと感じました。
彼女がいないと実現は不可能だったと言える程重要な役割。
「やるのかい みんなは」とリーダーのユナが全員に確認し、それぞれ賛同します。
「オレはおまえに反対した事なんてねぇだろ オレはいつでもおまえという波に乗ってるんだ」と答えるハワード(ブリガンダイン)。
「ユナ博士の理論は正しいと思っています」「地球を救いましょう」と答えるミオ(ハーミット)とミオの先輩(キラー)。
「オレはおまえ等に助けられた命だ 惜しくねぇ」「人類の為なら法なんて…」と答えるイヴリィ(シスター)とクーパー(クラウン)。
「この子の未来の為にも」「やるわ」と答えるレナード(ウィザード)とリグレット(ウィッチ)。
ここに至るまでの過程はスキップされてるので詳しくは知りませんが、当時の彼女達にもチームとして特別な絆が感じられます。
ハワードは誰よりもユナを信じているし、ミオ達もユナ先生の論文に感動し接触した。イヴリィも命を助けられた恩があります、レナード&リグレット夫妻は何より我が子の未来の為に。
各々に各々なりのドラマがあって、この瞬間に到達していて、断片的にしか描かれていないのに少し思い入れが深くなる。
きっとここに辿り着くまでに色んな葛藤や苦労があったのだろうなと想像できます。
自分達はシキ達と共に「過去にあった出来事」として流れて見てるだけですが、彼女達からは今この瞬間を生きてる臨場感が伝わってきました。
それは決して歴史の1ページなんかじゃない。この星を救う為、大切な人を死なせない為、未来の為にもがいた魂のこもった物語だったのだと思います。
当初は生前の四煌星なんて回想でのみ描かれるあくまで過去の存在だと思っていましたが、思ってた以上に彼女達の生き様が伝わってきました。
ああまで必死に生きていたのに、幸か不幸か彼等の運命が歪められ、この世界では敵対していた事実が一層悲しくなってくる。
もう終わった戦いのはずなのに、ウィッチとウィザードの戦いの結末が今になってより切なくなっていくよ。
地球崩壊
話は、264話の最後に描かれた二万年前の回想と接続。
滅びゆく地球に「死にゆく星か…」と言って降り立ったジギー。
本来この場に来るのはあり得ない人物。
現実世界の宇宙とシキ達のいる世界が繋がった不可解さを指摘するのは今更かもしれませんが、何よりここは「二万年前」の世界なんです。
機械生命体だって生命活動は不可能だと思われる程の膨大な時間。
何よりジギーがシキを拾ったのは「15年前」。
完全に事実が食い違っている。
何か異常な事態が起きていないと、ジギーがこの時代この世界に来るのはあり得ない。
「マザーは見つからずこのような死にゆく星に辿り着くとは…」と言ってるあたり、ジギーがマザーを探していた時期である事も確定。
これは、133話で言っていた「ある時…自分の記憶を取り戻したいという一心でマザーを目指した…」と言っていた部分です。
ジギーは二万年後の未来からユニバース1のグランベルに着いた時名前以外の全ての記憶を失いました。
これは210話でジギー自身が話していました。
自分の正体を知る為に始まったジギーの旅。
ジギーは本当にマザーの眼前まで迫っていたのですね。
シキ達と同じようにマザーエーテルを集め、惑星ミルツで完成させ、この宇宙に来たんだろうか。
ジギーが感じ、探った「生体反応」。
その先にはユナのシェルターがあり、そこでは赤子のシキ1人を残して全滅していました。
まるでゾンビ映画のようなショッキングな絵面。
無惨にも人が横たわって死んでいるのが死体のリアルさを感じます。
絵のタッチもザラザラとしたものでまるで違う漫画を読んでるかのような異物感を感じました。
現実と思えないような不気味な光景。
計画は失敗したんでしょうね(最終的にオーバードライブしてはいるけど、全滅してる時点で…)。読者視点地球がオーバードライブしマザーになるのは確定事項のレベルだったので、意外な展開で引き込まれました。瀕死レベルに陥るとは思ってたけど、ここまで無惨なものとは。
シキとの出会い
「シキ」という名にズキィと異様な感覚を感じるジギー。
今ユニバース0にいるジギーは全て知っていそうですが、この時代のジギーは名前以外の全ての記憶を失っている。
シキの事は「何者なのじゃ…この赤子は…」というリアクションになるし、いずれ魔王四煌星になる人間たちには「それにこの人間たちは一体…」というリアクションになるのも当然です。
今でこそ重要な存在ですが、この時は何も知りません。
読者目線でも凄く不思議な感覚に陥りました。
まるで連載が始まる前に時が戻ったかのような。
ここまで読んできた自分達読者にとっては無視できない凄く重要な要素でこれを見て何も思い出さない事に違和感を感じます。
このジギーは「EDENSZEROの連載が始まる前の自分」かのような。
ここまで長い旅路を共にしてきたからこそその意味に気付けますけど、最初は何のこっちゃですもんね。
やがて自分に繋がる存在なのでこの時点で完全に無意味なものではないのですが、それにしてもここまで意味を成さない事に認識のギャップを感じました。
ジギーは当時の事を振り返ってこう話しています。
「だが…そこで見つけたのは赤子のシキ…自分の記憶よりも大切な何かと感じ…育てる事にした」。
その感覚の解像度も上がりました。
今ではジギーの真実を知っていますし「ズキィ」とまで擬音が描かれていた強烈な感覚は「自分の記憶よりも大切な何か」という表現に相応しいインパクトがありました。
エーテルが異常に上昇し、ジギーの前に姿を現したマザーらしき存在。
煽り文の説明を素直に信じるなら、これが地球がオーバードライブした姿。
やはりマザー=地球がオーバードライブした姿で確定。
しかし、何故意思を持っているのか。二万年前の契約とは何なのか、まだ疑問が残ります。
ついにここまできた二万年前の核心。
マザーなんだけど、白目を向いていて、マザーになりかけの何かに見える。
それが凄く異質でリアルなターニングポイントを拝めてる実感がありました。
彼女たちは勇敢に戦い抜き、地球はオーバードライブ。その姿は変化させ……!?
第275話『四煌星誕生』へつづく
ついに四煌星が生まれた瞬間も描かれますか。
生体反応がなかったあたり完全に死んでたと思われるけど、その素体を使ったから記憶が残ってたのかな。
てっきり瀕死状態で生存の可能性があったからアンドロイドとなり未来に来たと思ってたけど、そうじゃないなら、何故ジギーは地球人を魔王四煌星にしたのだろう。