概要
物語も最終局面に入ってきたと思われるEDENSZERO。
ついにシキ達はマザーのいる宇宙に突入。
そこは「未開の宇宙」。
桜が舞っていたり海があるわけではない普通の宇宙。しかしどこか神秘的に感じる世界で、これまでの宇宙とは何かが決定的に違うのではないかと思う。
ちょうどその宇宙を進んでいた時、ピーノが突然気絶。
意識を失ったピーノはシスターの医務室に運び込まれ、夢を見るように突然「二万年前の世界」が描かれた。
この世界は何なのか?この時代が突然描かれた意味は?
今回は「二万年前の世界」について考えてみたい。
発端
前述の通り、事の発端はピーノの気絶。
255話のラストでピーノはワイズ博士からもらったメモリーを確認したと思われ、何か衝撃的な事実に大粒の涙を流していた。
何かの事実を知った今回。
シキとレベッカに話しかけられていた時、突如コンピューターがショートするかのように意識を失い倒れてしまった。
原因は不明。
医務室に運ばれ、これからシスターの診療が始まると思われる。
気を失った理由は何?
自分には何か衝撃的な真実を知り、シキ達にどう話すか、そもそも話すべきなのか話さないべきなのかを考えた結果、思考の許容限界を超えてシステムがシャットダウンした…みたいに見えた。
何か他にピーノに影響を及ぼす原因が描かれていたように思えない。
一旦はそういう解釈で読んでいる。
失われた記憶
ワイズ博士からもらったメモリーとは「ピーノの失われた記憶」。
ジョーカーと戦う前にワイズ博士が託そうとして、ピーノはそれを拒否。
戦いが終わった今、晴れてワイズ博士から直々に受け取った。
「これはおまえさんの失われた記憶」と説明するメモリー。
それはおそらく惑星ミルツでレイチェルが言っていた「四煌星の秘密」に関するもので、ピーノの中にある「自分の権限では開けない情報」だった。
何故そんなものをワイズ博士が持っているのかというと「ワシは一度おまえさんに会った事がある」と説明。
「その時におまえさんに頼まれてその記憶だけを抜きとった」と言っていた。
自分で封じていた自分の記憶。
何故そんな事をしたのか疑問が残る。
それを確認したと思われるピーノ。
目の前に「ジギー」が映し出された画面が表示され、そこで何かを知り「ジギー様ぁ…四煌星のみなさんは…そんな…」と涙を流していた。
ピーノが涙を流すくらいだから凄く悲しい事実?
まるで存在そのものを揺るがすくらい大きな何かを知ったような印象を受けた。
魔王四煌星の謎①
魔王四煌星にはいくつか謎がある。
その一つが、本人が覚えていない記憶。
そこでは魔王四黒星と知り合いだったと思われる不思議な状況が描かれている。
ウィッチのものが描かれているのは187話。ヴァルキリーのものが描かれているのは191話。ハーミットのものが描かれているのは194話。シスターのものが描かれているのは217話。
全て楓宇宙編で描かれた謎。
シキが魔王四黒星の記憶を自分の中に落とすかたちで、何故か両者が過去に知り合いで、本人達はそれを覚えていない事を知った。
本人ですら覚えていない事を「記憶」として知る事ができるのか?と引っかかる部分もあるけど、これに関しては以前ベリアル・ゴアで戦ったドラッケンの記憶だって本人が忘れていた想いを引き出していた。重力のエーテルギアの記憶を落とす力とはそういうものなのだと思う。
ここで描かれた不可解な部分は、両者が知り合いである事もあるし、それぞれアンドロイドの姿をしていない事。
元々アンドロイドは人間の姿をしてるけど、それにしてもウィッチとウィザードに機械特有の繋ぎ目のような線がなかったり、ブリガンダインとクラウンは現在の格好をしていなかった。
まるでアンドロイドじゃなく「人間」かのような姿。
魔王四煌星と魔王四黒星がかつて人間だったが、何かがあってアンドロイドになった…?
