浮世絵師の葛飾北斎。

北斎は「己、6歳より物の形状を移す

癖ありて」と76歳のとき「富嶽百景

」で書き、幼児より絵筆をとって以

後40代には自らを画狂老人と名乗り

、浮世絵師として世に知られるよう

になる。

 

葛飾北斎「戯作者」

ところで北斎の夢は戯作者になるこ

とであった。

戯作は著述として世に遺り、挿絵画

家より戯作者の方が高く評価され、

北斎は浮世絵師として名をあげなが

らも戯作の筆を絶ちきれなかった。

この頃浮世絵師から一流戯作者に転

身したのものに山東京伝(浮世絵師

・北尾政演)がおり、北斎は戯作家

の滝沢馬琴を尊敬していた。

 

北斎と艶本小噺「間女畑」

浮世絵師の北斎の艶本小噺「間女畑」

は、寛政3(1791)年正月、北斎32

歳頃の作品。

題の「間女畑」は、「まめばたけ」

と読む。

全部で27話の艶笑小噺と12図の挿

絵があり、序文には「鉄棒ぬら〱と

書」とあり、この鉄棒は北斎の通の

名・鐵蔵のモジリである。

 

艶本小噺<後利生>

十七八の美しい娘を近所のきおひど

もがめがけていると、四万六千日後

から大勢つけて行き、まんまとひつ

かつぎ奥山へつれていって、まわり

をとりかゝる。

「アレ〱」と声を立てるをてぬぐひ

で口をわって、かわり〱にさつ〱と

やつけるうち、娘のかたちはきへう

せ、ふしぎに思ひ、あたりをみれば、

掛け軸があったゆへ、開いて見れば

観音の名号。

「是はつまらぬ」とよく〱みれば、

観世音ぼさつの「ぼ」の字のところ

を突きやぶっていた。

 

浅草観音の境内、その仏様のご利益

、後利生で、観音様が娘の「ぼぼ」

の身代わりになってくれた噺。

この御利生は、京都の浮世草紙「好

色小柴垣」(元禄9・1696刊行)の

なが~い噺をもとにする。

 

艶本小噺(湯屋)

さる所のお乳母、髪結といろ事で、

いつもの湯屋で出合い、ぼゝをく

ぢってたのしむやら、まらをにぎ

ってくちをすやら…と噺つづいて

いく。

 

この小噺には挿絵があり、ことば

書きがある。

 

 

葛飾北斎の艶本小噺「間女畑(まめばたけ)」寛政3・1791年刊行

 

髪結

「お乳母さん・お八重さん、おはやい

の。今日の湯は奥のほうがとんだよ

かろう。それ〱」

乳母

「エゝいゝは、アゝソレ〱、いつそよ

くなるよ。フウ〱」

八重

「地震でもいるさうで、だへぶいごく

は。

ばゝァ、奥のほうはそのやふにいゝか」

子ども

「姉さんのおちんこは、毛ばかりあっ

て、あの御まんのやうだ」

 

90歳まで生きた北斎。

北斎は読本挿絵の評価が高った。

「龍虎図」、「雪中虎図」を描いた嘉

永2(1849)年に北斎は「あと5年生

きれば本当の絵描きになれるのに」

と浅草寺境内の長屋で永眠。

葛飾北斎没享年90歳。

北斎の辞世の句

人魂で 行く気散じや 夏野原

 

 

浅草寺「山東京伝机塚」

太田南畝 (1749-1823) 四方赤良・蜀山

蔦屋重三郎(1750-1797)   筆綾丸(吉原連)

喜多川歌麿(1753-1806)   蔦唐丸(吉原連)

石川雅望 (1754-1830) 宿屋飯盛(号:六樹園)  

葛飾北斎 (1760-1849)

山東京伝 (1761-1816) 北尾政寅

滝沢馬琴 (1767-1848)

 

天明元 (1781)年  歌麿「身貌大通人略縁起」(版元蔦屋)

天明5  (1785)年  京伝「艶本枕言葉」・「江戸生艶気椛焼」

天明6  (1786)年 「吾妻曲狂歌文庫」(政寅画・宿屋撰)

天明7  (1787)年  歌麿「三保の松原道中」

天明8  (1788)年 「画本虫撰」(歌麿画)歌麿「歌まくら」

寛政1  (1789)年

寛政2  (1790)年 「百千鳥狂歌合」(版元蔦屋・歌麿画)

寛政3  (1791)年  京伝50日・蔦屋筆禍

寛政4  (1792)年  南畝・大坂銅座赴任

寛政5  (1793)年  京伝・京伝店開店(銀座)

寛政9  (1797)年  蔦屋没

寛政11(1799)年  歌麿「ねがひの糸口」

文化元 (1804)年

文化3  (1806)年  歌麿没

文化6  (1809)年  石川『飛騨匠物語』(北斎画)

文化11(1814)年  南畝「住吉紀行」、「竹杖日記」(陳阿和尚、雅望)

           馬琴「南総里見八犬伝」(-1842)

文化13(1816)年  京伝没・雅望没

文化14(1817)年  浅草寺「山東京伝机塚」建立

文政6  (1823)年  南畝没

天保2  (1831)年  北斎「富嶽三十六景」 

天保13(1842)年  馬琴「南総里見八犬伝」

嘉永2  (1849)年  北斎没

 

 

 

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