「ポジティブ思考」は良いものとされています。
しかし、ポジティブ思考で投資したら大損失。ポジティブ思考でギャンブルしたら自己破産、なんてことが起こっています。
実は、ポジティブ思考は、西洋文化をバックグラウンドを持つ人には向いていますが、私たち日本人のように、東洋文化を背景に持つ人には向かないようです。
申し訳ないですが、ポジティブ思考は少し子供っぽい印象です。私たち日本人には、陰も陽も等しく受け止める「大局思考」が向いています。
これは過去の長い歴史の中で自然災害と向き合ってきた知恵の結晶と言えます。
単なるポジティブ思考では圧倒的な自然災害に出会ったとき、思考がマヒし自暴自棄におちいります。その結果、社会的モラルが崩壊し、容易に無法地帯と化します。
しかし、日本人はそうはなりません。なぜなら、「大局思考」で受け止めることができるからです。
起こってしまったことは仕方ない。ある意味、世の無常を受け止める精神的土壌があります。単に民度が高いだけではありません。
また、良いも悪いも自分の感情を全て受け入れつつも、自分を責めない人は立ち直りが早いそうです。
良くも悪くも感情は湧き出るものです。ただ、ありのままに観察することで感情は消えていきます。
そこに審判は不要です。もっと言うと、良い悪いとレッテルを貼ってはいけません。
それは、ただ湧き出てしまう感情に良いも悪いもないからです。もちろん、ただの感情に苦しむ必要などありません。
よく、「感情をコントロールせよ」と言われますが、これは悪い感情を持つな、という意味ではありません。悪い感情が湧いてきたら、「ただ観察し、その感情に左右されるな」ということです。
極端な例を出します。
「こいつを殺したい!」という感情が湧いたとします。
しかし、あなたには、そう思わせるだけの理由があったのでしょう。その結果、湧いた感情です。
だから、そんな自分は人間としてダメだとか、最低な人間などとは考えないことです。
別の言い方をすると、自分に危害を加える相手に対して憎悪を抱くのは、「自己防衛本能」の現れです。ある意味、本能だから仕方ないのです。
そして、「自分はこんなにも腹を立てていたのか」と人事のように、ただ受け止めます。その際、決して自分を責めないことです。
その結果、その感情は消えていきます。なぜなら、感情とはこじらせなければ自然と消えていくものだからです。
ところが逆に、極限まで自分を責めてしまうと、ある時、限界を超えて、破壊的憎悪となって外に噴出します。自己防衛本能が暴走し、場合によっては犯罪に発展しかねません。
よく「自己啓発」で言われる、「冷静になれ、客観的になれ」などは所詮、きれいごとに過ぎません。
人の感情は理屈では割り切れません。ある意味、コントロールできません。
ですから、理屈を挟まずに「ただありのままを観察する」のです。これを「内観」と言います。
コントロールできないものをコントロールしようとするからおかしくなります。感情とはコントロールするものではなく、「向き合うもの」です。
感情は「素」のあなたです。そのあなたに向き合うことが人生です。繰り返しますが、「素」のあなたをコントロールなどできません。ただ、認めるしかありません。
そして、「素」のあなたを否定しないことです。日々、自分の感情と向き合い、寄り添い続けることは、本当の自分を知る上でとてもいい機会です。
これが広い意味で「感情に左右されない自分」を確立することになります。
しかも「自分らしく生きる」というおまけまで付いてきます。
感情を冷静に観察すれば、本当の自分が見えてきます。