魔王四煌星の謎②
結構長期間に渡って描かれている魔王四煌星の謎。
それはジギーと旅した外宇宙に魔王四煌星がいた記録が存在しない事。
最初にそれが分かったのは葵宇宙のレッドケイブで、ウィッチが「15年前ジギー様がここに訪れた時誰かと一緒にいましたか?」と聞くとナディアは「お一人でございました」と答えていた。
その時点でジギーが一人で行動していた期間があったと判明し、次にフォレスタでも会っていたはずのゼノリスが「いや…アンタらみたいなべっぴんさん忘れるハズなかろう ジギーは一人じゃったよ」と答えていて、そこで「15年前…マザーを探す為ジギーと共にグランベルから旅立ったオレたち だが桜宇宙の外の記憶が全て消されてるどころか…痕跡まで残ってねぇ」という事実に気付いた。
これにウィッチは「私たちの記憶を消さねばならない何かがあったの?それとも…」と考え込んでいた。
元々四煌星の記憶が消されている件については、グランベルに久しぶりに帰郷した時ハーミットも「四煌星は外宇宙の記録全てが削除されてるの ジギーの意図だと思うんだけどね…なんか知られちゃマズイ事でもあったのかしら」と言っていた。
そして先日の惑星ミルツではジギーが過去にここを訪れていたと知り「ねぇ…その時ジギーは四煌星を連れてなかった?」とハーミットが聞くとやはりレイチェルは「一人旅だったと聞いてるよ」と答えている。
そこで疑問に感じた四煌星にレイチェルが言ったのが「あれ?ピーノちゃんまだ話してないの?四煌星の秘密」というもの。
何故ジギーが一人で旅していたことになっているのか、魔王四煌星の記憶を消した理由、記憶を消さねばならない何かとは知られちゃマズイ事?四煌星そのものの秘密に隠された真実は全て繋がっていると思われる。
二万年前の世界
そして描かれた二万年前の世界。
意識を失ったピーノが「夢」を見るように遡った時間。
「二万年前」という言葉と共に現代的な都市が描かれた。
これは、前回から考えている我々の生きている現実世界の宇宙に存在する地球ではないかと思う。
高層ビル群、看板、車、道路、信号…これらは地球に存在する景色と一致する。
もちろんEDENSZEROの世界にだってこれらの要素はあるのだけど、描かれた二万年前の世界はあまりに現代的過ぎる。
スペースファンタジー世界としては相応しくないリアルなタッチ。
真島先生は意図して現実の地球を描いていると思う。
元々現実世界の宇宙が存在している可能性を考えたのは以下の根拠から。
- 「何もない宇宙」だけど「神秘的」という感動のシンクロ
- 「宇宙の暗黒時代」という言葉が現実に存在する
- 特徴的なその地のシンボルをデフォルメ化したような星が描かれていない
- スペースで「今後他の作家さんがあまりやってないような演出をやる」と発言
- 過去の対談で「真島作品としては珍しい『メタな展開』も入れる」と発言
これらの要素が脳裏に浮かび、もし現実世界の宇宙が出てきたら面白いんじゃないか?という発想に至った。
二万年前の世界に関しては、看板に書かれた「Broadway」という言葉にも注目したい。
光に反射して見えない部分もあるけど、おそらくこう書かれている。
「Broadway(ブロードウェイ)」とは、アメリカ合衆国ニューヨーク州を南北に走る目抜き通り。
現実に存在する地名である。
だから今回描かれた二万年前の世界が、現実の宇宙に存在する地球であるのはほぼ確定的かな〜と考えている。
魔王四煌星はその世界にいた?
そこで描かれた魔王四煌星似の女性。
というか魔王四黒星の記憶で見た人物と瓜二つの見た目をしている。
ヴァルキリー以外は服まで一緒で、同一人物と見て良いだろう。
ラストページの煽り文には「四煌星によく似た4人…!?」と公式見解でも言われてるし、当時シキも間髪入れず魔王四煌星本人として認識している。
魔王四煌星はかつて「人間」として二万年前の地球にいた…?
思えばウィッチの「弁護士」だったり、ヴァルキリーの「アロハシャツ」感であったり、シスターの「患者」姿だったり、ハーミットの「学生服」だったり、過去で見た姿はどれも現代的な立場が似合うビジュアルだった。
それも元々地球にいた普通の人間だったからと解釈すればしっくりくる。
これから「何」が起こる?
今回の話のラストでどこかに向かって走っていたハーミット似の女性。
「星が悲鳴を上げてる 残された時間は少ない…」という心の声が描かれていた。
「星が悲鳴を上げる」と言うからには、星の命が尽きかけている…?
今この瞬間、この星が消耗するような状態になっている…?
「残された時間は少ない」と言っていて、この後人類の命運を分つようなとんでもない事が起ころうとしているんじゃないかと感じた。
「残された時間」とは「この星」にとっての時間。
もうじきこの星が消滅する…?
思い当たったのは、シキが記憶を落として見たハーミットとキラーの会話。
そこでは「エーテル」について話していた。
「万物に流れるエーテルという力 その臨界点がオーバードライブと呼ばれている」と説明し「例えばだよ?この石のエーテルも臨界点に達したらオーバードライブできると思う?」とキラーがハーミットに話していた。
「相変わらず変な着眼点ですね 先輩」と返し「でも…理論的には可能だと思います 山であっても海であってもこの星であってもエーテルが臨界点に達したらオーバードライブできると思いますよ」と言っていた。
これは他の四煌星と同じようにハーミットもキラーと知り合いだったとシキと読者が知る為の描写として差し込まれたのだと思うけど、それにしては引っかかる意味深な話をしすぎてないかと当時から引っかかっている。
「学生」だったという設定が必要だったとして、例えば化学の実験をしてるとかそういう些細な描写で良かったんじゃないかと。
何となく意味深な話をしていた事から、この話は今後起こる何かの前フリなのではないかと感じた。
もしかしてこの時話していた「山であっても海であってもこの星であってもエーテルが臨界点に達したらオーバードライブできると思いますよ」が実際に二万年前の世界で起こっていた…?
