神がいなくなった魔界を統治する魔王になる?ヤクトをFAIRYTAILのアクノロギアとリンク解釈 | ルーメン・イストワール

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真島ヒロ先生を応援しています。
EDENS ZERO/Mashima HERO'S/FAIRY TAIL/RAVE

概要


『DEADROCK』の主人公・ヤクト

彼の力である祖は「黒竜」

これは真島先生の過去作『FAIRYTAIL』に出てくるアクノロギアという竜をモチーフにしている。

第4話ではまさにアクノロギアの姿そのものへと変貌を遂げた。

力のモチーフになっている事は1話の時点で分かっていたが、ここまで大々的に繋がりが仄めかれたヤクトアクノロギア

ある意味ヤクトはマルチバースのアクノロギアと呼べる存在で、真島作品ではありがちなジークハルトタイプのキャラクターのように人間性や今後の行動にリンクする部分があるのではないかと考えた。

今回はヤクトを『FAIRYTAIL』のアクノロギアを重ねて新しい解釈を見出してみる。


アクノロギア


まずは『FAIRYTAIL』に登場するアクノロギアがどんな人物か簡単にまとめてみる。

  • 「闇の翼」と呼ばれる漆黒の竜
  • 時代の終わりを告げる黒き竜
  • 人間を虫ケラとしか考えていない為、基本的には言葉を話さない
  • その気になれば世界を支配できる力を持っている
  • その正体は、人間との共存を願う竜に滅竜魔法を与えられた滅竜魔導士
  • 竜の返り血を浴び続けた結果、肉体が竜に変化した
他にも語るべきポイントはありそうだけど、一先ずここまで。

真島作品におけるスターシステム


自分はこの手の真島先生の過去作と比較して発想を広げる思考方法をよく試みる。
そうする理由は、真島作品におけるスターシステムの性質にある。
スターシステムとは「漫画等で同一の作家が同じ絵柄のキャラクターをあたかも俳優のように扱い、異なる作品の中に様々な役柄で登場させるような表現スタイル」
真島作品だとジークハルトの系列やプルーが毎度登場する事で有名。
真島作品においてはある種のエンタメ要素になっている。
作中で過去作をセルフオマージュするようなネタもあり、中には物語に深く関わる設定もあり、見逃せない要素。
特にそれが顕著だったのは、最近だと『EDENSZERO』のエルシーとジャスティス。
二人は『FAIRYTAIL』に出てくるエルザとジェラールが元ネタになっていて、恋愛を交えたエピソードだったり、元ネタだと幼少期は奴隷だったのが王族になっていたり、重なってる部分もあれば、真逆になってる部分もある等、密接な繋がりがある。
真島先生は間違いなく意識してキャラ造形をしてると思うし、過去作と比べて広げた解釈が物語を読み解くヒントになる時もあると思う。
自分的には真島作品におけるスターシステムは、アメコミで取り入れられてる「マルチバース」という概念に近いんじゃないかと考えてる。
アメコミの特徴は、同一のキャラクターのストーリーを複数の作家が執筆する事。
その為、作家ごとに画風や設定が異なっている。
この違和感を解決してくれる便利な設定が「マルチバース(多元宇宙論)」。
つまりそれぞれ違う世界の話にしてしまおうと。
真島作品もそういうイメージの存在なんじゃないかな。

