3年前、2019年9月13日。映画「記憶にご

ざいません」が三谷幸喜監督・脚本により

公開され、話題となる。

 

<三谷幸喜と映画「記憶にございません」>

映画は首相官邸を舞台に展開するストーリーで、

これを喜劇風に揶揄したドラマで面白く描かれ

ている。

ロッキード事件はじめ過去から現在の首相にま

でおよぶ首相官邸、それにその家族。また、こ

れにかかわった政治家、秘書や新聞記者、さら

に身近な警察官やタクシーの運転手などが登場。

どうもおもいあたる事件を想い起こし、その時

代のときどきの人物をたとえているようで、茶

化ているふしがある。

三谷幸喜脚本・監督は、映画は小道具にはじま

すべてプロの集まりで、映画評論家ではなく、

実際に映画を観たひとが「面白かった」といえ

るドラマに仕上げたという。

(安倍晋三首相と昭恵夫人)

三谷幸喜は、いつも作品にかかわることは、誰

よりも深い知識をもち、その役者の持ち味を活

かし映画にしているところがある。

例えばそのひとつ、当時の首相の安倍晋三の妻

昭恵さんはダンスが趣味で、ボランティア活動

や首相がアルゼンチンを訪問したときアルゼン

チンでタンゴを踊る。映画では、首相の夫人が

急遽、テレビでダンスの録画出演できず、かわ

って首相の美人秘書役の小池栄子(現鎌倉殿の

北条政子役)がやむをえず(得意の)ダンスを

するはめになる。

 

 

 

<小佐野賢治「記憶にございません」>

「記憶にございません」は、ロッキード事件

での証人喚問のときの小佐野賢治の言葉で、

彼は尋ねられるごとに、この言葉で答弁し、

この年昭和51(1976)年の流行語にまでなる。

 

 

小佐野賢治(1917-1986)

 

<小佐野賢治「ロッキード事件」>

かれは、山梨県勝沼町の極貧の農家で生まれ

る(1917年)、一代で小佐野コンツエルンを

築き、ホテル王・バス王と呼ばれ、日航と全日

空の個人筆頭株主で、1兆円にのぼる個人資産家

である。

(小佐野賢治と田中角栄)

昭和51(1976)年ロッキード社は、旅客機

売り込みのために、約30億円の賄賂をばら

まいた事件で、3つのルートから田中角栄へ

のもとへ流れる。

(児玉ルート)

ロッキード―社→児玉誉士夫→国際興業社

主・小佐野賢治→田中角栄(政界)

(丸紅ルート)

ロッキード―社→丸紅社(社長・檜山広・

専務・大久保利春)→田中角栄(政界)

(全日空ルート)

ロッキード社→全日空(社長・若狭徳治)

→田中角栄(政界)

このとき前首相の田中角栄は、秘書の榎本

敏夫らとともに逮捕され、前代未聞の事件

に日本中が騒然となる。(昭和51・1976.7.27)

<小佐野賢治>

小佐野賢治の「記憶にはない」は、これがはじ

めてでななかった。

敗戦後、自動車部品会社(第一商会)を設立し、

政友会にとりいり根津嘉一郎、五島慶太にホテル

の売買をもちかけられ、ホテル業、バス事業に進

出(1946年)。翌年占領軍は、不正調達で逮捕

されるが小佐野は「記憶にない」と繰り返す。結

果同年昭和23(1948)年9月重労働1年、罰金の

有罪判決を受け、翌年1949年3月まで服役する。

<ロッキード事件と小佐野賢治>

ロッキード事件は、前代未聞の首相経験者逮捕

となる。その後田中角栄、児玉誉士夫は、外為

法違反容疑や受託収賄容疑で実刑判決を受けてい

たが、上告中に死去(1986.10.27)し、公訴棄

却となる。

 

 

政界の黒幕が表舞台に出廷する小佐野賢治(前列中央)

 

<安倍晋三と安倍昭恵>

昭和59(1984)年と昭和60(1985)年に

阪神間を舞台にた食品会社が標的となった一

連の脅迫事件があった。この事件のとき当時

昭恵(1962年生れ)さんは22歳で、本人に

警察の保護がついた。というのは昭恵さんの

父は森永製菓の松崎昭雄、母の恵美子は(事

件のときの)森永製菓第3代社長の次女であっ

た。かの女は電通に入社、新聞雑誌局で勤務

し、上司の紹介で、父・晋太郎外務大臣の秘

書官を務めていた安倍晋三と出合う。媒酌人

が福田赳夫夫妻が務め、1987年6月に結婚式

を挙げる。その後にロッキード事件(1976

年)が起こる。

<映画「記憶に」(三谷幸喜と安倍晋三)>

2022年7月9日。前日安倍晋三前首相没67歳。

翌日、7月10日TBS系情報7days」で、三谷

幸喜は安倍晋三元首相を追悼する。暗殺に関し、

アメリカのリンカーン大統領がに暗殺されたと

き(1865.4.14)、イギリスの政治家・ディズ

レーリは追悼演説で「暗殺で歴史は絶対にかわ

らない」ことをとりあげる。そして映画「記憶

に…」について安倍氏のことにふれる。

安倍晋三首相は試写会(2019年8月)に来て、

三谷と安倍が懇談。三谷は、「けっこう、(安

倍首相を)茶化している部分もあったんで」と

、当時の思い出として語った、その内容。

三谷「怒ってません?」

安倍「おこってませんよ」

三谷「ちょっとムッとしたんじゃないですか?」

安倍「ただ、1か所気になったところがあった」と、

三谷「どこですか?」

安倍「それは言えません」

いうやりとりであった。という。

 

 

昭和29(1954)年  安倍晋三誕生

昭和30(1955)年  自由民主党結成

昭和31(1956)年  赤線廃止

昭和34(1959)年     映画「女間諜 暁の挑戦」

昭和35(1960)年  日米安保条約(改定)

           池田勇人内閣(1960-1964)

昭和39(1964)年  佐藤栄作内閣(1964-1972)

           映画「白日夢」

昭和47(1972)年  田中角栄内閣(1972-1974)

昭和49(1974)年  三木内閣、児玉誉士夫「自伝」

昭和50(1975)年  日ソ合作映画「モスクワわが愛」

昭和51(1976)年  ロッキード事件、福田内閣

昭和53(1978)年  大平内閣

昭和55(1980)年  鈴木内閣

昭和56(1981)年  「蜂の一刺」・映画「白日夢」

昭和57(1982)年  中曽根内閣

昭和59(1984)年  グリコ・森永事件(始まり)

昭和60(1985)年  グリコ・森永事件(終息)

昭和61(1986)年  小佐野賢治没(10.27)

昭和62(1987)年  竹下内閣

平成 元(1990)年  宇野内閣

平成  2(1990)年  海部内閣 角栄政界引退・越山会解散

平成  5(1993)年      細川連立内閣 角栄没12.6

平成13(2001)年  小泉内閣

平成14(2002)年  田中真紀子(外務大臣)

平成20(2007)年  映画「色・戒」

平成21(2008)年  鳩山由紀夫内閣

平成22(2010)年  菅直人内閣

平成23(2011)年  野田佳彦内閣

           映画「樺太1945年夏 氷雪の門」

平成24(2012)年  安倍内閣

令和 元(2019)年  映画「記憶にございません」

令和  2(2020)年  菅内閣

令和  3(2021)年  岸田内閣 映画「罪の声」          

令和  4(2022)年      安倍晋三没(銃撃事件7.9)

           映画「ジュラシック・ワールド」

 

 

 

 

 

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