星のオーバードライブ…これについても以前可能性を考えた事があって、その時は二万年後の宇宙でシキとレベッカの遺体の目の前にあった崩壊した星がそれに当たるのではないかと思っていたけど、あんなように今後の過去編で二万年前の四煌星が生きていた星がオーバードライブし崩壊する可能性。
キラーの記憶で見たハーミット=最新話の最後に出てきたハーミット似の女性なら、この世界にも「エーテル」が存在するのは間違いなく、オーバードライブというのも起こり得るんじゃないかと思う。
加えて比較して気付いたのは、ハーミット似の女性が走っていた場所がキラーの記憶で見た場所と全く一緒である事。
河川敷のような場所で、近くに橋が見える。
「残された時間が少ない」ような緊急事態の後にキラーとあの場で話すとは思えないので、時系列としてはキラーと話した後ハーミット似の女性が走っている方が考えやすい。
あの時ちょうどこの星がオーバードライブを起こそうとしていると気付き、その危機を止める為にどこかに向かった…?
どうやって二万年後の世界に来た?
気になるのは、もし魔王四煌星本人ならどうやって二万年後の世界に来たのか。
当たり前だけど通常は不可能。
何らかの超技術、超能力の類がないと想像できない。
思い浮かんだ可能性は以下の通り。
- マザーの力
- 時喰みに時を喰われた
- エデンズゼロに乗って来た
- 帝国式反物質爆弾と重力のエーテルギア、キャットリーパーが組み合わさった二万年後のパターン
1番考えられるのは、やはりエデンズゼロに乗って二万年後にやってきた可能性かな?
エデンズゼロには二万年もの時を超える力があるのは、惑星エデンからユニバース1に来たジギーの旅で実証済み。
十分実現できる素質を秘めている。
加えて魔王四煌星が認識している1番古い記憶に存在するのもジギーとエデンズゼロ。
実際に回想されたのはハーミットの過去として描かれた「魔王四煌星の任が解かれた」時かな?
マザーを目指す旅の道中は描かれていないが、マザーを目指した旅の後帰ってきた時の過去は描かれた。
外宇宙の記憶は消されているけど、自分が魔王四煌星としてジギーと共にマザーを目指した事は覚えている。
もしかしたらジギーがマザーを目指していた旅の道中、人間だった時代の魔王四煌星と出会ったんじゃないか。
もちろんその時は「魔王四煌星」なんて立場じゃないただの人間だっただろう。
しかし何かがあり、彼女達は「アンドロイド」として転生し、ジギーの旅の仲間になった。
ジギーは意図して二万年前の世界に来たのか、偶然二万年前の世界に来てしまったのか、事の経緯も重要。
「意図して」であるならその時代にマザーがいるという情報をキャッチした背景を想像したし「偶然」なら雪宇宙からマザーのいる宇宙に入った時点で二万年前に飛んでいた…?
後者ならまさにシキ達も時間を跳躍してる事になり、過去の世界で何が起こるのか面白そうではある(タイムパラドックス云々の辻褄合わせが難しそうだけど)。
何故魔王四煌星になった?
もう一つの気になる疑問は、魔王四煌星になった理由。
かつて彼女達が地球に住んでいた人間なら、何故機械になったのか。
- 延命
- 滅んだ故郷の星を救う為?
- エデンズゼロの力を引き出す資質を秘めていた
シスターなんかは実際に「不治の病」だったようだし、滅びゆく星でまだ生きる可能性があったら選びそうではある。
周りの人間は死んだのに自分だけ生きていく意味はあるのかというと「滅んだ故郷の星を救う」という目的があれば選ぶんじゃないかな。
本人達からしたら「できるなら絶対にしたい」思う願い。大切な人ともう一度会えるならこの身だって捧げるんじゃないだろうか。
「エデンズゼロの力を引き出す資質を秘めていた」というのは、魔王四煌星にしたジギー側の都合。
自分は初期の頃から「何故エデンズゼロの力は魔王四煌星が揃わないと完全に発揮されない」というシステムにしたのか?というのが気になっていた。
こういうシステムにしたからシキ達は外宇宙に進出するまで時間がかかり、どういう意図でエデンズゼロの設計者はこう作ったのか気になっていた。
楓宇宙編ではエデンズゼロが作られた時、魔王四煌星は存在してなかったと分かり、尚更疑問。
それを解消できるとしたら、あの星に生きる人間だけが持っている特殊な性質…?