炎の魔法使いと黒い竜が戦う物語

4話で何気に気になったのは、フレイが昔読んだという「炎の魔法使いと黒い竜が戦う物語」

まるでフレイとヤクトを彷彿とする状況。
その対決は「炎の魔法使いが勝った」とフレイは言っていた。
これはまさに『FAIRYTAIL』を表している。
アクノロギアは物語のラスボスとして、火の滅竜魔導士ナツに倒された。
自分の過去作を少しいじったような小ネタ…なんだけど、そういうものが作中に出てきた事が気になった。
あまりに示唆的過ぎるというか。
まるでこの物語にとっても「炎の魔法使い」と「黒い竜」が特別な存在になるんじゃないかと思わせる仄めかし。
こんなものをわざわざ出したのは『FAIRYTAIL』がなかったらさらに深読みしてたくらい突飛な話で、少し小ネタの意味だけで流せないものを感じた。
真島先生はDEADROCKの特徴として、従来の真島作品と違ってスターシステムを基本使わないと明言している。
だから自分もそこまで過去作と比べて読むつもりはなかったのだけど、まるでFAIRYTAILと同じ物語がこの世界にも存在してるかのようなそういう描写はするのだなと。
何かのキャラとかじゃなくFAIRYTAILそのものがあるかもしれないって繋げ方が直球に感じて、そうならば…と今回の発想を試してみたいと考えたキッカケ

物語の主人公とラスボス

まず大前提として既に存在してる要素は、ヤクトが「主人公」でアクノロギアが「ラスボス」だった事。
『FAIRYTAIL』にはゼレフという世界の元凶もいたが、正真正銘最後に戦ったのはアクノロギアの方だった。
自分はゼレフも「ラスボスの一人」と解釈しているのだけど「ラスボスの中のラスボス」でいうとアクノロギアかなと。
それだけ「ラスボス」を象徴とした存在。
対してヤクトは物語の主人公なので、両者は対比的な存在に思える。
前述の通り、4話を読んでから気になってるのは「炎の魔法使いと黒い竜が戦う物語」。
最終的に炎の魔法使いが勝ったという結末で終わり、何となく今後のヤクトの行く末を示しているんじゃないかと感じた
ヤクトは物語の主人公だが、最終的にF組クラスメイトに倒される、世界にとってのラスボスになる!?
その時フレイがトドメの役割を担う程重要な存在になるとは今のところ思えない。
例えば「炎」も能力の一種で多種多様な力を使う人物が出てきて、その人物が倒したら、あの本が予言書のように「伏線回収」となる?
色んな属性を使えるというのは少しルールの穴を突いてるような部分もあるけど『FAIRYTAIL』でもナツが色んな属性を掛け合わせた七炎竜状態で倒した事を考慮するとあり…?

かつて人だった

アクノロギアの特徴は純正な竜だったのではなく、かつては「人」だった事。
竜に滅竜魔法を教わった滅竜魔導士だった。
人を守る為戦った結果、いつしか力と自我が暴走し「アクノロギア」となった。
その要素を当てはめると、ヤクトもかつて「人」だった…?
ヤクトは「人間」に特別な思い入れがあるんじゃないかという素振りを見せている。
マクスウェルに「人間の世界」について話を聞いていた時「その世界で人間は大事に扱われていますか?」と質問していた。

その結果ぞんざいに扱われている事を知ったタイミングでマクスウェルを惨殺。
この時、一体ヤクトは何を確認しようとしていたのか真意が分からないが、人間を粗末に扱う態度に怒り殺したようにも見える。
マクスウェルを殺したのは死体をミコトの力で操り情報を得る意味が大きい。
その上でヤクトの個人的な感情が見え隠れしてるように感じた。
もしヤクトが「人間」に特別な思い入れがあるなら、その理由はかつて自分も「人間」だったから…?
だとするなら特別な思い入れがあるのも説明がつく。
ヤクトは人々を守る為に神を殺そうと考えているんだろうか
とすると、そういうスタンスも竜から人々を守る為に戦ったアクノロギアが重なる。

竜王と魔王

アクノロギアは「竜王」と呼ばれている。
それは、400年前に起こった竜同士の戦争「竜王祭」で竜を滅ぼした存在だから。
「竜王」が生まれた戦争として、後に「竜王祭」と名付けられた。
これをヤクトに重ねるとどうなるか。
デッドロックは、元々「魔王養成機関」。
ヤクトは今のところ魔王を目指していないが、最終的に魔王になるんじゃないだろうか
現在魔界の統治者である「神」。
もしヤクトの目的である「神殺し」が達成したなら、魔界を治める長がいなくなる
その座にヤクトが座るのはどうだろう。
2話では「魔界の統治者といったら普通『魔王』とか『悪魔将軍』とか『地獄皇帝』とか」と話していた。

