町の公園には桜の樹などが紅葉している。

公園の一角にメタセコイアに似た木が、

いま緑色の実が鈴なりにぶら下がっている。

沼杉と呼ばれるこの樹は、あまり見かけない

珍しい樹である。

 

 

<ヌマスギ(「沼杉」)とメタセコイア>

公園(熊取町歴史公園)は町の煉瓦館(中林綿布工場

跡地)入口にあり、2本が並んで立っている。2本の樹に

はヌマスギという名前がついている。

 

 

<ヌマスギ(沼杉)>

北アメリカ原産の落葉針葉高木のヌマスギ。

アメリカ島南部からメキシコ湾岸、ミッシピー河川流

域で、川岸の湿ったところで生育し、1年の内数か月

は水につかるような環境のなかで生育し、根の呼吸

に必要な酸素が得られず、根の一部が膝の高さまで

に上がって生きている。

(ヌマスギ(「落羽松」)

このため日本では沼杉といい、和名をヌマスギ(沼杉)

というが、ほかにラクウショウ(落羽松)とも呼ばれている。

 

 

ヌマスギの葉と球果

 

ヌマスギについて。葉はメタセコイアに似るが、メタセコ

イアが十字対生に対して、ラクウショウ(落羽松)は、短

枝の葉は線型で2列につき波状複葉のように見え、秋に

短枝ごと落ちるので落羽松の名がある。生長がはやく、

低湿地によく生育する。ヌマスギ属の仲間は、第三紀に

北半球に繁茂し、日本の化石層からもメタセコイアなど

とも出土する。

<メタセコイア(「アケボノスギ」)の「名前の由来」)>

ちなみにヌマスギに似たメタセコイアの名前の由来。

セコイアのメタ=あとにできた意味で、和名のアケボ

ノスギ(曙杉)は、1939年に関西地方の第三紀層で、

常緑種に似た落葉種の遺体(化石の一種)で、三木

茂によって発見された新種で、「曙」は、夜が明け始

める頃で、1000年前の『枕草子』(清少納言)に、「春

はあけぼの。やうやうしろくなりゆく山ぎは、…」とあり

、夜明けをさす。また、「曙」はあたらしい歴史がしよう

とするとき、世界の人類の歴史の曙といった使い方が

できる。曙の対義語に「黄昏(たそがれ)」があるが、

これは、「誰ぞ彼(たそがれ)」の当て字で、薄暗く誰か

わかりにくい、朝方と違った不吉な時間を指し、夕暮

れ時をさしている。

 

 

熊取町歴史公園(煉瓦館)のヌマスギ

 

<公園のヌマスギ>

町の公園にある不思議なヌマスギ。

湿地に適した木であるが、雨量のすくない町の

公園にめずらしく2本が植えられている。

・雨量がすくなく温暖な気候の町に。

・ヌマスギの近くには池も湿地もない場所で。

・秋のこの頃にたくさんの実をつけている。

気候変動で絶滅したメタセコイア。メタセコイアと同じ時期

に生存したヌマスギは、どのように地球上に生存してきたの

だろう。この樹をヌマスギ(沼杉)、またの名をラクウショウ(

落羽松)と、うまく名前をつけたものだ。

 

 

煉瓦館(大阪府泉南郡熊取町西1丁目10-1)

 

2021.10.24

町ある樹の謎(「メタセコイア」)

メタセコイアの謎(三木茂「植物化石」)

メタセコイアの謎(生命「百万年ぶり男性回復」)

メタセコイアの森(「メタセコイアと恐竜」)

メタセコイアの謎(自然と人間)

人類の謎(「メタセコイアの森」と人類)

メタセコイアのある町(「自然と人」)

北極(「森林の化石」)と地球(メタセコイア「温暖化」)

街ある樹ーメタセコイア(泉佐野市)ー

2021.11.4

大阪湾ー気候変動(「メタセコイア」)と海水