マザーを目指していたジギーにとっては欲しい人材だったのではないかと考えた。
ジギーの消した四煌星の記憶がこの事に関係するなら、もう故郷の星を救う事は叶わないから、そうなら「知らない方が良い」と思って隠したのかもしれない。
結果的に「騙した」ような状況になっている。
こんな存在そのものを揺るがすような真実であればピーノが大泣きしたのも納得できる。
四煌星と四黒星の運命が分かれた理由
同時にこの時代には魔王四黒星もいた。
元々魔王四黒星の記憶から知った事なので、それは分かる。
ここまでの流れならかつて人間だった魔王四黒星にも該当すると思う。
気になるのは、何故四煌星と四黒星の道は分たれてしまったのか。
- ジギーと同じようなかたちでヴォイドに出会った
- 桜宇宙に帰還するまでは同じだったがエデンズワンに奪われてしまった
エデンズワンに時を超える力の源である「エーテリオン」がないのは、楓大戦で魔王四黒星が奪取しに来た事から分かる。
ヴォイドが二万年前の世界で四黒星に出会ったとするなら、かつてはヴォイドもエデンズゼロの乗組員だったという過去が必要か?
ジギーの右腕かのようにマザーを目指していたが、利己的な目的で裏切った。
しかし外宇宙ではジギーの一人旅という話しか残っていないので、難しい解釈かな。
桜宇宙に帰ったタイミングでエデンズワンに奪われたという方が考えやすいか。
その後エデンズワンが復活するまで眠っていたのかもしれない。
ピーノは何故それを知っている?
ピーノは何故それを知ってるのかも気になる疑問。
元々ワイズ博士から渡されたメモリーでそれを知り、それは元々自分で消した自分自身の記憶だった。
255話のラストは映像を見るかのように自分の記憶を体験したという解釈で良いのかな。
ワイズ博士はこれを「おまえさんの失われた記憶」と表現していて、レイチェルは「ピーノちゃんの大事な記憶」と表現していた。
「記憶」と言うからには、ピーノ自身の体験じゃないかと考える。
それで魔王四煌星の正体を知り得るという事は、ピーノも二万年前の世界にいた人間?
256話ではまるで自分の記憶を思い出すかのように二万年前の世界が描写されていた。
あれはピーノが覚えている、ピーノの視点の過去なのかもしれない。
作中には「魔王四煌星」という分類の他に「魔王四煌星型アンドロイド」という言葉が存在している。
当時からそんなピンポイント過ぎる名称が存在してる事が不可解だったんだよね。
まるで魔王四煌星じゃないけど「魔王四煌星」と同じ性質を持ってるアンドロイドが存在してるかのような。
今となってはそれが魔王四黒星とも考えられるけど、この時はピーノの事を示しているのではないかと感じた。
ピーノは「魔王四煌星の後継機」と度々言われていて「エデンズの"光"」という呼ばれ方もしている。
ピーノこそ魔王四煌星であり魔王四煌星じゃない存在で、二万年前の世界を生きた人間だけど唯一その記憶を持っていたんじゃないだろうか。
まとめ
最後に今回考えた事を時系列順にまとめてみる。
- 二万年前の地球で「人間」として生きていた魔王四煌星
- ある時いずれハーミットとなる女性がこの星の異変に気付く
- それは「星のオーバードライブ」
- 星のエーテルが臨界点に達し間もなく消滅する事を察知した
- それを回避する為にハーミットは行動
- しかし奮闘虚しく星の滅亡は免れないものとなる
- そこにマザーを探しに来たジギーが現れる
- 滅びゆく地球でジギーは9人の瀕死の男女を救出
- ジギーの提案で9人の男女はアンドロイドとなる事で延命に成功する
- エデンズゼロに乗り二万年後の世界(現代)に来る
- ジギーは9人の男女の記憶を改竄し、人間時代の記憶を消す
- そうして魔王四煌星、魔王四黒星、EMピーノが誕生した
- 唯一ピーノだけは記憶を失っておらず、ワイズ博士と出会った時自ら封じる
- その後魔王四黒星はヴォイドに奪われ、ピーノはノーマに移動
- 共にマザーを目指したと思っている魔王四煌星はジギーから任を解かれ、各々の道へ
こういう風に考えてみました。
見て分かる通り、まだしっくり繋がってないおざなりな部分もあって、そこは再考の余地あり。
まだまだ今後深掘りして考えていきたいです。
以上、二万年前の世界と魔王四煌星の秘密について考えてみました。
突如描かれた二万年前の世界はロマンの塊で妄想意欲を刺激させられる…!
この件はまだまだ考えられそうなので時間ある時にまた書きたいです。