この事からDEADROCKの世界においても魔王は「魔界の統治者」になり得るのだと思う。
当初自分が言っていた事を有言実行するかのように、最後はヤクトが魔王になる…?
アクノロギアは「うぬこそが王にふさわしい」と言って最期にはナツを認めたくらい「王」というものが特別で「王の在り方」に苦しんだ人生だった。
ヤクトにとっても「王」という存在は最終的に重要になるんじゃないだろうか。

天狼島を破壊

これはちょっと突飛な発想なんだけど、アクノロギアの印象的な描写でいうと、咆哮で当時ナツ達がいた天狼島を跡形もなく消滅させたシーンがある。
圧倒的な破壊力で、読者とナツ達に成す術もない絶望を心に植え付けた。
ある意味、アクノロギアと天狼島にも特殊な繋がりがある。
これと関連する要素は、DEADROCKでは何だろう。
ヤクトと同じF組には「天狼」という祖のヒエンがいる。
もしかするとヤクトはヒエンを殺す?
同じクラスメイトで、ヤクトは共に神を殺すつもり。
しかし基本的に魔界で神を殺すなんてあり得ない行為で、デッドロック卒業後の特権を自ら放棄するなんて、望まない者ばかりだろう。
ヒエンもその話を聞いた時は「なぜ神を殺したいんだ」と刀を向けていた。

ヒエンが何故デッドロックに入ったか不明で、仲間とはまだ言い難いクラスメイト。
この先、関係が決定的に決裂し、互いの目的の為に戦う事もあるんじゃないだろうか。
その時、ヤクトがヒエンを殺したら、まさに従来の真島作品らしくない展開で斬新な面白さがありそうだなと思う。

出てきら面白そうなもの

他に出てきたら面白そうなものとして二つ思い浮かんだ。
  • プロトン・アクノロギア
  • ドラゴンクライ
プロトン・アクノロギアは、かつてアクノロギアと親しかった竜。
しかし滅竜魔導士の力を目の当たりにして人間と敵対するようになった。
これはアニメオリジナルでアクノロギアの過去回想を描く上で作られたキャラクター。
ある意味アクノロギアの為に生み出されたような存在で、そこまでの特別さ、ヤクトの設定のどこかで流用されるのもありかと。
ヤクトの育ての親?先代の黒竜?
キャストクレジットでは差別化の意味で「プロトン・アクノロギア」と記載されていたが、作中では「アクノロギア」と呼ばれてるので(アクノロギアがアクノロギアと名乗る前の時代)、出てくるなら名前はそのまま「アクノロギア」かもしれない。
もう一つは「ドラゴンクライ」
これは『劇場版FAIRYTAIL DRAGON CRY』で出てきた魔法の杖。
この杖には人間たちに葬られたドラゴンたちの怒りが宿っている。
劇場版のタイトルになるくらい特別なキーアイテム。
映画のラストシーンにはアクノロギアも出てきて、ある種アクノロギアの過去編の一つのような役割も担っていた。
地名、人物名、物の名前、能力…何らかのかたちで「ドラゴンクライ」という名称が出てきたら熱い気がする。
ヤクトにおける「ドラゴンクライ」が出てきたら、アクノロギアのバックボーンの方もより解像度が上がりそう。

以上、ヤクトとアクノロギアを比べて考えてみました。
記事内で言った通り、1話の時点で繋がりは分かってたものの当初はこういう比較をするつもりはなかったんだけどね。
思いのほか直球の要素が出てきて、今回完全竜化しアクノロギアそのものになったし、このタイミングで考えてみたくなった。
基本的にスターシステムを封じるという意向は良いと思うんだけど、小ネタ程度で良いので過去作とリンクする部分が見つかるとそれもそれで面白いと思う。